Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

増える輸入材を利用したバイオマス発電、再エネ買い取りはほんとうに正しいのだろうか

 

 あちらこちらでバイオマス発電所が立ち上がっては、発電がはじまっているようである。東芝のグループ会社で、発電事業を行う九州のシグマパワー有明も1月11日、福岡県大牟田市で2基目のバイオマス発電所を稼働させたという。

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(写真:東芝

 東芝によれば、この発電所の合計発電出力は44.2MWで、一般家庭約7万世帯分に相当する電気を供給できるという。この発電所でも燃料にはPKSヤシ殻が使用されるそうだ。

 バイオマス発電、光合成によりCO2を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とした発電はこれまで取扱上、CO2を排出しないものとされ、再生可能エネルギーとみなされてきた。

 

 

 ここ最近、急激にバイオマス発電が伸長しているのではなかろうか。だだ、2023年頃になると、大規模な木質バイオマス発電所の新設が鈍るとの予測があるという。理由は、FIT制度(固定価格買い取り制度)の見直しによるという。

バイオマス発電の問題点

バイオマス白書2021」によれば、2023年度以降早期に、ある規模以上のバイオマス発電所を「FIP制度」のみ認めることを目指して調整が進んでいるそうだ。

バイオマス白書2021|トピックス|FITバイオマス発電をめぐる変化|1 FITバイオマス発電をめぐる制度の変更と課題

 これまでバイオマス発電は、FIT制度により2020年9月時点で、709カ所822万kWのバイオマス発電所が認定されてきたという。その上、その認定容量の9割弱が主に輸入バイオマスを燃料とする一般木材バイオマスの区分となっているそうだ。

一般木質バイオマス発電の認定量の半分に当たる370万kWの発電所が稼働した場合、約6.5兆円の国民負担が生じるが、輸入バイオマスであるため地域経済への恩恵は限られ、エネルギー自給とならない

さらに、天然林を伐採した全木ペレットなども含まれ、遠距離を輸送することから温暖化対策効果にも疑問が持たれている。(出所:「バイオマス白書2021」)

 「バイオマス白書2021」は、「土地利用転換を伴うバイオマスは、石炭以上の排出となる」ことを指摘、こうしたことなどから、「天然林を伐採した木材由来燃料はFIT対象としない」、「天然林を転換した植林地からの木材由来燃料についても、炭素ストックの減少や生物多様性の損失の観点から、FITでの支援対象から外すべき」という。

 その上で、FIT一般木質バイオマス発電(1万kW以)に関し、GHG基準が検討中であることをふまえ、開始期限を当面、延長する。未稼働の輸入燃料による木質バイオマス発電は、できるだけ稼働しないよう誘導すべきと提案する。

 

 

 ここ最近、バイオマス発電の稼働が増えるのは、こうしたバイオマス発電に対する規制強化の動きがあるためなのだろうか。

 規制強化の背景には何があったのだろうか。これまでの知見が不足していたということなのだろうか。それとも規制強化せざるを得ない、制度を悪用した燃料利用が増えたということであろうか。

林業の再生、早生樹資源の有効活用

 東京農工大学バイオマス発電所など使用する燃料に使う木材を従来より早く生産できる林業の実現を目指し、実証研究を始めたという。

早生樹資源の有効活用による「カーボンニュートラル社会と林業再生」実現(ジャパンインベストメントアドバイザー)

 戦後、造林されたスギやヒノキの人工林が主伐期を迎え、伐採後の再造林が課題となっているという。再造林の種別とし、成長速度が速い樹木である「早生樹」を利用した森林の造成が注目され始めているそうだ。春先の花粉症を思えば、それはそれでいいことなのかもしれない。

「早生樹」とは、「早く」「成長する」「樹種」の総称で、一般的には、スギやヒノキに比べて初期の樹高成長量や伐期までの材積成長量大きな樹種を指すそうだ。

10年から25年位の比較的短伐期での収穫が可能で、センダン・ユリノキ・チャンチンモドキ・コウヨウザン等の種類があります。(引用:近畿中国森林管理局

 ジャパンインベストメントアドバイザーによれば、この共同研究では、森林科学・木質バイオマス科学の観点から、早生樹を活用した「スギやヒノキ人工林伐採後の再造林手法」、「カーボンニュートラル等の脱炭素社会」の構築を目指すという。

 また、輸入のバイオマス燃料によらない、国産木質バイオマスエネルギーの安定供給、「脱炭素社会に貢献する新しい林業」の有り様を確立するという。

 

 

 カーボンニュートラルの実現のためには、再生可能エネルギーの普及は欠かせない。その目的とは裏腹に、制度を悪用し、効果も不確かなものが普及拡大することに危惧を感じる。

 バイオマス発電、確かな議論を進め、GHG温室効果ガス低減効果を検証し、SDGsに則り、燃料供給を含め、持続可能な産業にしていかなければならないのだろう。

 日本の国土の約7割を森林が覆っている。豊かな資源であると同時に豊かな自然でもある。その維持のためには、持続可能な林業も欠かせない。

 

「参考資料」

近畿中国森林管理局における早生樹造林の取組:近畿中国森林管理局

シグマパワー有明「大牟田第一・第二発電所」の運転開始 | 東芝エネルギーシステムズ株式会社

【社説】バイオマスエネに力を注ぐ専門商社 | 化学工業日報

今年度のバイオマス持続可能性WGの進め方 令和3年6月(資源エネルギー庁)