Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

円安に資源高、国内回帰にメリットはあるのだろうか

 

 このご時勢にあって、相も変わらず企業業績は好調といいます。財務省が発表した2022年1~3月期の法人企業統計で、全産業の経常利益が前年同期比13.7%増だったといいます。

経常利益が過去最高、1~3月13.7%増 法人企業統計: 日本経済新聞

 日本経済新聞によると、1~3月期としては過去最高で、プラスは5期連続となるそうです。巣ごもり需要の増加や製品価格の上昇が理由といいます。多少理不尽さを感じずにはいられません。実質賃金があがらないままで、利益ばかりが増えるの如何なものでしょうか。

 

 

 製造業がなお好調を維持しているといいます。半導体産業もそのひとつのようです。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスが今後も需要が見込めるパワー半導体の生産能力を増強するため、甲府工場を再稼働させるといいます。900億円を投資し、生産設備を刷新、最大で300人を新規雇用するといいます。

「ルネサスサプライズだ」 地元は甲府工場再稼働を歓迎(1/2ページ) - 産経ニュース

 産経新聞によれば、地元では「ルネサスサプライズ」と歓迎しているといいます。

 甲府工場の再稼働だけでも地元には大きな効果がある上、下請けとして製造装置の関連機器や資材を手掛ける電機・機械メーカーも多く、山梨県全体の産業への波及効果は大きいといいます。

商工会議所の進藤会頭は「中小企業を含め、関連する業界全てで高い技術が求められる。これに対応していくことで県内産業の技術力と生産性の向上につながっていく」と効果を強調する。(出所:産経新聞

 企業利益がこうした投資となり、それによって地方経済の好循環に寄与できるようになっていくのが最善ではないでしょうか。

(写真:ルネサスエレクトロニクス

 一方、青森県むつ市では、ストッキング大手のアツギ東北が5月末をもって生産を終了させ、下北の雇用の受け皿として大きく貢献した工場が56年の歴史に幕を下ろしたといいます。新型コロナの影響などで主力商品であるストッキングの需要が低迷したことが要因だったといいます。

アツギむつ事業所が生産終了 56年の歴史に幕|経済・産業・雇用|青森ニュース|Web東奥

 青森県むつ市、思入れのある地です。パソコンが急速に普及し始めた頃、むつ市の協力工場で周辺機器の部品生産していたことを思い出します。東京周辺での生産を地方へとシフトさせていました。当時は最果ての地との印象もありました。しかし、その後の円高の進行で海外に生産移管せざるを得なくなりました。

 むつのその工場は閉鎖となり、従業員の一部は協力工場の海外拠点へと転勤となり、また地元に残った人もいると聞きました。当時は海外シフトに必死で、国内のことを省みることもありませんでした。国内ももっと競争力をつけなければならないと生意気なことを言っていました。しかし、今にして思えば、あの時もう少し考えれば、むつの工場を活かした方策もあったのではないかと思えたりもします。

 

 

 資源高、円安、経済安全保障、そんなワードで国内回帰が語られ始めているようです。ルネサス甲府工場再稼働もそうした動きの現れでしょうか。

 しかし、さらに資源高が続けば、好調だった企業業績を悪化させかねません。そうしたときに、折角の国内回帰の機運に水が差されることもあるのかもしれません。そうならないよう、でき得るだけの手を打っていかなければならないのでしょう。

【核心】日本の製造業がグローバルイニシアチブをとる方法

ソーシングは本質的かつ経営戦略に直結する業務で、どこの会社からどの程度買うのか、どの会社を育てて競争環境を作るのか、どこは専売権等含めて押さえにいくのか等、企業のリスクヘッジに直結する業務と言えます。(出所:NEWSPICKS)

 ソーシング、開発購買の基本的なところでしょうか。これにDX要素を加えてもよさそうです。

 

 

 国内回帰は始まりであり、過去と同じ轍を踏まぬような対応を今から進めるべきなのでしょう。これまだ怠ってきたサプライチェーンを常に先鋭化させる必要があるのでしょう。今では、こうしたことにおける成功事例があるようです。ベストプラクティスとして検討してみるのもいいのかもしれません。

長らく円高リスクへの対応を迫られていた日本の製造業にとって、「今回の円安リスクは初めてだ」との見解を示した(出所:ブルームバーグ

 

「参考文書」

鉄鋼大手も円安に悲鳴、原料コスト増がメリット上回る-利益押し下げ - Bloomberg

繊維メーカー 植物工場 進出へ アツギ撤退のむつ市 (青森県)(青森放送) - Yahoo!ニュース