ロシアによるウクライナでの戦争で、多くの人命が失われている。人道危機であり、人権侵害も甚だしい。西側諸国はロシアに大規模な経済制裁を続けている。
冷戦終結後の世界ではグローバル化が進み、その上に様々な秩序が作られていった。今、そうしたものが崩れ始めているのだろう。
真の脱炭素
EU欧州連合はエネルギー分野における脱ロシアに舵を切った。また、世界最大の資産運用会社の米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者は「ロシアのウクライナ侵攻で、再生可能エネルギーへの世界的なシフトとデジタル通貨の使用が加速する可能性がある」と指摘したという。
ブラックロックCEO、ウクライナ侵攻で再生可能エネへの移行加速へ - Bloomberg
フィンク氏(69)は株主への年次書簡で、ウクライナでの戦争により、温室効果ガスの排出実質ゼロ(ネットゼロ)達成に向けた動きが短期的に「鈍るのは避けられない」ものの、長期的には再生可能エネルギーの使用が加速するとの見方を示した。(出所:ブルームバーグ)
ブルームバーグによれば、フィンクCEOは「欧州の政策担当者は既に、エネルギー安全保障の重要な一部として再生可能エネルギーへの投資を促進している。自前のエネルギー資源を持たない国々はこれまで以上にそうしたエネルギーへの資金提供と開発を進める必要がある。多くの人にとってそれは風力・太陽光発電への投資を意味する」と説明したという。
足元、移行期間においては仕方がないにせよ、脱化石燃料、脱原発を粛々と進め、その依存度を可能限り最小化するということが、安全保障の肝になるのだろう。差し当たっては、フィンクCEOが言う通り再生可能エネルギーへのシフトが順当なことなのだろう。それは脱炭素の流れにも適うし、ESG投資をより加速させるものだろう。
ESG投資
新疆綿とジェノサイド( 国家あるいは民族・人種を計画的に破壊すること)との関わりが疑われ、多くの企業がその扱いを中止するようになった。
今多くの企業がロシアから事業撤退を始めているが、まだ操業を続ける企業もあるようだ。
人権違反がある企業との取引を中止し、それを排除しようとすることは、昨今のESG投資の流れからいってもリーズナブルなことなのだろう。ただロシアのような国家による戦争の場合はどう対処すべきなのだろうか。
ESG Weekly:ESGへの疑念深まる、対ロ投資でグリーンウォッシュ露呈 - Bloomberg
ロシアという国で事業活動を続けることは、ESG投資の精神に反することはないのだろうか。また、プーチンとの関係性が強く制裁対象となっているロシア新興財閥オリガルヒの関連企業と取引を継続することは許されるのだろうか。
ブルームバーグによると、大手ESG格付け提供会社のMSCIは自社のウェブサイトで、ESGの格付けは「企業の善良さについての一般的な基準ではない」と明記しているという。そのなのかもしれないが、いまいち釈然としない。
ESG投資の意義は揺らいでいないのだろうか。悩ましい問題なのだろうけれど、新たな基準が求められているように思えてならない。