Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

新しい資本主義で人々の行動は変容するのだろうか

 

 世界3位の経済規模を誇りながら、経済成長は鈍化したままで、実質賃金は下がり続けていれば、国の活力はますます失われていく。将来不安よりも希望が勝ればいいのだろうが、長く低迷したままではきっかけさえ掴めないでいる。

 政府の「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」に期待したいが、どこまで成果を出せるのだろうか。政府が旗を振っても、それが共感を生み、企業や人々が行動を変えていかなければ、何も変化は起こらない。行動するのは政府や国会ではない。

 

 

 政府は6月に「新しい資本主義」の実行計画を閣議決定するという。日本経済新聞によれば、人への投資に重点を置き、働き手が成長分野に円滑に移れる仕組みを整えるという。非正規も含め100万人が教育訓練や転職支援を受けられるようにするそうだ。

成長分野に人材シフト100万人 「新しい資本主義」原案: 日本経済新聞

 その原案では、気候変動や少子高齢化、格差など社会課題への投資を成長のエンジンとして、持続可能な経済を追求する姿勢を示しているという。

人への投資は成長分野への労働移動を打ち出した。

企業内だけではなく行政や地域が連携して働き手のスキルを高める仕組みを検討する。特にIT(情報技術)人材の強化を重視する。転職やキャリアアップについて社外で相談できる体制を整えるなど、100万人に支援を提供する。(出所:日本経済新聞

 IT人材を強化し、成長分野への労働移動というが、どれだけの成長分野があって、そこでIT人材のニーズはどの程度あるのだろうか。IT人材を強化すること自体は悪くはないのかもしれないが、それによって成長分野が活気づくのだろうか。

「国民の生活水準を向上させるためには、成長性の高い中小企業を継続的に創出していくことが不可欠」と東洋経済オンライン指摘する。

 米国では、1980年代から1990年代にかけて、新興企業の参入と効率の悪い老舗企業の閉鎖によって、就業者当たりの製造業生産高の成長率60%という驚くべき結果がもたらされたという。また、逆に新興企業の起業数が鈍化すると、就業者1人当たりの生産高は低下するという事実があり、それが実際に起こった1980年では、平均家計所得は1600ドル低下したという。

日本経済が世界から遅れる原因作った「真犯人」 | 政策 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 日本では高成長している中小企業の数があまりにも少ないと指摘する。それが、実質世帯所得(価格調整済み)が1995年以降低迷を続けている理由の1つと記事はいう。

日本には数多くの中小企業があるのは確かだが、創立後最初の10年間の成長はOECD諸国の中で最も低調で、老舗中小企業の数がOECD諸国の中で最も多い。

おそらく最大のハードルは、意欲的な若い企業が事業拡大に必要な融資を受けられないことだろう。(出所:東洋経済オンライン)

 

 

 政府が検討している「新しい資本主義」の原案には、スタートアップ支援や人への投資のほか、科学技術・イノベーション、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資が強調されているそうだ。

 しかし、岸田首相がスタートアップを語るとき、VC出資企業に魅了されすぎているきらいがあるという。VC投資は魅力的だが、VCから投資を受けた企業だけが注目されるべきではないと東洋経済オンラインはいう。

岸田首相は、技術に関しても華やかさを追い求めている可能性がある。

首相は5つの分野における「国家戦略」を提案したが、その1つ目として挙げられたのが人工知能(AI)だ。これは、超伝導技術やナノテクノロジーを成長の特効薬と考えた過去の戦略と似ている。日本企業は既存の技術すらうまく使いこなせていないのだから、この優先順位は見当違いのように思える。(出所:東洋経済オンライン)

 

 

 年老いた企業は、新興企業はよりも新技術を活用して経済全体の成長を促進する手段を開発する可能性は低いのかもしれない。

 VC ベンチャーキャピタルが成長分野について常に正しい判断をするとは限らないのだろう。VCが起業の登竜門になってしまえば、同じようなスタートアップばかりが増えることにならないだろうか。それでは職種も多様化しない。起業もまた多種多様なはずである。何がこの先の成長産業になるかよりも、多くの分野に挑戦すべきではないだろうか。

 政府に求められているのは、これだと決め打ちをするのではなく、多くの人々が起業に挑戦しやすい環境を作りと、そのための仕組みを整備していくことではないだろうか。

 

「参考文書」

技術系スタートアップ支援のプロが選ぶ、これから伸びる技術系スタートアップ6社|TEP Deep Tech Journal|note