Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

増える二酸化炭素の排出、間近に迫ったCOP26を前に弱気な英国と山陰の木材会社が活用するJクレジット

 

 大きな困難を前にすると、時に人は弱気になったりすることもあるのだろう。

 COP26 第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議が今月末に開催されるのを前に、議長国のジョンソン英首相が、「うまくいかないかもしれない」といい、期待された成果に届かない可能性を示唆したという。

英首相「うまくいかないかも」 COP26で弱気発言:時事ドットコム

 JIJI.COMによれば、「うまくいかないかもしれないし、必要な合意が得られないかもしれない。予断を許さない状況で、とても心配だ」と懸念を表明したそうだ。一方で「とても困難だが、実現できると思っている」とも述べたという。

 

 

 日本経済新聞によれば、国連気候変動枠組み条約事務局が、各国が提出した2030年の温暖化ガスの排出削減目標が、国際枠組みの「パリ協定」の目標に合致しているかを分析した報告書を公表したという。

30年の世界の温暖化ガス、10年比16%増 国連が報告書 : 日本経済新聞

 それによると、現段階の削減目標では30年時点での温暖化ガス排出量が10年比16%増になると指摘したという。パリ協定の目標を実現するには不十分で、一段の対策が必要になると呼びかけたそうだ。

 こうした報告があるとすれば、ジョンソン首相の気持ちも理解できないわけではない。

途上国の排出は全体の6割を占め、主要排出国である中印の努力なしにはパリ協定の目標は達成できない。

グラスゴーでは31日に第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開幕する。先進国が中国やインドなど新興国に温暖化ガスの排出削減目標を引き上げるよう圧力を強めている。 (出所:日本経済新聞

 圧力を強めたところで、中国やインドが「はい、そうですか」とおいそれと返事をすることはないのかもしれない。

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 その中国は、「2060年までに1次エネルギー消費に占める再生可能エネルギーなど非化石燃料の比率を80%以上に高める目標」を明らかにしたという。

中国、非化石燃料の消費割合「60年までに8割以上」: 日本経済新聞

 COP26を前に、中国の取り組みをアピールする狙いもありそうだと日本経済新聞は指摘する。厄介なことになるのかもしれない。

 その中国は、発電量の6割を石炭に頼っているという。インドは7割、日本も30年度に2割の電気を石炭火力で頼る計画で、批判される可能性があるそうだ。

 

 

 Business Insiderによれば、「若い世代、つまり今の10代を見ていると、彼らが環境を汚染しているような会社で働くことを選ぶとは思えない」と、グーグルのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEOが語り、それが、グーグルが、「100%再生可能なエネルギー源にシフトするという野心的な目標を掲げている理由だ」という。

グーグルがカーボンフリーを目指す理由…「今の10代は環境を汚染する企業で働きたがらない」 | Business Insider Japan

ある調査によると、Z世代は地球温暖化がもたらす壊滅的な影響を強く認識しており、上の世代よりも気候危機に取り組むことを中心としたキャリア形成を目指すようになっていると、Insiderが以前報じている。そして実際に、環境関連の学位や仕事を目指す学生の数が増えていると、大学関係者がガーディアンに語っている。 (出所:Business Insider)

 グーグルのようなモチベーションで、気候変動対策に乗り出すのも悪くないのではなかろうか。

 

 

 出雲市にある須山木材が、地元企業へ新たに二酸化炭素100トン分をJクレジットを使って売る契約を結んだという。

Jクレジットで地球温暖化を防止 木材会社が地元企業に二酸化炭素を販売(島根・松江市 出雲市)

須山木材は森林の管理や整備の活動が二酸化炭素の削減に寄与しているとして、国が進めている削減量を他者に売る事ができるJクレジットの認定を3年前に受けていて販売実績を重ねています。今回は仲介した島根銀行も含め二酸化炭素100トン分を合わせて80万円で売ったという事です。(出所:FNNプライムオンライン)

Jクレジットとは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。この制度によって創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できるという。

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(資料:Jクレジット制度

「このJクレジットのお金を山に入れて、疲弊している山林をぜひ蘇らせて行きたいと考えています」と、須山木材の須山社長が話しているという。

 何かの改善に取り組めば、通常、改善効果が直ぐに現れ、劇的に数字の改善が見えるものだが、気候変動対策の場合はなかなかそういかないのかもしれない。直接二酸化炭素の排出を削減する話ではないが、須山木材のような小さな活動を積み重ねていくことが肝要ということなのだろう。

 COP26の開催が迫ったきた。不安と期待が交差する。どんな議論になるのだろうか。