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【COP26を再確認する】 「グラスゴー気候合意」と日本の課題

 

 COP26が閉幕し、閣僚級会合に参加していた山口環境相が帰国、首相に報告を行ったという。

首相、気候変動対策急ぐよう指示 石炭火力削減で協議着手 | 共同通信

 共同通信によれば、岸田首相は「国内での実施体制を含めて頑張ってほしい」と述べ、気候変動対策を急ぐよう指示し、「これから長い道のりだが、頑張って進めてほしい」と述べたという。また、気温上昇抑制への努力を追求するとした成果文書の採択を踏まえ「歴史的な会議だった」と評価したそうだ。

 その評価に見合うよう、まずは首相自身が優先順位があげ、スピード感をもって対応してもらいたい。

 

 

石炭に言及しない、COP26 日本政府代表団の報告書

 英国グラスゴーで開催された会合には、世界リーダーズ・サミットに岸田首相が出席し、山口環境相が閣僚級交渉に出席した他、外務省、環境省経済産業省財務省文部科学省農林水産省林野庁国土交通省金融庁 の関係者が参加したそうだ。

 その日本政府代表団が、「国連気候変動枠組条約第 26 回締約国会合(COP26)結果概要」という報告書を公表した。

 それによれば、COP24 からの継続議題となっていたパリ協定6条(市場メカニズム)の実施指針、第 13 条(透明性枠組み)の報告様式、NDC 実施の共通の期間(共通時間枠)等の重要議題で合意に至り、パリルールブックが完成したという。
 加えて、議長国・英国の主導で実施された各種テーマ別の「議長国プログラム」では、それぞれの分野における取組の発信や実施枠組みへの参加等の対応を行ったと報告している。

 ただ英国が主導した脱石炭については言及していない。あくまで代表団の成果をまとめた報告であろうか。 

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WWFジャパンの報告

 COP26に参加したWWFジャパンがCOP26についての報告を公表した。

COP26閉幕!「グラスゴー気候合意」採択とパリ協定のルールブックが完成 |WWFジャパン

 それによれば、世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるための削減強化を各国に求める「グラスゴー気候合意」が採択され、パリ協定のルールブックも完成、また、市民組織や企業、自治体などの非国家アクターによる、パリ協定の実現に向けた強い意志が示された会議となったという。

 完全ではないものの、前進があった会議として受け止めているのだろうか。大きな問題が一気に解決されることはない。2015年のパリ協定から漸進したということなのだろうか。

 

 

 WWFジャパンによれば、COP26において採択された諸決定のうち、議題全体に関わる重要な決定は、表紙になるような決定という意味で、「カバー決定」と呼ばれるそうだ。このカバー決定において、COP26は、削減目標の強化にかかわる2つのメッセージを出したという。

 1.5℃目標と継続的な2030年目標の見直し

 1つ目のメッセージは、世界の目標としての「1.5度」の強調という。

2015年に採択されたパリ協定はその第2条において、世界全体の目標を「平均気温を2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」と定めています。

しかし、その後の科学的知見の積み重ねを受けて、気候危機の被害を最小限に抑えるためには、1.5度に抑えることがより重要であるという認識に移りつつあります。今回は、その世界的潮流を反映し、カバー決定もこの1.5度に抑えることの重要性を「認識」した決定となりました。

これは、世界の気候変動対策の基準が、事実上「1.5度」にシフトしたことを示しています。(出所:WWFジャパン)

2つ目のメッセージは、継続的な「2030年目標の見直し」。これは、2022年末までに、2030年目標を「再度見直し、強化すること」を各国に要請したとことを意味するという。

 

 

石炭

今回のカバー決定において、もう一つ特筆すべき、異例の措置となったのが「対策のされていない石炭火力を減らし、非効率な化石燃料補助金の廃止すること」を呼びかけたことです。 (出所:WWFジャパン)

「各国の個別の政策に関わる事項は避けたがる国連の場で、こうした特定の燃料の廃止を呼びかけることは異例であり、それだけ、これらの廃止が気候変動対策にとって必須の条件であることの認識が世界的に広がったといえる」とWWFは指摘する。

パリ協定からの漸進

「COP26で、2度未満の長期目標から1.5度をメインにすることが鮮明になりました」とWWFジャパンの小西専門ディレクターはいう。そして、パリ協定には見られなかった展開もあったという。

そのために2030年に45%削減(2010年比)、2050年にゼロにすることも明記。これはパリ協定が最新の科学にしたがって新しい進化を遂げたことを意味しており、今後の世界経済が2050年脱炭素社会に向かうことが規定されたと言っても過言ではありません。(出所:WWFジャパン)

排出権取引

 また、排出権取引市場メカニズムなどのルールも決まり、パリ協定が完成したことで、まだ国内の温暖化政策の乏しい日本に大きな課題を突き付けていると、小西氏はいう。

まだ明示的なカーボンプライスが存在しない日本、世界共通のカーボン取引市場が立ち上がる中、遅れているカーボンプライシングの導入を早急に実施し、電力の脱炭素化を現実的なタイムラインで進める必要があります。1.5度の世界に向かって日本は大きな宿題を抱えています。(出所:WWFジャパン)

 こうした重要な国際会議の決定事項も、立場立場によって、その受け止めに差があるのかもしれない。

 政府の高官たちはどんな理解で、何を課題と認識したのだろうか。要注意で、その行動を見続ていけていかなければならない。

 

「関連文書」

COP26の成果文書「グラスゴー気候合意」要旨: 日本経済新聞