Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

ペットボトルや服にもケミカルリサイクル、その拡大のために必要なこととは

 

 ペットボトルの出荷は年間217億本にも及ぶという。その内、ボトル to ボトルのリサイクル率はまだ2割ほどにとどまるそうだ。その多くはトレイや繊維など人が直接口を付けないものに生まれ変わるとTBSは報じ、アサヒ飲料のケミカルリサイクルを紹介する。

年間217億本出荷のペットボトル 繰り返し再利用できる「ケミカルリサイクル」に注目 | TBS NEWS DIG

 ケミカルリサイクル、粉砕したペットボトルを化学分解し再利用する。分子レベルまで細かくすることで不純物が除去できるため、純度の高さが求められるペットボトルの素材に適しているという。

 

 

ペットボトルのケミカルリサイクル

 アサヒ飲料は、このケミカルリサイクルにより再生されたペットボトルを使った商品をこの春から販売すう。商業ベースでの利用は日本で初めてという。

(写真:アサヒ飲料

持続可能な容器包装の実現に向けた目標「容器包装2030」の達成を目指し大型ペットボトルにケミカルリサイクルによる再生PET樹脂を使用2022年4月より生産開始予定|会社情報|アサヒ飲料

ケミカルリサイクルの手法は、日本環境設計が特許を保有する独自技術「BRING Technology™」を用い、PET製造の中間体となるBHET(ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート)を選択的に抽出する方法により高純度なモノマーの回収を実現し、ボトルグレードの高い品質基準を満たすことができます。

化学的なプロセスで不純物を取り除くことが可能なため、使い終わったPETボトルを何度も何度も資源として再生することができ、石油の使用量削減、温室効果ガスの排出抑制に貢献することができます。(出所:アサヒ飲料

 この取り組みで、アサヒ飲料では大型ペットボトルの年間生産量の約40%に再生PET樹脂を使用することになり、ボトルに使用するCO2排出量は従来比で約47%削減されるという。

 

 

洋服のリサイクル

 The NorthFaceなどのブランドを有するゴールドウインは、2009年から服のリサイクル活動「GREEN CYCLE(グリーンサイクル)」を始めた。昨年2021年度の衣服の回収量は9,429kgだったと公表している。

ゴールドウインの服のリサイクル活動「GREEN CYCLE」 2021年度の実績について|株式会社ゴールドウインのプレスリリース

「GREEN CYCLE」は、メーカー・ブランド、質・状態にかかわらず、服を回収し、新たな製品の原料にリサイクルするという。

(写真:ゴールドウイン

 回収した衣服のうち、ポリエステルやナイロン製のものは、高純度の原料に戻すケミカルリサイクルを行い、ダウンウエアは新たなダウン製品の原料にするという。

 ゴールドウインでも「ケミカルリサイクル」が採用され、アサヒ飲料と同じ「日本環境設計」の技術が活用されている。ポリエステル繊維は再生ポリエステル繊維として再生できる。

 

 

サーキュラー・エコノミーをさらに浸透させていくために

 徐々にサーキュラー・エコノミーが浸透してきたのだろうか。

 こうした企業の努力があって循環型社会に近づいていくが、まだまだ途上で、定着したとは言い難いのだろう。

 広報ばかりでなく、もっと積極的にPRしてもいいのではなかろうか。

 かつてIBMは「eビジネス」という造語をつくり、自らのネットワーク型コンピューティングビジネスをPRした。インターネットの可能性と「インターネットはビジネスに関わるものだ」とPR、啓蒙した。

 その時IBMのCEOだったルイス・ガースナーは、これが「ドットコム企業の派手な興亡に知らず知らずのうちに加担していたかもしれない」と回顧している。その後2000年代初頭にITバブルは崩壊するが、しかし、そのバブルの中から今でも続く多くの有能なIT企業が誕生した。

 IBMはこのPR活動に際し、従来のマーケティング手段を見直したといわれる。企業幹部がこの「eビジネス」という言葉を積極的に使い、社員が理解し、広めるよう繰り返し呼び掛けたという。そして、この言葉のためのマーケティングと宣伝のためにIBMは50億ドルの費用を費やしたという。

 そして、みなが、「インターネットはある種の魔法の杖だ」と思うようになったという。

 サーキュラー・エコノミーにも、大胆なPRが必要なのかもしれない。ただSDGsマーケティングのようなまやかしではあってはならないのだろう。

 

 

 ルイス・ガースナーはこうも回顧する。

(インターネット)ブームに惑わされず、まじめで難しい仕事をする意欲のある者には千載一遇の機会になったことだ。物事を迅速にできるだけでなく、これまで不可能だったこともできるようになる。(中略)

 投資家、そして顧客にとっての教訓は、近道はないということだ。多くの人にとって、eビジネスの「e」は、イージーの「e」になったのではないだろうか。イージーな金儲け、イージーな成功、イージーな生活。だが骨組みまでそぎ落とせば、eビジネスも結局のところビジネスなのだ。そして、本物のビジネスは真剣なものだ。(引用:「巨象も踊る」ルイス・ガースナー P234)

 SDGsマーケティングやDX、デジタルマーケティングを批判する気はないが、ルイス・ガースナーが危惧した「イージー」に陥っていないだろうか。

 インターネットが世界を変えたように、SDGsやサーキュラー・エコノミーにも世界を変えるポテンシャル、可能性はあるのだろう。