ルールや方針など、それらが規制となって、時に技術が進化したり、新しいテクノロジーが社会実装されていくこともあるのではないでしょうか。
しかし、流行やトレンドが変わっていくことと同じように、ルールや方針はその時代時代に合わせて、見直され不変であるということはなさそうです。
合成燃料、欧州での方針転換
EU 欧州連合、e-fuel合成燃料を使う場合に限り、2035年以降も内燃機関車の販売継続を認めたこともその例のでしょう。
手のひら返しのように見えますが、何も不思議なことではないような気がします。EUは極めて合理的ではないかと感じます。
脱エンジンに関しては小さな逃げ道を設けたが、脱炭素の基本方針に変化はない。合成燃料で恩恵を受けるスーパーカーの台数たるや微々たるもの。(出所:日本経済新聞)
ある専門家は、「車産業における競争力の源泉はエンジン性能から再生可能エネルギーの調達力へ移行する」とし、「車メーカーで合成燃料の容認を歓迎しているのは、高コストの合成燃料を許容できる富裕層を客にしたポルシェとフェラーリ」といいます。
ほんとうにそうなのでしょうか。経済からみればそうなのかもしれませんが、脱炭素への技術的なアプローチは多様であるべきで、画一的なものに制約しては、目的の達成が危ぶまれそうです。
EVについては、テスラの成功事例があるから、それに倣うべきとの意見もわかりますが、もしかしたらそれは一時のトレンドといってもいいのかもしれません。
現実、EV製造においても多くの難題が語られるようになっています。
地政学リスク、変化する時代
一方で、地政学リスクが高まり、欧州においては脱ロシアが鮮明となり、ロシア産資源からの脱却が絶対的になってはいないでしょうか。
こうした状況下、エネルギーのすべてを再生可能エネルギーと原子力で賄うことができれば、それはそれでよいのでしょうが、それにもまたリスクが伴いそうです。現実、太陽光パネルの多くには中国産が入り込んでいます。
こうした現実を直視すれば、化石燃料のために整備されたインフラを活用できるカーボンリサイクル技術やバイオ技術の発展が急務になっているようにも思えます。
これらの技術を社会実装させていくことが今この時代にあっては有益ではないでしょうか。そのためには、いかに早くスケールさせるかかかっていそうです。しかし、スケールさせるためには企業単独では困難で、いかに共創していくかが課題なのかもしれません。
求められる社会実装
誰も経験のない新しいことに挑戦するときは、往々にして反対する人の方が多いといいます。そのとき反対者は必ずもっともらしい言い訳をするものです。そして、それが共創の阻害要因になるのでしょう。
GIA グリーン・イノベーター・アカデミーという教育プログラムが立ち上がり、商社やメーカーなど20社・団体が参加しているといいます。専門家の講義や実地研修を通じて、脱炭素事業の創出を議論しているそうです。
「脱炭素」や「サーキュラーエコノミー」を文化と定着させ、新しい価値観として実現していくためには、こうした活動も必要なことなのでしょう。
しかし、それと同時に既に見えてきている技術を、そろそろ社会実装させていく現実の行動も求められていないでしょうか。
そのためにはコストの低減に寄与するスケールメリットを追わなければなりません。
今この時、それが悪ということではないように思えます。それによる不都合が生じるようであれば、また方針を転換してもいいのではないでしょうか。
「参考文書」
[社説]合成燃料を脱炭素の選択肢として備えを - 日本経済新聞
ようやく議論は本質へ 揺らぐエンジン禁止規制:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン
こども政策ぜひ実現して 中室牧子さんらとThink! - 日本経済新聞
脱炭素事業の専門人材育成 教育プログラム「GIA」商社など参加 - 日本経済新聞
「Green Innovator Academy」(第2期)が8月27日に開校|一般社団法人Green innovationのプレスリリース