「国の借金」が6月末時点で1255兆1932億円となり、過去最多を更新したそうです。国民1人あたりに換算すると、初めて1000万円を超えたといいます。債務の膨張に歯止めがかからず、金利上昇に弱い財政構造になっているとの指摘もあります。
国の借金、6月末で1255兆円 1人あたり初の1千万円超: 日本経済新聞
日本経済新聞によれば、低金利で利払いは抑えられているものの、歳出の増加が税収の伸びを上回り、債務が膨らむ構図になっているといいます。成長力を底上げして税収増につなげる「賢い支出」を徹底する必要があるといいます。
同じ論理の話が繰り返されてはいないでしょうか。手を変え品を変え、色々試しはしてみたが、一向に改善せずにむしろ悪化していそうです。
企業でいえば、リストラ、構造改革が求められているのでしょう。一般的には出血を止めることが先決で、債務を減らす。その上で、事業を整理・再編していくのが常套手段ではないのでしょうか。
そう思えば、これまでとは真逆に「脱成長」に取り組むほうがよいのかもしれません。大きな成長がなくても、やっていける社会構造をまず構築することの方が、後々の社会にとってメリットのあることになりそうな気がします。
仏教の開祖「お釈迦様」は、「慈悲喜捨」の4つの心を育むよう説いたといいます。
曖昧な「やさしさ」では、経営者は決して成功しない:日経ビジネス電子版
⽣命は平等ですが、それ以外の物事は均等ではないといいます。
⼀⽣遊んで暮らせる資産がある⼈もいれば、今⽇⾷べるものがなく、飢え死にしてしまう⼈もいます。⽣まれ育った国、環境、親、境遇、など努⼒だけでは埋まらない差も存在します。
そうした世界において、⾃分さえよければ他は関係ないという⽣き⽅は、エゴです。「やさしくない」のです。(出所:日経ビジネス)
日経ビジネスによれば、仏教では、「生命は単独では生きられず、相互扶助の関係を生きている」と教えるといいます。この関係を正しく観察できれば、友を慈しみ、友と楽しもうとすることが、他の生命に対して取るべき態度と分かるはずといいます。
企業におけるステークホルダーの関係おいても同様といいます。立場の違いはあっても、人としては平等と考えるべきといいます。こうした態度が「慈」といいます。また「悲」は、人に対して友情だけを求めるのではなく、悲しいとき、つらいとき、苦しいときに、助けてほしい、慰めてほしいと理解を期待することといいます。
自分以外の他者が感じる「悲」を理解する能力ということなのでしょうか。
いつのまにやら、ビジネスに深くかかることで、こうした慈悲の精神を忘れてしまい、その代わりに「エゴ」を育んできてしまったのかもしれません。
パイの限られた日本では、もやは「安くて良いもの」を提供するビジネスモデルでは成り立たない。人口減少の日本ではこのモデルが生み出すのは、1人の薄利多売勝者と多くの敗者だ。良いものをそれなりの値段で売るブランドビジネスを本格的に考えるべきである。(出所:Forbes)
こうした思考は、これまで合理的なものとされてきました。しかし、それにひびが入ってきているのかもしれません。
誰一人区別することなく、その一人ひとりに真摯に向き合う姿勢こそが問われていないでしょうか。もともとビジネスとは、そういうものであったはずですが、合理性を追求するばかりに、徐々にその姿が変化していったのかもしれません。
これまでと同じように単に合理性を追求しているのであれば、「SDGs」の個々のゴールにアプローチは出来ても、その目指す世界が達成されることはないのかもしません。
「慈悲」の心をとり戻したとき、もしかしてESGに近づき、SDGsもまたゴールに近づいていくのではないでしょうか。まずは視点を変えることから始めるべきなのでしょう。
「参考文書」
顧客起点が目指すべきは「カスタマーイン/マーケットアウト」:日経ビジネス電子版