販売先の店舗で商品の梱包に使われている段ボールを、繰り返し利用可能な折りたたみ式コンテナに変更する実証実験を、花王がコストコやホームセンターのカインズで行っているといいます。
日用品メーカー続々と「脱炭素」に挑む切実な理由 | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
これまで商品を納入する際にはダンボールが利用されてきましたが、それによる店舗での廃棄作業やダンボールリサイクルでのCO2排出量といった課題があったといいます。
こうした課題解決のために、循環型の折りたたみ式コンテナを考案したそうです。この新しいコンテナは、「納品」「陳列」「販売」などさまざまな場面で利用できるといいます。
「段ボールをつぶすような作業がなくなって楽になり、作業時間も短くなった」
東洋経済オンラインによれば、実験店の1つ「コストコ川崎倉庫店」の店員からは、こうしたポジティブな反応があったといいます。
梱包資材と使用されるダンボールはリサイクルが可能で、現在は大部分がリサイクルされているといいます。しかし、ダンボールを処分しようと思えば、やはり手間と感じます。ごみという意識があるからでしょうか。
循環型の折りたたみコンテナも商品が売り切れて、空になれば折りたたまなければなりませんが、それが再利用するものとの意識になれば、やらなければならないことで、手間とは感じないのかもしれません。
記事は「脱炭素」を切り口にしていますが、こうしたことはダンボールの浪費(ムダ)を抑制し、理論上コストダウンになるはずです。
以前、PCメーカ デル向けの梱包資材をマネジメントする会社を訪問することがありました。その会社はデルのマレーシアペナン工場で、部品納入時に使用される通い箱(花王で使用しているものと同じような箱)のメンテナンスと輸送を担っていました。その規模感に驚き、ここまで費用をかけてもコスト改善効果があるのだろうと憶測し、自社工場に納品時に使用されるダンボールの見直しにつながったことを思い出します。
効率化や生産性向上などの「改善」と、脱炭素の取り組みは親和性が高いのかもしれません。
製造現場のエネルギーの使用効率を改善し、使用量を低減できれば工場のランニングコストを圧縮できます。それを省エネと呼ぶこともできます。
こうしたことに本気で取り組み徹底し、その効果を積み上げていけば、脱炭素でコストダウンも可能になるのではないでしょうか。
「脱炭素」という視点にとどめてはならないのでしょう。
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「脱炭素に関する数値が本当に消費者の購買動機につながるのか」、疑問の声もあると東洋経済オンラインは指摘します。
花王は「脱炭素の活動は、消費者の商品選択の理由になっていない」と言い、P&Gジャパンも「少し価格が高くてもサステイナブルな製品を選択する消費者は、ヨーロッパと比べて少ない傾向にある」と指摘しているといいます。
顧客に脱炭素の取り組みを理解いただく活動も重要なのでしょうが、脱炭素商品をどれだけ通常製品のコストに近づけていく活動もまた重要な気がします。
それを願い、それに向けてひたむきに努力すれば、おのずと目標に近づき、達成できるのではないでしょうか。それを中途半端なままで終わらせるから、生産性のように向上しないまま終わってしまうのではないでしょうか。
「参考文書」
花王 | 花王とカインズ、循環型梱包材として折りたたみコンテナをテスト導入