Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

テスラの「マスタープラン 3」が示す「持続可能なエネルギー経済」への移行

 

 テスラが3月1日、投資家向けイベントを開催し、イーロン・マスクCEOが、世界を救うという野心的な計画「マスタープラン3」を公表しました。

テスラが基本計画で示した「持続可能なエネルギー経済」と、見えてこない“低価格EV”の姿 | WIRED.jp

製造業に10兆ドル(約1,360兆円)を投資することで、世界は再生可能エネルギーによる電力網に全面移行できる。そして電気自動車(EV)や飛行機、船に電力を供給できる──というのだ。(出所:WIRED)

 興味ある内容ですが、投資家にとっては退屈な内容だったといいます。

 記事によれば、「地球は持続可能なエネルギー経済に移行できる」と宣言、2050年までに実現する可能性が見えてきたと強調したそうですが、肝心の「次世代のEV」についての情報が乏しく、それが失望感へとつながったようです。

 

 

 この他、テスラは効率化の独自の取り組みとして、将来の工場での天然資源消費量を4割削減することを計画しているとし、次世代モデルの製造コストを半減させるとは表明したそうです。

マスク氏の新基本計画に失望感、テスラ次世代モデルの詳細欠く - Bloomberg

 また、新たに手掛ける可能性のある製品の一つがヒートポンプをあげ、ヒートポンプが自宅とオフィスの暖房コストを劇的に下げる可能性があり、持続可能なエネルギーへの移行で容易に達成できるものの一つだと指摘したといいます。

マスタープラン

 イーロン・マスク氏は2006年、「まずは電動スポーツカーを生産して販売し、そこで得た資金で次々に低価格なEVを投入していく」というシンプルでわかりやすく革新的な内容の「マスタープラン」発表し、2016年にも「マスタープラン 2」を発表しました。

dsupplying.hatenablog.com

 ただ、どの「マスタープラン」も完全に実現していないとwiredは指摘します。たとえば、モデル3以降、安価な新モデルの投入はなく、またそのモデル3も他社に比べる魅力ある価格ではなくなっているといいます。

(写真:テスラ)

 「マスタープラン」は事業計画ではなく、理念やビジョンに近いようなものに感じます。

 そこから大きく逸脱することなく、そのストーリーを違えずに、ビジョン実現に近づいているのなら、もう少し評価があってもよさそうですが、期待が高いテスラだけに批判の声が大きなるのでしょうか。

 

 

動き出す日本企業

 日本では政府の宣言以降、多くの企業が2050年度のカーボンニュートラルの達成に向けての方針を示すようになりました。

 三井不動産もそうした企業のひとつで、カーボンニュートラル達成のための行動計画を策定しています。その実現のため、太陽光発電設備の開発・運用を自社で行い、自社保有物件に「自己託送」で送電すると発表しました。

 

(資料:三井不動産

 三井物産によれば、北海道苫東地域や関東2県、山口県に計7か所に、まずは合計2,300万kwh/年を発電する大規模太陽光発電施設を建設し、首都圏や北海道、中国地方の自社保有物件に、FIT 固定価格買い取り制度を利用せず、送配電気事業者の送電網を利用し送電するといいます。

三井不動産 | 東京ミッドタウン日比谷他国内保有施設に自己託送メガソーラー事業、約2,300万kwh/年分新たに確保

 自前の太陽光設備で電力を確保することで、「非化石証書」だけに依存しないリアルなグリーン電力への切替が進み、通常の電力利用に比べてコスト低減も可能となるそうです。その効果は、1物件当たりの電力代は年間で数百万円安くなるといいます。また、これによるCO2削減量は年間約1万トンになるといいます。この事業は、23年末頃より順次稼働するそうです。

 

 

 設備投資を伴いますが、電力の自給自足がコスト抑制となり、脱炭素に貢献するばかりでなく、昨今のエネルギー価格高騰にも有利に働くようです。

(写真:三井不動産

 テスラほど野心的になることができなくとも、ビジョンやミッションを明確にし、その行動計画を立案できれば、それは実現に向かうのかもしれません。

 緻密な実現可能な計画を策定することは、それによって計画の80%が達成されることになると話もあります。計画がされなければ、ことが前に進むことはないのでしょう。

 

「参考文書」

テスラのマスクCEO「脱化石燃料は見えた」、地表0.2%に再エネ30TW導入で | 日経クロステック(xTECH)