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【世界ブームの代償】ホタテと緑茶が高騰!日本の食卓を脅かす「輸出優先」のジレンマ

「最近、ホタテが高くて手が出ない」「スーパーで安かったはずの緑茶の価格が上がっている気がする」と感じていませんか? 今、日本が誇るホタテと緑茶(抹茶)は、単なるインフレ以上の複雑な要因で価格高騰の危機に瀕しています。

ホタテ4割高、生産減・輸出増で「産地なのに食べられない」 - 日本経済新聞

 世界的なブームと需要の裏側で起きている、日本の食卓が直面する「輸出優先」のジレンマとその対策を深掘りします。

 

 

🌊 なぜ「日本の恵み」が高騰するのか?:二大品目の危機

 🍵 抹茶ブームの裏で煎茶が消える危機

 世界的なスーパーフードブームで、 抹茶(Matcha)が欧米で健康飲料として大人気。収益性の高い抹茶(碾茶)生産への転換が加速し、国内で日常的に飲まれる煎茶の生産量が減少・高騰しています。

農林水産省資料に掲載されている全国の荒茶の取引価格データより)

 抹茶輸出は農家の経営を助けるが、国内の「茶離れ」を加速させる可能性があります。その上、碾茶の生産をいくら増やしたところで、抹茶の加工に必要な機械不足で供給が追いつかない状況で、需要にこたえられていません。

 🐚 ホタテ:環境と為替のダブルパンチ

 近年の猛暑による海水温の長期的な上昇がホタテに大きなダメージを与えています。特に青森県などの主要産地で、ホタテの稚貝(ベビーホタテ)が大量に死滅し、中には9割が死滅したという漁協の報告もあります。ホタテは成長に数年かかるため、この稚貝の不漁は数年先の漁獲量にまで影響を及ぼし、供給回復の見込みが立たない状況です。

 近年の円安で海外バイヤーにとって日本のホタテが相対的に安くなり、日本の産地から買い付けるインセンティブ(動機)が非常に高まっています。結果として、輸出価格が国内の卸売価格を上回って高騰し、海外輸出主導で価格が引き上げられる形となっています。国内相場は、一時期キログラムあたり4,000円を超えるなど、記録的な高値で推移しています。漁獲量が減り、サイズも小型化しているため、国内の飲食店やスーパーではホタテの品薄が続き、高騰を理由にメニューからホタテを使った焼き物や丼物の提供を断念するケースも出ています。

 ホタテの高騰は、抹茶と同様に、国内消費者が日本の恵みを享受しにくい状況を生み出しています。

 💰 国内消費者にコスト転嫁:食文化が失われる「構造的なジレンマ」

 表面だけ見ると、「海外で高く売れるから、国内で消費されるはずだったものが高騰したり、手に入りにくくなったりしている」という、国内が犠牲になっているように見える構造があります。しかし、儲かる海外に売るのは企業として合理的な判断です。農漁業者の収入安定も業界の持続に不可欠なことです。ただ消費者は不公平感を抱きます。 国際的な取引によって利益が生まれても、国内消費者にはコスト増だけが転嫁される形になるのですから。

 加えて、抹茶のように、現在の高い需要に応えるため、煎茶畑を碾茶畑に切り替えたところで、ブームが去れば、他国(中国など)との競争が激化したりして、一気に需要が冷え込み「過剰生産」に陥る可能性があります。

(イメージ画像:Geminiで作成)

 また、煎茶や日常の食卓からホタテが消えることで、日本の食文化の根幹が揺らぎます。

💡 日本の食卓を守るために:国際ブランド力を国内に活かす「戦略」

 こうした産品が持続的に発展していくためには、「国際的なブランド力」と「国内の安定供給」のバランスを取る戦略が不可欠です。

欧米に学ぶ「高付加価値化」と「分離戦略」

 フランスワインやイタリアのDOP/GI制度(例;パルミジャーノ・レッジャーノなど)のように、品質と産地を公的に保護し、最高級品(輸出向け)と日常品(国内向け)の戦略的な区別を明確にする政策が求められます。

  • GI制度の活用: 日本のGI(地理的表示)制度を活用し、抹茶やホタテの国際ブランド力を高め、収益源を確保する。

     ホタテや緑茶も、単なる「日本産」ではなく、「津軽海峡産の特定の品質基準を満たしたホタテ」や「宇治/西尾産の特定の製法を経た抹茶」など、地域ブランドを徹底的に高めることで、輸出で得た収益を地域の文化保護と持続可能な生産システムに結びつけることができます。

     

国内消費を守るための輸出

 海外の成功事例から学べるのは、輸出は「国内の犠牲」ではなく、「国内の文化と産業を守るための手段」であるべきだということです。輸出で得た収益を、国内の食文化を守るための技術開発や安定供給のための投資(ホタテの稚貝養殖技術や抹茶の加工設備)に振り向け、国内消費者が手の届く価格で「日本の恵み」を享受できるシステムを構築することが、最も重要になります。

 

 

🌟消費者として日本の恵みを守るために

 輸出の成功は喜ばしいことですが、その裏で国内消費者が何を失おうとしているのか、私たちは知る必要があります。

大切なのは、このブームを一過性の利益で終わらせず、「日本の農漁業を長期的に持続させる投資」に変えることです。

私たち消費者も、単に「高い」と敬遠するだけでなく、GI認証品(地理的表示)など、「価値あるものにお金を払い、作り手を応援する」という意識を持つことが、日本の食卓と文化を守るための第一歩となるでしょう。

 


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(もうだいぶ前のことですが、青森むつ市にちょくちょく出張していました。会社の大先輩が退職後再就職した会社がむつにあり、そこを訪れてはたびたびホタテパーティーをやっていました。そのころはホタテはとっても安かったのですが。。。 その時に同行していたS産業のNさん。十八番が「時代おくれ」でした。ちょっとアレンジして歌う姿が印象的でした。ホタテを話題にするとそんなことを思い出します。)

 

「参考文書」

抹茶、葉も機械も足りない 世界で「お〜い抹茶」伊藤園は専門部署 - 日本経済新聞