世界の潮流が大きく変化し、SDGsの看板を掲げれば、お金が流れ、実効性よりも“見せ方”が重視された「サステナビリティ・バブル」の時代が終わったといいます。
トランプ政権下で、サステナビリティに逆風が吹いています。しかし私は、それを“悪いこと”だとは思っていません。この局面で生き残るのは、儲からない“偽物のサステナビリティ”ではなく、本当に利益を生む“儲かるサステナビリティ”だけです。
儲かるサステナビリティ”とは、環境と社会の制約の中で経済成長を設計すること。偽物の淘汰と本物の再定義が始まっています。(引用:磯貝友紀氏のXの投稿)
一方で、日本政府は「GX:グリーントランスフォーメーション」を推進しています。脱炭素社会の実現と経済成長を同時に達成するための国家戦略です。化石燃料中心の産業・社会構造をクリーンエネルギー中心へと変革し、経済社会システム全体を変革することを目的としています。脱炭素化を契機に、日本の産業競争力を再興するための取り組みといいます。
「原発回帰」鮮明に エネルギー基本計画とGXビジョンを閣議決定:朝日新聞
この戦略は「儲かるサステナビリティ」への一歩として評価できそうです。
資金調達と投資を具体的に支援する仕組みは、サステナビリティへの取り組みをコストではなく、長期的な収益を生む投資として位置づける強いインセンティブとなりそうです。
「カーボンプライシングの導入」、 排出量取引制度や賦課金の導入は、外部不経済であったCO2排出に価格を付け、市場メカニズムを通じて排出削減を促す手法であり、「合理性の先に生まれる非合理性(環境コストの無視)」を是正しようとする動きです。これは、真に持続可能なシステムを作る上で不可欠な要素です。
しかし、懸念や課題もありそうです。
GXの推進は主に「エネルギーの安定供給」「経済成長」「CO2排出削減」の3つを同時に実現するという合理的な目的に基づき、水素、アンモニア、次世代原子力、CCUSといった革新技術に多額の投資が行われます。しかし、GX推進企業の行動原理として「地球と共存する社会の構築」という揺るぎない倫理的基盤が共有されていないとただ儲かればいいになりかねず、既存の産業構造を温存、延命を正当化してしまうおそれも否定できません。社会の価値観や産業のルール自体を変革しようとする「抽象度の高い思考力」が求められます。また、トランプさんが吹かせる逆風にもブレない信念を持ち、計画を遂行できるかが、その成否を分けることになりそうです。
IMF国際通貨基金によれば、日本のGDPが2026年には世界5位に転落し、その先においては英国にも追い抜かれ6位になると予測されています。主に、人口減少と長年の停滞、円安の影響といわれています。
日本のGDP、26年にインド・30年はイギリスに抜かれる見通し…既にドイツに抜かれ4位に転落 : 読売新聞
GXはこの構造的な問題を解決し、GDPの転落傾向を回復・再加速させるための最大の成長戦略と位置づけられ、日本政府も、そのための仕組みを構築しているといいます。GXが期待通りに進み、水素、CCUS(CO 2 回収・貯留・利用)、次世代蓄電池などの革新的なGX技術を世界に輸出することで、日本の新たな国際競争力の源泉となり、GDPを押し上げることができるそうです。ZEB(ゼロエネルギービル)や断熱改修、電気自動車の普及など、脱炭素化に向けた国内投資需要の期待もあるといいます。
GXとDX(デジタルトランスフォーメーション)を同時に進めることで、エネルギーの効率的な運用や、サプライチェーン全体の最適化が可能となり、さらなる生産性向上とGDPの押し上げが期待されるといいます。
GXは、日本のGDP転落傾向を反転させ、再び成長軌道に乗せるための「唯一と言える大規模な戦略的投資」のようです。しかし、GDP順位を劇的に回復させるほどの効果が出るかは、その投資が「次の世界標準」となる革新的な技術とビジネスを生み出し、国際競争力のある産業構造への転換をどこまで実現できるかにかかっています。
WMO 世界気象機関によれば、大気中の二酸化炭素濃度が過去最高を記録したといいます。WMOは、地球温暖化の加速やさらなる異常気象の発生に警鐘を鳴らしたといいます。
CO2濃度が過去最高更新、さらなる異常気象の恐れ=WMO | ロイター
本物のサステナビリティが問われているようです。「地球と共存する社会の構築」を可及的速やかに構築できないと未来が危うくなりそうです。

「参考文書」
