Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

高騰するばかりの食料品、高く売れない環境に優しい農業、それでも3倍高く売れる餅がある

 

 食品の値上げのニュースが絶えない。また食用油と小麦粉が7月から値上げになるそうだ。こうした値上げの背景に愚行を続ける国の影響があるのなら切なくなる。

「スシロー」も遂に値上げになるそうだ。主力の「まぐろ」や「サーモン」など1皿110円としている商品を10円上げて、120円にするという。

スシロー、10月から値上げで「1皿100円」終了…まぐろ120円・アワビ360円に : 経済 : ニュース : 読売新聞オンライン

 1984年の創業以来、維持してきた税抜き1皿100円での提供が終了することになるそうだ。読売新聞によれば、水産資源の価格高騰や物流費の上昇などが要因となっているという。燃料費の高騰の影響なのだろうか。スシローの値上げにも愚行の影響が遠からずあるのだろうか。

 

 

 一方、脱炭素に多くの企業が挑戦するようになっているようだ。これによって化石燃料依存が減り、コスト負担の低減が進めばいいのだろう。農業においても例外ではないのだろう。農水省は、「みどりの食料システム戦略」で、2050年でのカーボンニュートラルを目標に掲げ、様々な施策を推進している。ただ現実は必ずしも順調ではないようだ。

 温室効果ガスの排出削減に配慮した農産物について、流通加工業者の6割が優先的に取り扱う意向であるのに対し、消費者は「値段に関係なく買いたい」が1割に満たず、価格が高騰することへの抵抗感が強いということが農水省の調査で分かったという。こうしたご時勢にあれば、誰もそう思うのではないだろうか。

環境配慮の農産物、流通業者6割が優先 消費者と隔たり…価値浸透カギ 農水省調査 / 日本農業新聞

 日本農業新聞によれば、農水省は、販売時にガス削減量を示すなど消費者に付加価値を伝える取り組みで、流通拡大につなげたい考えという。そのために、燃費の良い農機を利用したり、水田の中干し期間の延長などを推進するようだ。

 脱炭素に取り組むので、値上げさせてくれといってもなかなか理解を得るのが難しいということのだろう。温室効果ガス排出の削減効果で説得するよりも、別な理由が必要ということではなかろうか。

 

 

 創業60年余りの老舗餅メーカー、宮城県黒川郡の笠原餅店が1袋400円で販売していた餅を3倍の価格をつけ、新たなブランド「THE OMOCHI」として発売したら、あっという間にヒット商品になったという。

価格3倍にしたのに爆売れの切り餅 リブランディング成功の秘密:日経クロストレンド

「THE OMOCHI」の人気を不動のものにしたのが、食品分析する「成分分析ブランディング」による賜物と日経クロストレンドはいう。

「おいしさ」「くちどけの良さ」「香り高さ」といった食品の品質を感覚値ではなく、成分分析により数値化する。そうすることで、品質の高さをデータでエビデンスとして示し、マーケティング施策やブランド価値の向上に役立てられる。

 笠原餅店が行っている釜戸と薪火という伝統的な製法で作られる餅は、市販品とは比べものにならないほど、やわらかく滑らかな舌触りになるという。品質の高さをデータで可視化することで、競合製品との差異化をさらに明確にできるはずだという狙いがあった。(出所:日経クロストレンド)

 

 

 脱炭素に取り組めば確かに温室効果ガスを低減させることはできるのだろう。直接的な効果ばかりでなく、間接的な効果があるのではなろうか。

 たとえば、メタンの排出が少なった水田で作られるお米は、そうでないお米と違いはないのだろうか。そうした発見があれば、それを使って、「THE OMOCHI」のようにブランディングして、高い値で売っても売れるのではなかろうか。

 もっとマーケティングを活用すべき産業で利用されていないのが不思議である。卸やJA、農家を巻き込んでもっと積極的に取り組んでみたらどうだろうか。そうした動機がわかない限り、マーケティング業界も農業に目を向けることがないのかもしれない。需要がなければ、アクションしないのが常ではなかろうか。アクションしなければ、そのポテンシャルに気づくこともないのだろう。

 こうした活動で農業の活性化の一助になり、それによって脱炭素が進み、効率化も進めることができれば、生産性が向上し、リーズナブルな価格になっていくこともあるのではなかろうか。いつまでも同じ視点では何も変化は起こらない。脱炭素には脱炭素なりのプラスαの努力が必要なのではなかろうか。