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【グリーンイノベーション基金】国産SAF 持続可能な航空燃料の実現は加速するのか

 

 ANAが2020年10月、フィンランドの再生燃料の世界最大手のネステとSAF 持続可能な航空燃料の調達契約の締結を発表し、焦燥感を覚えた。ユーグレナ社を始めとする国内メーカがあるというのになぜとの思いもあった。

ANAが頼った再生燃料の世界最大手、赤字続きからの逆転劇:日経ビジネス電子版

 そのエネルギー企業ネステを日経ビジネスが紹介している。

 それによれば、世界50カ国から廃食油や動物油などの原料を調達し、世界の3つの工場で再生燃料を生産しているという。主に再生ディーゼル燃料を生産し、トラックなどで使われているそうだ。オランダでは米マクドナルドの店舗から回収した廃食油を原料に再生ディーゼル燃料を生産し、同社提携の物流会社が利用する仕組みをつくり上げたという。

 ネステはおよそ20年をかけて再生燃料の市場を切り開き、稼げる事業に変えたと、日経ビジネスは指摘する。周回遅れになっているのだろうか。

 

 

 国内でSAF事業を展開させようとしているユーグレナ社は今年6月、初めてミドリムシを原料の一部として使用した自社製SAFでの飛行に成功した。

 ユーグレナ社が産声をあげてから15年後のことだった。ただ、まだユーグレナ社は本格的な量産には至っていない。

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(写真:ユーグレナ

 経済産業省が、グリーンイノベーション基金事業として、「CO₂等を用いた燃料製造技術開発」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(案)を公表した。

 こうした状況に危機感を覚えたのだろうか、SAFの開発を支援、その普及を促進させようとしているようだ。

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(資料:経済産業省「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案) 」)

 経済産業省は、SAF の主な製造技術として、ガス化 FT 合成技術、ATJ 技術、微細藻類培養技術等を挙げ、これら燃料の製造技術の現状の課題として、ガス化 FT 合成については、様々な原料の品質を均一化する破砕処理技術、ATJ技術については、高温状態での触媒反応の制御技術、また、微細藻類の培養については、①藻が CO₂を吸収する効率が低く、増殖のスピードが遅い(生産性が低い)、②藻の外部環境への耐性が弱いため、安定的に増殖することが困難(生産の安定性が脆弱)であることを解決する技術をあげ、それぞれの技術確立を急ぐ必要があるという。また、現在はまだ小規模な実証段階に留まり、製造コストが、200~1,600 円/Lとなっており、既製品︓100 円/Lに比べてて、大きく乖離していることを指摘する。

 このため、今後は、上述の技術の確立とコスト低減を実現するための研究開発、大規模実証を実施し、他国に先駆けて 2030 年頃には、既製品と同等の 100 円台/L まで低減し、実用化を達成するという。

 

 

 日経ビジネスによれば、ネステは、早くから時間をかけて欧州だけでなく世界中で、原料となる廃食油を回収ネットワークづくりを進めてきたという。今では世界で4万軒以上のレストランから廃食油を回収しているそうだ。その時々の原料の価格や量、混合割合などを勘案し、世界の3つの工場に原料を振り分けるという。成功事例ということなのだろう。ただ、それだけでは世界が求める量には遠く及ばない。

 ユーグレナ社も「低コストでカーボンニュートラルな燃料」を供給することを第一義とすると、現時点では廃食油をメインに製造するほうが合理的とし、「ミドリムシをまだ使う気はない」という。

「まだミドリムシを使う気はない」ユーグレナ、バイオ燃料事業の本質 | Business Insider Japan

 求められる大規模生産に向けては、足下ではネステ同様、廃食油の回収スキームの確立が課題になるのだろうか。

 ただそれに終わらせることなく、将来のミドリムシを原料にしたバイオ燃料の導入につなげていくべきなのだろう。国も動きだしたなら、それを上手く使って飛躍、国産バイオ燃料の競争力を強めてもらいたい。日本にとどまることなく、世界の脱炭素に貢献する企業に成長してもらいたい。