米国で、サステナブル投資への風当たりが一部で強まっているといいます。ルイジアナ州では、資産運用会社ブラックロックのESG投資の見解が、エネルギー産業に打撃をもたらしているとして、ブラックロックのファンドから7億9400万ドル(約1150億円)を引き揚げる方針にしているといいます。
ブラックロックのESG投資への反発拡大-ルイジアナ州資金引き揚げ - Bloomberg
同州のシュローダー財務官はブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)宛ての5日付書簡で、「貴社の露骨な反化石燃料政策は州経済を破壊するだろう」と主張し、「簡潔に言えば、われわれは自らの経済の壊滅に加担できない」と論じた。(出所:ブルームバーグ)
テキサス州においても、一部議員が石油・天然ガス企業に害をもたらすと見なすブラックロックなどの企業からの資金引き揚げを目指しているそうです。
サステナブル投資を推進するブラックロックに対する共和党知事州の反発が続いていると記事は指摘しています。
一方、環境保護派からは、ブラックロックの気候変動対策の取り組みが足りないと批判されているそうです。
良かれと思われる行為も、順風満帆でことが進むことはないということなのかもしれません。
消費を減らしていけるはずだった化石燃料が、ロシアの影響で急激な供給減となり、足下で供給不足という問題を生じさせました。この解決を求めようとすれば、ESG投資と対立するという矛盾が生じます。ブラックロックはこの先どう対処していくことになるのでしょうか。
同様なことはその他にもあるようで、メディア報道もそのひとつのようです。
先進国は肉食を減らし、植物性の食事にシフトする必要があるというのが科学者たちの一致した意見だ。
だが新聞は、この問題をまだ結論の出ていないものとして取り上げている。(出所:Forbes)
バランスを欠いた両論併記の報道が「食生活の変化」の緊急性を削ぐ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
こうした食生活の変化に関する報道は、以前に批判された気候変動に関する報道とも同じものと記事は指摘します。
記者も人間、受け入れ難い科学的事実に戸惑い、それがそのまま報道に現れるということなのでしょうか。
かつての気候変動についてのメディア報道は、人間が原因の気候変動が起きているという明確な科学的証拠があるにもかかわらず、『両論併記』してきたといい、メディアに登場する気候変動否定論者たちは、気候変動に対処する動きに反対しようとしている産業と、しばしば経済的なつながりを持っていたといいます。
しかし、最近になって、メディアが気候変動を結論が出ていない議論としてとらえることをやめ、『気候変動否定論者』の引用が減り、その立場が否定的にとらえられるようになっているといいます。この劇的な変化は、気候変動に関する世論の変化と同時に起きたものであり、メディアの報道が支配的な世論に対する影響を与え、また逆に影響を受けた例と考えられるとForbesは指摘しています。
現在の食生活のパターンは企業の決定や政府の政策に大きく影響されているにもかかわらず、食生活のシフトはしばしば非常に個人的なものと見なされている。こうした個人の末端における取り組みは、現在のニュース報道によって強化されており、肉の消費を減らすための行動の主な負担は個人に課されている。食肉および酪農消費の減少にともなう経済的変化は否定的に捉えられており、たとえば食肉および酪農生産者が別の種類の食品生産に移行するのを支援するプログラムの開発、外部環境へおよんだコスト / 害に生産者が対処するよう強制する取り組み、または動物性食品への課税といった潜在的な解決策は、研究者の間で注目が高まっているにもかかわらず、一般的には議論されていない。(出所:Forbes)
地球温暖化という観点からとらえた科学的事実なのかもしれませんが、産業への影響はもとより、食生活という個人の嗜好に関わるところまで、関与するべきなのかということは議論が必要なことなのでしょう。
理想に近づいていくために必要なプロセスなのかもしれませんが、時間との闘いにもなりそうです。利益が誘因となれば、容易に合意できることも、それ以外となると難しくなるということでもあるのかもしれません。価値観を変えられるかと問われていそうです。