微生物などのはたらきによる発酵で、食品や酒、薬などが作られてきました。先人たちの知恵に敬服せざるを得ません。微生物のもつ不思議な力を発見し、その中から優れた微生物を選び出し、育てては選別するという品種改良を繰り返してきたといいます。こうした努力によって、高品質で効率の良いものを作り出してきたといいます。
こうした研究は脈々と引き継がれ、今ではその応用範囲がさらに広がっているようです。
ペットボトルを分解する微生物
プラごみの主役といわれるペットボトルが微生物によって分解することが確認されたといいます。
PETモノマーや原料を微生物分解、廃プラ除去に光明 | 日経クロステック(xTECH)
日経クロステックによると、産業技術総合研究所(産総研)の黒田恭平氏らの研究グループが、ペットボトルの素材であるPETポリエチレンテレフタレートのモノマーや原料が微生物によって分解することの確認したといいます。
さらに、この浄化機構を、微生物の培養とゲノム情報に基づき新規提案したそうです。廃プラスチック類除去技術の開発や、汚染された自然環境の浄化につながる研究成果になるといいます。
環境配慮型のナイロンの実現に向けて
耐久性や強度、剛性に優れ、繊維やプラスチックスとしてさまざまな用途で長年使用されてきたるナイロン。その中の「ナイロン66」を微生物の力を借り、環境配慮型にする研究を東レが進められています。
世界初 非可食バイオマスを原料とする糖からナイロン原料を創出 -環境配慮型ナイロン66の実用化に向けたバイオアジピン酸の合成に成功- | ニュース一覧 | TORAY
アジピン酸、ナイロン66の原料で、これまでは化学合成法で製造され、温室効果ガスを排出していたそうです。東レが、糖からアジピン酸中間体を生成する微生物を発見し、バイオアジピン酸を開発したといいます。
2030年近傍までの実用化を目指し、スケールアップの検討を開始し、今後ナイロン66の重合試作、生産技術開発、市場調査など進めるといいます。
発見した微生物に、ゲノム編集や合成に最適な微生物発酵経路の設計といった情報生命科学技術を活用し、微生物内の代謝経路を効率的なものに作り変えることにも成功したそうです。これに並行し、精製の過程における中間体の濃縮に省エネ型装置を開発、導入することで、より少ないエネルギーでの濃縮が可能となったといいます。
また、作物残渣など食用にできない植物資源から糖を製造する実証検討を行っているともいいます。
このプロセスから得られる糖をアジピン酸の原料とし使用することで、非可食バイオマスから化学品を製造するトータルサプライチェーンを構築、これにより持続可能な資源循環型社会の実現に貢献できるともいいます。
バイオコンビナート構想
石油化学コンビナート、そこから大量の燃料や多種多様な化学製品が生み出されてきました。そこで使われる原料を石油をバイオマスで代替しようとする「バイオコンビナート」構想が提唱されているといいます。
CO2からプラスチック 石油化学を一変「バイオコンビナート」 | 毎日新聞
神戸大の近藤昭彦教授がこの構想を実現化しようと研究を重ねているといいます。
島津製作所によると、「バイオプロダクションを産業として成立させるためには、求める機能をもつ微生物をいかに早く作り出すかにかかっている」と、近藤教授が指摘しているといいます。
すでに多くの研究成果から、どんな遺伝子によってどんなタンパク質が、あるいはどんな代謝産物が作られているかのデータベースは整いつつあるそうです。
こうした研究成果が具現化、実用化となれば、いよいよ石油などの天然資源の使用を最小化させ、微生物が資源を生み出すことになっていくのでしょうか。
待ち遠しい未来です。
「参考文書」
バイオマス革命の足音|バックナンバー Vol.30|島津製作所 広報誌 ぶーめらん|ぶーめらん お客様とのコミュニケション誌|ブーメラン