Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

脱炭素、脱石化を進める三菱ケミカルの株価が下がる 物足りないヘルスケアの成長戦略他

 

 化学メーカー大手の三菱ケミカルホールディングスが、石油化学事業や炭素事業を切り離し、他社との統合を含めて検討していくことを明らかにしたという。

新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定 | IR情報 | 三菱ケミカルホールディングス

 NHKによれば、この2つの事業を切り離す理由は、今後、成長が見込みにくく、世界的に削減が求められている二酸化炭素の排出が多いことによるそうだ。

 

 

「世界中が脱炭素に焦点を当てる中、国内のエネルギーコストはこれから上昇していく」。

石油化学事業は、日本での統合再編が避けられないだろう」と、 三菱ケミカルHDのギルソン社長が述べたという。

プラメーカ、変わる事業ポートフォリオ

 いつしかプラスチックスの時代と呼ばれるようになって、ありとあらゆるものが軽量化、耐久性、そして安価を理由にしてプラスチックスに置き換わっていった。

 そうした時代においては、化石燃料から作られる基礎化学品は欠かせない原料だった。派手な成長産業ということはないまでも、これらを扱う企業は安定、優良企業かと思われていた。

 脱炭素の時流の中で、そうした価値観にも変化が起きつつあるということなのであろうか。

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(資料:三菱ケミカルホールディングス

 三菱ケミカルは石化事業では「ポリエチレン」などを製造し、炭素事業では製鉄の原料で、石炭由来の「コークス」をつくっているという。

「ポリエチレン」、使い捨てプラの削減が進み、脱プラが進めば、必要量が減るのかもしれない。

「コークス」、水素還元鉄など、製鉄の脱炭素化が進めば、コークスは不要になるのかもしれない。

 これら2つの事業は、グループ全体の売り上げのおよそ2割と、大きなポーションを占めていたが、事業ポートフォリオを見直し、三菱ケミカルは、エレクトロニクスとヘルスケア&ライフサイエンスを最重要戦略市場と位置付けるという。

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(資料:三菱ケミカルホールディングス

減少続く化石燃料、増える再生可能エネルギー

 資源エネルギー庁が昨年度のエネルギー需給の実績をまとめ公表した。

集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)|資源エネルギー庁

 それによれば、エネルギーの国内供給は、前年度比で6.1%減し、化石燃料は7年連続で減少、また原子力も2年連続で減少したいう。一方、再生可能エネルギーは8年連続で増加した。

 エネルギー起源のCO2排出量は、前年度比6.0%減、2013年度比で21.7%の減少となり、7年連続で減少、10億トンを下回って9.7億トンとなったそうだ。

 

 

 福島の事故で原子力の時代が終わりを迎えるように、何から何までプラスチックスに置き換わっていった時代もまた終焉を迎えることになるのだろうか。三菱ケミカルの事業再編にそんなことを感じる。

まとめ

 三菱ケミカルホールディングスの株式が一時、10%安まで売り進められたという。新たな経営方針を発表したが、成長戦略が投資家の期待に届かなかったことが理由のようだ。

三菱ケミカルHD株、一時10%安 石化分離後の戦略に失望: 日本経済新聞

 石化事業や炭素事業を2024年3月期をめどに切り離すことは、評価する声がある一方で、成長が見込まれるヘルスケア関連の戦略が失望を呼んだという。

 こうした市場の声に応えることが、今なら社会の期待にも応えることになるのかもしれない。

 化石燃料に頼らざるを得ないところも残るのだろうが、粛々と脱炭素を進めていかなければならない。こうしたプラスチックス産業における「脱炭素」が、使い捨てプラスチックスの縮小、「脱プラ」の一助になっていくのかもしれない。否、そうできるようにしていかなければならないのだろう。