Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

再生可能エネルギーの低価格は進むか、三菱商事が仕掛けた洋上風力の価格破壊

 

 再生可能エネルギーの価格が低下し、その恩恵をみなが享受できるようになる。それがこの先の脱炭素社会を思えば、理想的なことなのだろう。

 日本の再エネ価格は高く、脱炭素への障壁と言われ、競争力維持に悪影響を及ぼすことが指摘されていた。政策的な問題もあるといわれるが、それだけなのか、そんな疑問もあった。

 

 

価格破壊

 洋上風力発電再生可能エネルギー普及の切り札といわれる。洋上風力は、「再エネ海域利用法」に基づいて、公募入札にかけられ受注が決まるという。

 その第一弾のプロジェクト、「秋田県能代市三種町男鹿市沖」に、「秋田県由利本荘市沖」、そして、「千葉県銚子市沖」の3海域すべてを三菱商事連合が受注し、業界を驚かせたそうだ。

 3案件それぞれに、本命と目された企業連合があったそうだが、三菱商事連合が驚愕の価格を提示し、それら本命を蹴落とし、すべて落札してしまったという。

 それほどに驚きの価格で、「価格破壊」と東洋経済プラスは形容する。

洋上風力 価格破壊ショック | 特集 | 週刊東洋経済プラス

三菱商事が札を入れた売電価格は、21年度の大規模太陽光発電の入札価格に迫る水準。一夜にして業界の常識が覆った」。

入札で敗北した企業の幹部は、「数字を見たときは愕然とした」と打ち明ける。(出所:東洋経済プラス)

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発電機を独占した米GEと国内メーカが協力へ

 今回三菱商事が受注した洋上風力発電では、GEの発電機が採用されることになり、3海域に134基のタービンすべてを納めることになるという。

GE×東芝連合が担う重責 | 洋上風力 価格破壊ショック | 特集 | 週刊東洋経済プラス

洋上風力の発電設備は部品点数が1万点以上に及び、国内外の多くのメーカーが参入を計画する。(出所:東洋経済プラス)

 

 

 GEは日本企業との関わりが深く、今回の事業者選定前に、GEは東芝と洋上風力事業で提携すると発表したそうだ。東芝は京浜事業所で発電機を収めるナセルを製造するほか、部品調達や販売、保守管理といったサプライチェーン構築でも協力するという。

 競合メーカーからは「ナセルの組み立ては儲からない。経営危機の東芝は、利幅が薄くても仕事が欲しいから飛びついた」という冷ややかな見方もある。実際、火力発電ビジネスの縮小により、東芝の京浜事業所の仕事は今後減少が見込まれる。少しでも工場稼働率を高める狙いで、GEと連携した側面があったことは否めない。(出所:東洋経済プラス)

 そういえども、これによって、国内部品メーカの受注機会は増大する。大手ベアリング(軸受け)メーカーのNTNは、ハリアデX向けの受注獲得に意欲を見せ、洋上風力の基礎構築物(モノパイル)の製造事業を手がけるJFEエンジニアリングは、国内初の着床式基礎の工場を岡山県の製鉄所敷地内に建設する予定という。

 国内のものづくりが活発化する機会になるのだろうか。

 三菱商事の低い売電価格は、サプライヤーへのコストダウン要求となる可能性は否めない。しかし、すでにコストダウンが進む海外市場で実績のある企業には、重荷ではないと東洋経済プラスはいう。

「主戦場の海外と比べると、さほどびっくりする価格ではない」と話す風車の基幹部品を扱う企業幹部の声もあるそうだ。

「価格破壊」、城山三郎氏の著作を思い出す。大手総合スーパーの「ダイエー」の創業者中内功さんをモデルに描かれたといわれる。流通機構、再販価格などに挑み、当時の常識を打ちこわし、消費者のために低価格を実現していく。やがてダイエーは業界の頂点に立つが、その勢いは失われていく。

 再エネの低価格化に挑んだところで、まさかダイエーのようなことになることはなかろう。そのためには、まだまだやるべきことはあるはずだ。まずは今回のプロジェクトを受注できなかった企業連合群は考え方を改めなければならないはずだ。