東急ハンズには思入れがある。まだ世に出たばかりの新商品の拡販しようと、何度かお店に通った、そのかいもあって、販売していただくことになった。その時、売り場の責任者から「ハンズらしい商品!」と声をかけられたのがうれしかった。
その東急ハンズがカインズの傘下になるという。東急不動産が12月、ハンズの売却を発表した。
Fashionsnap.comによれば、売却の理由は、少子高齢化による客層の行動変容とそれによる小売業界の飽和、EC化の進行など小売業界の環境変化による業績低迷があり、新型コロナが追い打ちをかけたという。
東急ハンズは、1976年創業、DIYを中心とした提案型ライフスタイルショップとしてスタートし、幅広い品揃えと豊富な商品知識に基づいたコンサルティングセールスという小売業としては独自のスタイルを築いてきたという。
そのハンズには自らの理念を記した解説本があるそうだ。それには、マンホールをテーブルに加工したり、廃船から計器や調度品を調達したりと、モノに新しい価値を吹き込むハンズの個性が見て取れるという。今でいう「アップサイクル」の原型のようなものだったのかもしれない。そのハンズの解説本は1986年に発行されたそうだ。
「ハンズを手放す」決断下した東急不動産の苦悶 | 小売の常識覆した「素人集団」はなぜ挫折したか | ニュース最前線 | 週刊東洋経済プラス
ハンズに来店して商品を見て重さを確認し、説明書に書いていない使い方まで教えてもらった末に最安値のECで買うという顧客もいる。だったら入場料取れ!と冗談混じりで言ったこともある。(出所:東洋経済プラス)
当時、ハンズの強みのひとつに実演販売があると聞いた。求めに応じて、店頭に立って、実演販売をやってみた。実演販売中に売れるのは稀だったが、不思議にその後になってお店やECで売れるようになった。確かに強みだったのかもしれない。
「本来であれば、もっと早い段階でハンズなりのPBやECのあり方を提示できていればよかったのだろう」
東急不動産ホールディングスの西川弘典社長がインタビューでそう答える。
「2030年度にどうありたいか」をグループ会社ごとに提示してもらったところ、ハンズからは「(物販を通じて新しい発見や発想を提案する)『ヒント・マーケット』をデジタルでも表現したい」という提案があった。(出所:東洋経済プラス)
物を売らない百貨店
時が経ち、コロナ渦で物の売り方もずいぶん変わっているようだ。
デパートには「売らない店」が増えているという。店舗はショールームと割り切り、「お店はお試しのみで、お買い上げはインターネット」。
OMO「Online Merges with Offline」オムニチャネルという販売スタイルであろうか。
デパートに「売らない店」 お試しのみ、購入はネットで:時事ドットコム
岐路に立たされる百貨店が、ネット通販の新興ブランドをそろえ、若者ら新たな客層の開拓を狙うという。コロナ禍のおかげで、オムニチャネルが加速ということであろうか。
最短15分で配送のクイックコマース
Zホールディングスのヤフとアスクルに出前館が、食料品や日用品のクイックコマース即配サービス「Yahoo!マート by ASKUL」を始めたという。
「Yahoo!マート」は、ユーザーが出前館のサービス上で、アスクルが販売する食料品や日用品を中心とした約1,500種の商品の中から注文・決済すると、最短15分で商品を受け取ることができるという。注文を受けた後、出前館の配達員が都内の専用倉庫(店舗)で該当商品を受け取り、指定された配達先に自転車やバイクで商品を届けるそうだ。
こうしたサービスもコロナ渦による消費スタイルの変化の現れなのだろうか。ずいぶん便利になったものと感じる反面、便利な都内でここまでやる必要があるのかとも感じる。こうしたサービスをもっと切実に欲する地域もあるのではなかろうか。
デジタル化、DXでハンズは出遅れたのかもしれないが、早い時期からオムニチャネルに近い販売方法を取り入れていたのではなかろうか。カインズ傘下になることで違った視点でデジタル化が進むことを期待したい。
ハンズのお店に行けば、なぜかワクワクするものだ。輝きを取り戻して欲しいものだ。しばらくは「東急ハンズ」の名は残るというが、ゆくゆくは東急の冠がはずれるそうだ。