Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【SDGsと利他主義】頭で理解できても実践が難しい利他という考え方

 

 世の中に「SDGs」などの言葉が浸透し、その重要性は理解はできるものの、25歳の一個人としては「もっといい暮らしをしたい」「スキルを手に入れたい」など、社会のことより自分のことを優先的に考えてしまうと、自分が抱える違和感をForbesのニュースレターでつぶやく若者がいます。

一定の実績を積む、あるいは成功を収めて「余裕」が生まれて初めて、社会のことを考えられるのではないか──。(出所:Forbes JAPAN NEWSLETTER)

 何となくですが、理解できます。自身の目標を大切にしたいと思いつつも、それが正しいことなのか釈然としないということでしょうか。

 きっと正解はいく通りもあるのでしょうから、どれが自身にとってしっくりするものなのかを見出していくしかないのかもしれません。そのためには学び続けるしかないと考えると、堂々巡りに陥りそうです。

 

 

利他主義と私欲

 江戸末期から明治期の話ですが、渋沢栄一が一代で浅野財閥を築いた浅野総一郎を支援していたといいます。栄一は総一郎が野心家で私欲に飢えた一面があることを知った上で、色々取り計らいを行っていたそうです。それによって、総一郎は京浜工業地帯の発展の基礎を作り、日本のセメント産業の礎も作っていきます。後年、栄一は総一郎のことを、もう少し私欲を隠しておけば世間的に批判されることもないと回顧しています。

浅野氏が如何にも強慾の人であるかの如く、危険な人物であるかの如くに誤解せらるるのは、何事にも他を益するといふよりも自分を富まさうとの観念が先きに立つからである。

自分を富まさうとする事も、他人を益さうとする事も、結局実際に臨めば同じになつてしまひ、利他は自富となり自富は利他にもなるのだが、自富を先きにするのと利他を先きにするのとでは、同じ事を営んで同じく自ら富むにしても、それまでになる筋立に違つた処のあるものだ。その筋立の差によつて、強慾で危険な人物であるかの如く世間から想はれたり、或は斯く思はれずに済んだりするのである。(出所:デジタル版「実験論語処世談」(35) / 渋沢栄一

 栄一は総一郎の「先見の明」と「優れた計画性」を評価していたようです。

 栄一に従えば、利他主義を押し通して、私欲を満足させよということになるのではないでしょうか。

 他人のために働くことが自己(私欲)の満足につながり、それが豊かさにつながっていく、それには「自富」お金やスキルも含まれるということでしょうか。 

 

 

 ただ現実において、実践することは難しい面もあるようです。

 気候変動問題が世界の関心テーマとなり、カーボンニュートラルが国是となって、いかに脱炭素社会を作っていくかが大きな課題となっています。多くの企業と人がこれに関わっているのでしょうが、エネルギー関連企業で働く人たちにとっては日々ジレンマとの闘いになっているようです。

「エネルギーの安定供給」「再エネ」って実際どうなっているの? 石油・天然ガス大手のINPEXに聞いた | J-WAVE NEWS

長期的に世界が向かうのは、脱炭素社会に転換していくことだと思います。しかし、世界情勢が不安定な中、短期的には、人々の生活を安定させる石油・ガスの安定供給が課題となるので、私たちとしてもクリーン・持続可能なエネルギーを志向しつつ、中核事業である石油・ガスの安定供給により精進していく方向性と考えております。(出所:J-WAVE NEWS)

 これが現実なのでしょうか。これに浅野総一郎のような計画の緻密性と実行力がともなえば、時代を少し前に進めることができそうです。そうすることで社会は発展し、多くの人が喜ぶようになり、それが個人の満足となって、また「自富」となり個人にもかえってくることがあるのかもしれません。ただ組織の中でどう振舞うべきかという問題がつき纏ってきますが.....。

 

 

 科学的な分析をもとにした効率のよい慈善活動を推奨する「効果的な利他主義」という考え方があるそうです。

 あのイーロン・マスク氏もそれを支持し、ミレニアルやZ世代からも注目が集まっているといいます。

利他主義」を学び直してもいいのかもしれません。

 

「参考文書」

イーロン・マスクも魅了、気鋭の哲学者が語る「効果的な利他主義」の未来 | ウィリアム・マッカスキル「この暗い世界の先にあるもの」 | クーリエ・ジャポン

浅野総一郎氏の人物 | デジタル版「実験論語処世談」 / 渋沢栄一 | 公益財団法人渋沢栄一記念財団