WEF 世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」が始まりました。
今年のテーマは「分断された世界における協力」といいます。各国の指導者や専門家らが集まり、議論するといいます。
この重苦しい空気感に変化を与えるきっかけ作りになって欲しいものです。
そうはいっても現実はかなり厳しいのでしょうか。
世界は今、大国間の対立が経済の地図を塗り替えており、企業経営者は増えつつあるグローバルな火種を慎重に回避しながら進むことを余儀なくされている。(出所:ブルームバーグ)
言い得て妙なのかもしれません。
分断された世界
ロシアのウクライナ侵攻や米中対立のエスカレートを受け、世界の国々はどちら側につくか決断を迫られているといいます。
分断化される世界-2023年はエネルギーと半導体、台湾が火種か - Bloomberg
ロシアのウクライナ侵攻開始以降、エネルギー安全保障が世界的に重視されており、米国は中国による最先端技術へのアクセスを阻止しようと取り組んでいる。そして、台湾有事をはじめとする地域的リスクもある。(出所:ブルームバーグ)
これまでのグローバル化による結び付きによって世界のフラット化に成功したと考えていた大企業に転換を求めているのが現在の状況だといいます。
台湾
半導体の受託生産世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)がやっかいな存在になっているといいます。
もし仮に緊張がエスカレートし、戦争に至らなくても中国による封鎖などが起きれば、甚大なドミノ効果を引き起こすおそれがあるといいます。
記事によれば、米国防総省は、中国による台湾への軍事的手段の行使が差し迫っている兆しはないとしているそうです。ただ、バイデン大統領はウクライナへの米軍派遣は否定したものの、中国が軍事侵攻すれば、米国は台湾を守ると明言していると指摘します。
不測の事態に備え、企業は、制裁がどのようなものになるか、誰が米国の味方になるかなどについて検討しているそうです。
世界の中心はどこなのか
「米ドルはわれわれ全員にとって呪いだ」。
「もし国際金融システムが武器化すれば、それに代わるものが育つだろう」とシンガポールの元外相が語ったといいます。
こうした対立はドル取引にも影響し、また「経済安全保障」の名の下、サプライチェーンの再編も強いているといいます。
各国政府は、国政術の手段として自国の経済力をてこに国益を追求する姿勢を強めている。
攻めの面ではライバル国による製品や市場のアクセスを阻止することであり、守りの面では、信頼できる同盟国に限定して戦略的に重要な製品のサプライチェーンを構築する「フレンド・ショアリング」といった構想だ。(出所:ブルームバーグ)
こうした分断化することで、「西側諸国以外の国々の間で行われる貿易取引によって主要商品が市場に出回らなくなり、他の買い手にとって価格が上昇しインフレ高進が進む」とのリスクがあると記事は指摘します。
「G7」が揺るぎない世界のリーダーであり続けられるか、不透明感が増しているということなのでしょうか。
呪いなのか
「備えあれば患いなし」といいます。最悪を想定して準備しておけば、動揺は最小限にとどめることはできるのかもしれません。
一方で、「人って簡単に呪いにかかっちゃうし、それにだまされて不幸になることが往々にしてある」との意見があります。
呪いは、人から思考や行動の自由を奪うものであり、必ず言葉を使った命題の形をとるんです(出所:日経クロストレンド)
村上春樹さんの著作『村上さんのところ』に、「小説って何の役に立つんですか」という問いに、「小説というのはもともとが嘘の集積みたいなものだけど、長い間読んでいると、何が実のない嘘で、何が実のある嘘かを見分ける能力がついて、これが生きていく上で非常に役に立つ」との答えがあるそうです。
最悪の想定も結局はフィクションであり、ある意味では嘘であり、呪いなのかもしれません。
現実をどう捉えるか次第で、どこまで備えるのか、またそれにどう対処していくのかも変わっていくのでしょう。
今の日本政府は「呪い」を作っていないでしょうか。
「参考文書」
山口周氏が語る「リベラルアーツは “憑きもの落とし”だ」:日経クロストレンド
EU、環境技術強化へ新法案 自国優遇の米中念頭:時事ドットコム
イエレン米財務長官、中国副首相と会談 対話強化で一致: 日本経済新聞
中国経済に回復期待、副首相「23年正常化」 ダボス会議: 日本経済新聞