Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

サスティナビリティを、KPIを使って進めることはできないのだろうか

 

 温室効果ガス排出量の実質ゼロに貢献するカーボンニュートラル技術として、電気化学的な手法で化学品をつくる技術開発競争が熱を帯びてきているそうです。化学工業日報によると、大手化学メーカの旭化成が、二酸化炭素と水から基礎化学原料のエチレンを直接合成する技術開発に乗り出したそうです。

旭化成、CO2からエチレン製造、30年に実証へ - 化学工業日報

 記事によれば、再生可能エネルギー由来の電力を使う「グリーンエチレン」が高効率に製造できる技術の確立を目指し、2030年までに大型実証を始めるといいます。

 少々気の長い話のように感じますが、社会的なインパクトの大きいことを実現するためにはそれだけ長い時間を要するということでしょうか。

 

 

「企業が将来価値を生み出すためには、イノベーションが必須」、当たり前とも思えるようなことを日経ビジネスがいいます。さらに「イノベーションへの投資は、将来、財務価値を生むもの、すなわち「未財務」価値でなければならないはず」と指摘します。

「KPIを追う会社」「中期計画を作る会社」は危ない:日経ビジネス電子版

サステナビリティ」への投資も同様ではないかといいます。非財務として扱われますが、それには当然コストが発生します。財務的にはコストとして把握される「サステナビリティ投資」を今のままでよいのかと記事は疑問を投げかけます。

 非財務的だけれど社会に貢献するのであれば、イノベーションさせることに、本気で取り組む必要があるといいます。サステナビリティへの投資は、時代の要請となり、きれいごとで終わらせれば、いわゆるESGウォッシュになってしまうといいます。

「儲けたキャッシュを株主還元にあてがうことばかり考えている経営者は、株主の短期志向に迎合して今の株価をつりあげることしか、眼中にないのではないか」と、日経ビジネスはいいます。そして、そのような経営者や資本家には、イノベーションを語る資格はないともいいます。

 記事は、「現在価値」という刹那的なKPI(重要業績評価指標)に縛られ、短期的な時間軸による縮小均衡に陥っているのが現在の日本企業と指摘します。それはシュンペーターのいう「動きのない経済」から見たものの見方であり、「成熟という美名のもとの衰退」でしかないといいます。

 

 

 一理にあるのではないでしょうか。

 急激に進むグローバリゼーションによる競争環境の変化もあって、真っ当にイノベーションを標榜して努力を続けても成果を得ることがなかった。そんな苦境にあったときに、突如、新たな経済政策「異次元緩和」で、株価が上がり、円安基調に変わった。棚から牡丹餅ではないのでしょうけれども、思いがけない幸運だったのかもしれません。

 そうなればイノベーションを標榜し気にはするにしても、その優先順位は低下し、「現在価値」に重きが移行しても不思議なことではないのでしょう。

 ただ政権が変わると、国は「カーボンニュートラル宣言」し、ESG投資への関心を高めました。この変化は、企業に何かをしなければならないという危機感を煽ることにはなったのかもしれません。

 旭化成のように、こうしたことに気づく企業も少しづつ増えているような気もします。

 ただ技術開発を進めるだけでイノベーションが萌芽しないように、「サスティナビリティ」もまた活動するだけはそれほど価値あることにはなり得ないのではないでしょう。それが認知されてイノベーションが起きるように、サスティナビリティも市場に正しく訴え、理解されることが求められているのでしょう。それができれば、サスティナビリティがイノベーションとなっていくのかもしれません。