善行が増えているのだろうか。企業がこれまでを改心し、「地球により良く」を目指して事業を再構築しているのではないかと思うような報道が多くなっていそうだ。
日産自動車と住友商事が、自治体の脱炭素の取り組みを連携して支援していくと発表した。
環境省が推進する「2050年ゼロカーボンシティ」を表明している自治体が490を超えた。一方、ゼロカーボンシティを実現していくには、自治体における計画策定、再生可能エネルギー導入・活用が重要となるが、それに関する知見・人員の不足が自治体の課題とされている。
日産自動車によれば、今回の協定はモビリティとエネルギーの切り口から、「ゼロカーボンシティ」にむけ、各自治体における地産地消型脱炭素社会の実現を支援することを目的としているという。
モビリティおいては、自治体が運営する施設、地域企業、住民に向けて、EV車両の導入やカーシェアの環境構築を行い、また、エネルギーにおいては、再生可能エネルギー由来の電力の導入により、電力の脱炭素化を進め、再エネ電力取引のプラットフォームの導入により、モビリティとエネルギーの効率的なエネルギーマネジメントを実現し、レジリエンスを強化するとともに、地域内のエネルギー循環を確立するという。いわばEVを蓄電池に見立てた分散型電源を確立しようということであろうか。
2019年、台風15号が千葉を襲い、大停電が発生したとき、日産リーフが駆け付け、電源供給した。この実績をもとに、システム化しようということなのであろうか。
こうした動きも本来は、自治体が号令を掛け、サステナブルな街作りとして、官民連携で進められる仕組み作りが求められる。互いの足らざるものを補い合い、さらに多様な企業に参加を求めれば、デジタル化や思わぬ副次効果も生まれることになっていくのだろう。こうして社会基盤、インフラが整えば、SDGsにつながる街の姿が見えてくるはずだ。
企業に課せられる新たな義務 非化石エネルギー
脱炭素に後ろ向きとみられていた新政権もここ来て様々な施策を繰り出すようになってきた。
経済産業省が、エネルギー使用量の多い国内企業約1万2000社を対象に太陽光や水素、原子力など非化石エネルギーをどのくらい使うかの目標設定を義務づけるという。
石炭など化石燃料の使用を減らして温暖化ガス排出量の削減を促す狙いがあるそうだ。
非化石エネルギーの使用量、1万2000社に目標設定義務化: 日本経済新聞
日本経済新聞によれば、エネルギー使用量が原油換算で年1500キロリットル以上の企業が対象になるという。製造業だけでなく、延べ床面積3万平方メートル以上の小売店やオフィスなども想定しているという。
カーボンプライシング導入に向けて
炭素税の導入に後ろ向きとされる与党をよそに、環境省が「カーボンプライシング」について今後も議論を続けていくという。
“脱炭素”に向け 地球温暖化対策税の見直し含め検討へ 環境省 | 脱炭素社会への動き | NHKニュース
NHKによれば、「カーボンプライシング」を議論してきた環境省の有識者委員会が、今後の検討の方向性をまとめたという。
「炭素税」については、すでに石油や石炭などへの課税に上乗せする形で導入されている「地球温暖化対策税」の見直しを含めた検討を行うとしているという。「地球温暖化対策税」は、海外の国と比べて税率が低いなどの問題を抱えている。
価値観が変化していく中で、税の改革が必要になっているのではなかろうか。地球環境にやさしいものと、そうでないものの税負担の割合に差異を設けることで、脱炭素をより強力に推進できる税制がいいのかもしれない。
ESG投資
ESGを投資テーマにするファンドに、何千億ドルもの資金が流入しているという。
マイクロソフトとテスラ、ESGテーマのファンド好成績に寄与 - Bloomberg
今年、そのサステナビリティに的を絞ったものの中で成績がトップクラスだったファンドは、30年以上前、米フィデリティ・インベストメンツが開始した「フィデリティ・エンバイロメント&オルタナティブ・エナジー・ファンド」だったという。
今年これまでのリターンが24%。組み入れ上位のマイクロソフトとテスラ株が寄与したそうだ。言わずと知れているように、マイクロソフトはカーボンネガティブを目指し、テスラはEV電気自動車ばかりでなく、蓄電池事業にも精を出す。
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こうした環境変化がさらに火をつけ、企業の善行を加速させようとするのだろうか。外堀が埋まれば、企業も動かざるを得なくなる。自分だけ置いていかれるわけにはならない。その裾野がさらに広がっていけばいいのだろう。大企業ばかりでなく地域の中小を包含していくのが理想なのだろう。
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