三菱商事の洋上風力発電プロジェクトからの撤退は、伝統的な「国家プロジェクトの担い手」としての総合商社の限界を露呈しました。
AIの時代に、風力発電の灯を消すな:三菱商事の撤退を「日本の敗北」としないために - Up Cycle Circular’s diary
しかし、裏を返せば、この**「具現化力不在」**の時代こそ、総合商社が真価を発揮するチャンスです。
「仲介者」から「コンポーザー」へ
GX・DXは、エネルギー、デジタル、金融、製造、地域社会という異なる分野のすべてを統合しなければ成立しません。この複雑な事業において、商社に求められるのは、単なる**「仲介者(トレーダー)」ではなく、各要素を組み合わせ、一つの巨大な協奏曲を演奏させる「コンポーザー(事業作曲家)」**としての役割です。
- インテグレーション(統合)の主導: 研究機関(PSCs)、素材メーカー、IT企業(VPP)、金融機関を、すべて一つの事業スキームに束ねる**「横串を刺す力」。これが、日本の弱点である「縦割り(セクショナリズム)」**を打ち破る唯一の解です。
- リスク・マネージャーへの進化: 地政学リスクや為替変動、資材高騰といった現代のリスクを、もはや商社単独で負いきれません。政府や金融と連携し、リスクを**「定義し、配分する」ことで、他のアクター(中小企業など)が参入しやすい安全なビジネス環境を創出するリーダーシップ**が求められます。
(大正時代に三井・三菱に匹敵する巨大商社へと急成長しながらも、米騒動の際に「米の買い占め」の濡れ衣を着せられ焼討ちにあった鈴木商店の盛衰と、その大番頭・金子直吉の生涯を描いた経済小説です。もとは一介の商店に過ぎなかった鈴木商店が、大番頭・金子直吉の手腕によって一代で巨大総合商社へと成長していく過程が描かれます。
当時、利益を追求する企業姿勢や米の買い占めの噂、それを煽るマスコミの論調によって、鈴木商店は「国民の敵」「鼠」といった批判的なレッテルを貼られました。
1918年(大正7年)の米騒動の際、群衆による本社への焼討ち事件が発生します。小説では、定説とされる「米の買い占め」が実際には行われていなかったのではないかという疑問を提示し、事件の裏側にある社会的なメカニズムや企業の論理に鋭く切り込んでいます。この小説は、企業の社会的責任、大衆心理の危うさ、そして組織と個人の関係という今日的なテーマを、歴史上の事件を題材に深く掘り下げた作品として評価されています)
- 「非資源」を軸にした変革: 伊藤忠商事が示したように、エネルギーの海外依存という国家の構造的な脆弱性に立ち向かうため、VPPやデジタル分野といった非資源・マーケットイン志向の戦略で、業界全体の方向性を先導していく必要があります。
伊藤忠商事、蓄電池制御で九州電など5社と提携 電力需給で連携加速 - 日本経済新聞
商社への期待は、もはや「国策を遂行する」ことではなく、**「民の実行力で、国策(GX)の具現化を主導する」**ことへと変わっているのではないでしょうか。
「参考文書」
伊藤忠の独走は続くのか。三大商社の2026年、中期視点の業績「序列」 | Business Insider Japan
伊藤忠・岡藤会長「天才より凡人経営で、最悪に備え重心を低く」:日経ビジネス電子版




