小麦や食用油など原材料の価格高騰が続いている。企業のコスト低減努力だけでは、それら吸収できなくなったと、相次いで様々な物品が値上げとなっている。これにウクライナ危機や円安の影響が加わったら、天井知らずに物価が上昇しそうで不安を感じる。
そんな中、ペヤングソースやきそばのまるか食品が、価格の据え置きを発表したそうだ。
ペヤング「値上げしません」、工程見直しで価格抑える まるか食品:朝日新聞デジタル
原材料価格や資材価格の上昇が進んでいるが、生産工程の見直しによるコスト削減で吸収できると判断したそうだ。朝日新聞によれば、据え置く期間は「しばらくの間」とし、具体的な時期まで示すことはできないとしたという。
ウクライナ危機と迫りくる食糧危機
ここ数年、この先の食糧危機が指摘されている。世界の人口が急増することがその一つの要因と言われる。また、今後の肉食の増加によっては、畜産のために飼料の生産も増加し、農地の取り合いが起きるとも言われる。
そうした中、ウクライナ危機で、ウクライナ、ロシア双方から穀類やヒマワリ油の供給が止まっているという。戦争が長引けば長引くほど、食糧危機に拍車をかけることになるのだろう。
農産品を急激に増産することは難しさそうだ。種や肥料、農機具など準備が整わなければ、農産物を生産できない。何より必要なことは農地に適した土地を整えることだ。
ロシアによるウクライナ侵攻が、世界に「穀物危機」を引き起こす | WIRED.jp
米国にはCRP保全休耕プログラムによって農地として使われていない土地がおよそ2,220万エーカー(約890万ヘクタール)あるという。
仮にこうした土地が使われるようになっても、今年の小麦の供給状況に与える影響力は小さいという。また、CRPには環境保護の観点からやせた土地を維持する理由があり、農地に戻せば、生物の多様性が損なわれ、炭素固定ができなくなるという。
厄介な問題である。
ただ、「世界の穀物市場に起きた最大の供給危機」という事態を緩和するには、こうした土地の利用を検討する価値はあるとwiredはいい、「農家は生産者なので、土地と資材があれば作付けするはずです」という。
培養肉が救世主になるのか
一方、代替肉のひとつ培養肉の価格低減が目覚ましいという。
培養肉の現在、70社以上が参入し低価格化が進行 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
Forbesによれば、ハンバーガー1個あたりで33万ドルしていた2013年にから大幅に価格が低下し、今では約9.8ドルまで購入できるようになっているという。
培養肉は、生きた動物から採取した細胞を使用し、実験室環境のなかで、脂肪と筋肉の組織へと発達していくという。実験室で育てることで、畜産に必要な土地や水、その他の資源の使用量も削減できる。
適切な方法で培養すれば、二酸化炭素排出量も削減できる。さらに、水質汚染、生物多様性の喪失、森林破壊を減らすことで、環境保全効果が期待できるという。
大量生産できるようになれば、畜産に用いられる穀物の量を少なくさせることが可能になりそうだ。ただいつになったら普及するようになるのだろうか。
今の目に迫っている食糧危機に対する特効薬はないのかもしれない。しかし、手をこまねていていれば、事態は深刻化しかねない。今できることからやっていくしかないのだろう。
「参考文書」
ウクライナ侵攻 中東地域などでは食糧危機招きかねない事態 | NHK | ウクライナ情勢