Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

進まないDX、定着しない人的資本経営、停滞したままの日本

 

 EV 電気自動車の普及とともにハードウエアの価値は下がり、自動運転技術やソフトの競争になるといわれた自動車業界、多くの自動車メーカーがソフト開発を強化したが、ソフトで先頭を走る米国ではなぜか「ものづくり」の重要性を強調する場面が目立っているといいます。

テスラも部品も「ものづくり」 ソフトのみで革新困難 - 日本経済新聞

 どこかの専門家が、もっとらしい意見を述べ、支持されると、それが瞬く間にトレンドとなって、みなが右倣えとなるということでしょうか。

 迷惑な話とも思いますが、こうなってしまうのが現実なのかもしれません。「SDGs」「DX: デジタルによる変革」「人的資本経営」なども同様ではないでしょうか。雨後の筍のように専門家があふれるようになり、うんちくが語られ、企業が変わることが求められます。

 こうした意見にも一理はあるのでしょうが、上辺だけを倣っているだけは、自動車業界と同じで、それなりに終わるのが関の山なのでしょう。

 事実そうなりつつあるにも感じます。日本の停滞の原因もこういうところにあるのでしょうか。

いい仕事、いい給料、それが人的資本経営

「従業員一人ひとりが仕事を通じて成長し、その報酬としていい給料がもらえる」、この好循環をつくっていくのが「人的資本経営」だと、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏はいいます。

 こうしたシンプルな文脈で語られる中に本質があるのかもしれません。

人的資本―その4 長期視点の回復。 - Executive Foresight Online:日立

人的資本への投資の本質は「いい仕事」と「いい給料」です。働く側にとっても、働きがいはその2つしかない。ということは、仕事の内容をどう設定するかが大事になります。その人の能力や、どういう人になりたいのかを長期視点で見抜き、期待を伝えた上で、その人にとっていい仕事を与え、結果を評価し、報酬を支払う。(出所:日立グループ

 社員のリスキリングや研修に投資し、そこからどれだけ利益に繋げられることができ、それをどう分配するかを考えるべきといいます。

DX、人への投資

「DX」についても同じことがいえそうです。

 人手不足だからといって、未経験な新入社員をいきなり「DX」プロジェクトに取り立てれば、壁にぶつかり、やる気がそがれてしまうのかもしれません。

若手IT人材育成の「丸投げ」先はない、誰もが当事者意識を持つべし | 日経クロステック(xTECH)

 かつてのIBMのSE育成トレーニングは、15か月にも及んでいたといいます。繰り返される集合研修と、その研修の合間は配属先で先輩SEの仕事ぶりをみつつ、OJT、そして、次の研修のための予習の繰り返しだっといいます。

 人を育てて、はじめて事業が成り立つということだったのでしょうか。

 こうしたあたり前のことが、今ではなおざりにされ、間違った効率化が横行するようになっているのかもしれません。

「必要最小限の投資で、最大限の効果を」

 何でもかんでもケチるのが効率化ではありませんし、効率化したことで必要もない余計な仕事を増やすようでは本末転倒です。常に最大限の効果を得ることが効率化への第一歩のはずです。

 それは人を無駄な仕事から解放し、人の能力をどこまで引き上げることができるのかということでもありそうです。そうであるのなら、DXへの投資も結局は人への投資となり、それによって人が育ってはじめて効果があがることになるのではないでしょうか。

 こうした大切なことがおざなりにしては、どんな立派な専門家のアドバイスも効果を発揮することはないのでしょう。

入社式

 4月を迎え、昨日は各地で入社式がおこなれたようです。

 伊藤忠商事では、正面玄関を350本の満開の桜の木で飾り、レッドカーペットを敷き、岡藤CEOと石井社長が新入社員を出迎えたといいます。

伊藤忠商事の入社式は350本の桜でお迎え、岡藤会長「会社で爆発させてほしい」 - WWDJAPAN

 こうした手の込んだ演出の入社式も、人を大切にしようとの現れなのかもしれません。現に、伊藤忠商事は好成績を続け、元気のある会社のようですから。

 

「参考文書」

バズワード化する「人的資本経営」 “もどき”で終わる残念なケース3選:働き方の見取り図(1/4 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン