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【人的資本経営】「サスティナビリティ」と「コンプライアンス」を両立させるためにも

 

 九州電力が、石炭火力の苅田発電所新1号機を2024年7月に計画停止すると発表、また、水力の夜明発電所で更新工事を行い、27年6月の使用開始する計画も公表しました。

九州電力、石炭火力の苅田新1号を2024年に計画停止 - 日本経済新聞

 石炭火力への依存が低下していく、こうした動きを歓迎します。

 しかし、一方で、九電を始め大手電力会社各社が送配電子会社を通じて、新電力など競合他社の顧客情報を不正に閲覧していた問題が起きました。

 残念なことです。サスティナビリティに取り組み、コンプライアンスの重要性も認識しながら、なぜこうした不正事件が起こってしまうのでしょうか。

 

 

人的資本経営とISO30414

 人的資本経営が問われています。また、人的資本情報の開示が求められるようになっています。

 欧米ではこうした情報開示を義務化する動きがあり、開示する項目と分量が明確にするため、国際的な人的資本情報開示のガイドライン「ISO30414」に準拠する動きがあるといいます。

 この「ISO30414」は、人材マネジメントに関する規格の検討から始まり、2018年に「社内外への人的資本レポーティングのガイドライン」として発行されたそうです。

ISO30414とは?人的資本情報開示が求められる理由等を解説

 投資家から企業の無形資産、人材情報に対する開示要求が強まったことが規格制定の背景にあったそうです。また現在では、サービス産業やソフトウエア産業が主流となり、企業価値の多くが無形資産となっていることも無縁ではないようです。

「ISO30414」は、「コンプライアンスと倫理」「コスト」「多様性」「組織文化」「生産性」「スキルと労力」など11の領域で構成されています。

 

 

 日本では総合商社の豊田通商が2022年10月に「ISO30414」の認証を取得したといいます。

豊田通商がアジア2社目のISO30414認証取得、「人の豊通」を目指す人的資本経営とは | Human Capital Online(ヒューマンキャピタル・オンライン)

 記事によれば、豊田通商はこの国際認証で推奨される指標を開示したそうですが、まだできていない点を自分たちで把握できたということに意義があったといいます。

人事の施策はその仕掛けの精度の前に、経営や事業にどう役立っているのかというアラインメントが最も重要です。

本来、事業戦略と人事戦略はコインの表裏であるものですが、従来は人事制度や施策の真の目的やその効果測定が必ずしも明確でないこともあったのではないでしょうか。(出所:ヒューマンキャピタル・オンライン)

「人的資本経営」は、人事だけでなく経営やマネジメントとともに取り組むものと、「ISO30414」の取得を主導した濱瀬CHRO(最高人事責任者)は指摘します。

(資料:豊田通商

 様々な企業が「サスティナビリティ」を追い求めていますが、未だ明確になっていないことが多々あるのかもしれません。

 豊田通商のように「ISO30414」の取得を通し、サスティナビリティを包含した経営目標と人事戦略を一体化させ、体系づけていくことが求められているのではないでしょうか。

元来、サステナブルなアクションとコンプライアンスが両立するものです。その理解の一助に「ISO30414」が役立てばいいのかもしれません。

 

 

 国際規格ISOを取得しようとすれば、ルール化や文書化など骨の折れる作業がばかりです。

 しかし、取得できれば、その努力は無駄にならないはずです。経験してわかったことですが、その取得によってどれだけ仕事が楽になったことはいうまでもありません。また、従業員みなが同じ価値基準を仕事できるようになることも大きな財産なのかもしれません。

 

「参考文書」

大手電力会社に相次ぐ不正閲覧 新電力の顧客情報盗み見て営業 自由化から7年、公正な競争にはほど遠く…:東京新聞 TOKYO Web

大手の送電部門の所有権分離提言、不正閲覧問題受け-内閣府会議 - Bloomberg