Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【成長戦略は観光立国】「日本には飛行機が飛んでこない」と航空業界が抱く危機感、政府支援に矛盾はないか

 

 観光立国、Go To再開、そんな言葉が政府の経済対策の原案に上がり、成長戦略に掲げられるという。現状を鑑みれば、それはそれでいいのかもしれない。街に活気があったほうがいいし、外国人のいない街はそれはそれで淋しい。

 ただ、世界ではコロナが収束したわけではない。航空業界の先読みでは、需要回復にはもう少し時間がかかりそうだ。今ここで改めて成長戦略とする必要があるのだろうか。

日本が再び鎖国状態に

「飛行機が飛ばせなくなってしまう」と、JALANAの社長が危惧し、「日本には飛行機が飛んでこない」ということになりかねないという。

 これは航空業界だけの話ではなく、日本の産業全体の話と指摘し、「日本が鎖国状態になってしまうのではないか」というおそれがあると、ANAの平子社長が述べたそうだ。

 

 

 JALの赤坂社長とANAの平子社長が顔を合わせ、NHKのインタビューに答え、「持続可能な航空燃料SAF確保のための取り組みが、日本は大きく出遅れている」と、両者が声合わせ指摘する。

ビジネス特集 飛行機が飛ばせない? ANAとJAL 直面する新たな危機 | 環境 | NHKニュース

十分なSAFが確保できなければ、飛行機を飛ばせないという事態が、現実味を帯びてきた」。

環境意識が特に高い北欧諸国に加え、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スペインなどでも、SAFの義務化や導入目標の設定を検討するなど、規制強化の動きが広がっているのです。 (出所:NHK

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異例の共同レポート

 JALANAが10月、共同でレポートを発表し、SAFの国産化を希望した。国内企業によるSAFの商用化がまだ実現できていないことが背景にある。まずは航空業界自ら将来の需要を示し、早期の国産化に向け、国の支援や関連企業の連携を呼びかけたのではないかとNHKが解説する。

SAFの開発には、巨額の投資を伴うと思います。おそらく民間や個社でやるというのは限界があり、政府の支援というのも必要になってくると思います。

われわれの危機感を、多くの皆さんにご理解いただきながら、SAFの国産化に向けて、われわれ2社も協力して努力していきたい(ANA平子社長)。(出所:NHK

 観光立国を喜びそうな航空業界が危機感を示し、政府に注文を付けることに不思議さを感じずにはいられない。

 成長戦略の優先順位を違えていないだろうか。既得権益を擁護し、足下で国民受けしそうな施策では、避け得ない気候危機に対処できないばかりか、産業を滅ぼしかねない。

 

 

脱炭素を加速させるグローバル企業 = 米国

米国では、COP26に合わせて、「ファースト・ムーバーズ・コアリション(First Movers Coalition)」が発足した。この枠組みは、2050年までにネット・ゼロを達成するために必要な重要技術の早期市場創出に向け、グローバル企業が購入をコミットするためのプラットフォームだという。

「ファースト・ムーバーズ・コアリション(First Movers Coalition)」発足 ~低炭素技術の需要喚起に向けて~ > メディア | 世界経済フォーラム

 このコアリションは、8つの主要なセクター、鉄鋼、セメント、アルミニウム、化学品、海運、航空、トラック輸送、DAC(直接空気回収)からなる。DACを除く、7つのセクターは、世界の二酸化炭排出量の3分の1以上を占めているという。

 日本の航空業界と同様これらの部門では、今の化石燃料に代わるコスト競争力のあるクリーン・エネルギーはまだ登場していないと危惧する。このため、グローバル企業みずから、これらに関わるニーズを明らかにし、購入をコミットしたそうだ。たとえば、航空においては次の通りだ。

航空:メンバーは、2030年までに、大幅に排出量を削減した持続可能な航空燃料(SAF)、電気、水素の推進力などの新興技術を航空旅行に使用することをコミットメントとしています。(出所:世界経済フォーラム

 このイニシアティブは米政府と世界経済フォーラムの主導によるものといい、アップルやアマゾンなどグローバル企業30社が参加しているそうだ。

 こうしたことは、ニーズが明らかで、今後の成長が見込めるのだから、あえて成長戦略に分類する必要がないのだろうか。

 産業界ばかりでなく、そこには切実なニーズ、ペインがありそうだ。確実に、よりスピーディに、より効率的に実現していくためには、国境をまたいで、国際協力するのがいいのかもしれない。政府支援が求められていそうだ。