「ゴミは資産であり、プレミア価格がついて当然」と、ゴミがもつ価値を見抜いた米国の若き野心家が、米国の廃棄物処理会社「リパブリック・サービス」を大きく成長させているといいます。
廃棄物処理に価値を見いだす、元マッキンゼーの敏腕経営者 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
この会社はアリゾナ州フェニックスに本社を置き、41州でゴミ収集を行い、198の廃棄場、71のリサイクルセンターを展開しているそうです。
2021年の売上は113億ドル、純利益は13億ドル。
ラスベガスでは、ホテルやカジノから出る一日約28tの残飯を近隣の工場で、ブタの飼料に加工し、ほかの有機物の腐敗によって発生したメタンガスは、分離して工業用に販売しているそうです。また、石の採掘会社が有料で廃棄する粉砕された砂利は、コンクリートに混ぜられてラスベガスの街の歩道に生まれ変わらせているといいます。
この他にも、プラスチックスのリサイクルにも取り組み、良質なリサイクルプラスチックスを生み出し、高価でも構わないという業者に販売しているそうです。
この若き野心家は、まず会社にゴミ運搬業者への大幅値上げを提案したといいます。新しい廃棄場を開業するには高額の費用が必要になるのが理由だったといいます。
高い料金は払えないという業者は、ほかの廃棄場を探せばいいし、値上げ後の料金でも支払える業者は、買収先候補になるだけの収益性がある。(出所:Forbes)
「ごみ処理」で、成長と収益確保を見据えたこの野心家は、ビジネスをさらに拡大させ、市場を制し、廃棄料金を引き上げ、利ざやを拡大しているといいます。そのために、化学廃棄物、医療廃棄物、低レベルの放射性廃棄物用の処理場を5カ所運営するこの業界の市場シェアトップの有害廃棄物処理会社も買収したそうです。
現代の社会課題の解決にも、このような野心があった方がよいのでしょうか。その方が解決は早まるのかもしれません。
日本でも活発化
日本でも、ごみを利用したビジネスが活発化してきてるようです。
三菱マテリアルは廃電子基板など銅やレアメタル(希少金属)を含んだスクラップの処理能力を拡大させるそうです。
三菱マテリアル、レアメタル再生拡大へ処理施設 200億円投資: 日本経済新聞
記事によれば、2030年度までに子会社の国内拠点に約200億円を投じて、処理施設を建てるといいます。現在世界最大となっている処理能力を拡大させ、年20万トンにするといます。
産業技術総合研究所(産総研)もレアメタル(希少金属)の高効率なリサイクルに向け、自動選別システムの実現に見通しをつけたそうです。
経済安全保障上重要な希少資源のリサイクルが進んでいない現状を打開する狙いがあるといいます。
スマホのレアメタル、高効率回収 産総研などライン自動化: 日本経済新聞
センサーやAI 人工知能を使って、手作業に比べて処理を大幅に効率化させるそうです。
活発化する「SAF」、廃食油の争奪戦
航空機の脱炭素に向け、「SAF」(持続可能な航空燃料)の利用が活発化しそうです。
使い終わった天ぷら油など日本の高品質な廃食油を原料にして航空燃料を造ろうと、国内企業の動きが本格化しそうといいます。
天ぷら油を航空燃料に 脱炭素化へ、原料「争奪戦」:時事ドットコム
記事によれば、この廃食油を巡っては、海外の大手企業が大量調達を進めており、取引価格が急騰し、「争奪戦」の様相を呈しているそうです。
21年度は事業系廃食油の3割に当たる12万トンが輸出に回り、17年度(6万トン)比で倍増した。輸出価格も上昇し、直近の22年11月は1キロ当たり約190円と、2年前の水準(80円程度)の2倍超となっている。(出所:JIJI.com)
2024年から「SAF」のプラントを稼働させる日揮ホールディングスは、三菱地所と協力し、同社の商業施設の飲食店から出た廃食油の提供を受ける予定といいます。この他にも関西国際空港などを運営する関西エアポートからも提供を受け、また。今後は堺市とも連携し、家庭からの回収も視野に入れているといいます。
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この先、日本においてもごみの争奪競争が過熱し、社会課題の解決はスピードアップしていくのでしょうか。米国人のような野心があってもいいのかもしれません。
「参考文書」
JALとANA、SAFで伊藤忠らと合意 2025年以降に調達 | ロイター
肥料高騰、国産化支援へ 下水汚泥再生で自治体補助拡充: 日本経済新聞
ヤマダHD、ごみ処理企業を買収 家電リサイクル強化: 日本経済新聞