ここ最近、ESG投資が急速に浸透している。ESG投資が誕生し、より環境や社会が重視され、より企業活動が健全化していくと期待した。しかし、注目が集まれば集まるほど、また参加する人が増えれば増えるほど、評価基準が曖昧になったりするのだろうか。
ESG投資、E(環境)・ S(社会)・ G(企業統治)に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことをいう。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つといわれる。
投資するために企業の価値を測る材料として、これまではキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報が主に使われてきました。
それに加え、「非財務情報」であるESG要素を考慮する投資を「ESG投資」といいます。(引用:年金積立金管理運用独立行政法人)
MSCIのESG格付けは信用できるか
米MSCIのESG格付けを「サステナブル(持続可能)な社会の実現より、ESGが企業の最終利益を阻害しないかを重視しているのが実態だ」と、ブルームバーグが批判している。
ESG Weekly: ESG格付けが投影するサステナブル投資の蜃気楼 - Bloomberg
企業のESG格付けは、信用格付けとは全く別物とブルームバーグは指摘する。「米証券取引委員会(SEC)が監督する信用格付けでは、格付け会社は企業の同じ財務情報を基にデフォルト(債務不履行)リスクを評価するため、ほぼ毎回横並びの結果になる。
ところだ、ESG格付けには、格付け手段や結果について規制する公的機関はないという。
サービス提供各社が独自のシステムやアルゴリズム、メトリクス、定義、非財務情報を使っており、そのほとんどは透明性を欠き、格付け対象企業の自己申告への依存度も高いため、結果が食い違う場合が多く、大きく異なると問題指摘する。
MSCIの「より良い社会」の実現をうたうマーケティングとその格付け手法には実質的なつながりはない。
MSCIの格付けでは、ある企業が地球と社会に与えるインパクトを測るわけではないからだ。むしろ企業とその株主に対して世界が与え得るインパクトを測っている。MSCIはこの点について反論しないばかりか、同社のやり方は格付け対象企業の財務面において重要性が高いと主張する。(出所:ブルームバーグ)
「マクドナルドの格上げを巡り、MSCIは、環境問題がマクドナルドに損害を与える可能性があるかどうかだけを注視し、地球へのリスク軽減は二の次としている」。
気候変動や地球環境を思えば、ブルームバーグの指摘は正論なのだろう。
一方、日本取引所グループは、MSCIのESG格付けを以下のように説明する。
MSCI ESG格付けは、機関投資家がESG(環境、社会、ガバナンス)のリスクと機会を特定するのに役立つように設計されています。
企業は、業界固有のESGリスクに対するエクスポージャーと、同業他社と比較した当該リスクに対する管理能力に応じて、「AAA」から「CCC」の尺度で格付けされます。(引用:JPX 日本取引所グループ)
言葉から伝わる印象を鵜呑みにするのではなく、格付け内容を確認し、その目的を理解し、利用することが求められているのだろう。そう意味では、地球環境にとって良い方向に向かうことはあっても、必ず良い結果が出るとは限らないのかもしれない。
どの企業も取引先を格付けするルールがあったりするのではなかろうか。勤めていた電機会社でも半期ごとに取引先を製造業の付加価値であるQCD(品質・コスト・納期)や取引条件などを定量的に評価、格付けし、取引先にビジネスレビュー会議でフィードバック、問題があればその是正を求めた。また、その格付け結果をもとにして、来期の発注比率を調整することもあった。いわば、奮起を促し、同業他社と適正に競争することを求めた。また、評価が低い取引先を重点的に指導することなどにも活用されていた。いわばエンゲージメントとでもいうのだろうか。格付けとはそういうものではなかろうか。
☆
ESG投資に、インパクト投資、投資という名がつく以上、やはりリターンに期待があるのだろう。株主第一主義を否定されてはいるが、それが定着するまでにはもうしばらく時間がかかるということなのだろう。
「なぜ投資をするのか。なぜ投資を受けるのか」、これはいい問いのかもしれない。
経済の合理性と非合理性の橋渡し。ESG投資とインパクト投資の違いとは? | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
「関連文書」
インパクト投資に不可欠な視点。善行は3倍の「純利益」を生む | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)