「GX(グリーントランスフォーメーション)」、化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体を変革していくことをいいます。
政府、年内にGX工程表 脱炭素へ官民150兆円―岸田首相「原発再稼働で決断」:時事ドットコム
政府がGX実行会議を開催しました。JIJI.comによれば、首相はこの会議で「再エネや蓄電池、省エネの導入の支援策、原発の再稼働とその先の展開策など政治決断が求められる項目を明確に示してもらいたい」と述べ、脱炭素社会への課題に加え、国内の電力需給逼迫や資源価格の高騰が起きていることを念頭に、足元の電力やガスの安定供給へ対策を指示したといいます。
これが今の政権の運営スタイルなのでしょうか。
脱炭素を進めなければならないとしていますが、前のめりになって突き進もうとした前の政権との違いを感じたりもします。取り組み姿勢が二歩三歩後退したように感じますが、脱炭素を進めるにあたりより現実的なステージとなり、慎重になっているのでしょうか。
内閣官房が、第1回GX実行会議の会議資料を公表しています。
会議に参加した有識者がそれぞれに意見表明したようです。また、GX推進担当相を萩生田経産相が兼務するということからして経産省がこの会議をリードしていくことになるのでしょうか。
会議資料によれば、「世界的な有事の下で、2030年度46%削減目標や2050年カーボンニュートラルを目指すためにも、安定供給の再構築に向け、多様性(エネルギー源+調達先)とレジリエンス(抵抗力+回復力)を高めることに全力を挙げる必要。これなくしてGXに向けた国民的理解は得られない」と経済産業省はいいます。また、「そのため、短期、中長期の視点に立って、安定供給を再構築するためどのような方策が必要か」と述べています。
経済産業省がどこまで有識者の意見を取り入れて、どんな内容の結論を導き出していくのでしょうか。メインシナリオが気になりますし、それに加えて、原発の取り扱いやGX経済移行債(仮称)の財源と国民負担なども気になります。
GXの推進には、今後10年間で150兆円超の投資が必要といわれます。ただでさえ巨額な借金を作った国に、安易に巨額投資の財源の検討を一任してしまっていいのかと感じます。
2050年のカーボンニュートラルが国際公約になっています。また、今の気候危機を鑑みれば、その達成は避け得ないことです。そして、その達成責任は国に帰属するのでしょう。しかし、その達成は企業と国民の協力なくして実現することはありえません。
エネルギーは生活に直結します。また、それは企業活動によってもたらされています。基本は企業の自由競争に委ねた上で、カーボンニュートラルと安定供給を実現するしかないのでしょう。
しかし、今日のようなエネルギー危機といわれる状況になれば、そこになんらかの政府による規制が必要であることもまた事実なのでしょう。ただ政府にはできることに限りもある以上、深く干渉し過ぎれば弊害が大きくなるのではないでしょうか。
第1回GX実現会議に参加した竹内氏は、「政府介入が必要となる領域は3つ」と指摘しています。
(1)エネルギー安全保障に必要なインフラ投資
(2)脱炭素社会への移行期に必要な移行資産への投資
(3)GHG排出量を抑制するインセンティブ強化
実質東京電力を国営化した国に、できることがあるということなのかもしれません。時に自ら汗をかくことを忘れてはならないのでしょう。
「参考文書」
令和4年7月27日 GX実行会議 | 総理の一日 | 首相官邸ホームページ