Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【連載:Z世代と循環】メルカリ・セカストが成功し、プラスチック回収が苦戦する理由 ―「売ればお金になる」と「捨てればゴミになる」の決定的な差

 前回、アディダスの事例を通じて、サーキュラーエコノミーには「物語」と「技術」の接合が必要であることを見ました。しかし、私たちの日常を見渡すと、一つの奇妙な対照に気づきます。

 多くのZ世代が「プラスチックの分別回収」を面倒だと感じ、義務感でしぶしぶ行っている一方で、メルカリやセカストなどの「2次流通(リユース)」はこれほどまでに熱狂的に受け入れられているのか。同じ彼らが、不要になった服や小物を「2次流通」に流すのを、むしろ楽しんで、自発的に行っているようです。

 なぜ「プラスチック回収」は苦戦し、2次流通 リユースはこれほどまでに熱狂的に受け入れられたのか。そこには、循環をビジネスとして成立させるための**「インセンティブ設計」**の正解が隠されています。

 

 

 

「資源の供給者」という役割の再定義

 プラスチックの分別回収において、消費者の役割は「ゴミを捨てる人」のままです。どれだけ丁寧に分別しても、そこにあるのは微かな達成感と、分別を間違えてはいけないという手間だけです。この作業は生活者にとって**「付加価値を生まない作業」**です。

 対してメルカリは、消費者を「出品者(=価値ある資源の供給者)」へと一気に引き上げました。 「不要なもの」を「価値あるもの」として再定義し、それを他者に手渡すプロセスを**「自分の経済性を高める活動」**あるいは付加価値へと変換したのです。

  • プラスチック回収: 作業に対するリターンが「正しさ」という抽象的なもの。
  • メルカリ: 作業に対するリターンが「現金(またはポイント)」と「感謝のコメント」という極めて具体的なもの。

「面倒くささ」を価値に変えるプロの査定(ゲオの論理)

 セカストを展開するゲオHDの遠藤社長は、自社をあえて**「面倒くさい小売業」**と呼びます。 メルカリが「自分で写真を撮り、出品する」という手間をゲーム化したのに対し、セカンドストリートは、その手間すら惜しむ層に対し、「店舗に持ち込めばプロがその場で査定し、即座に価値(現金)に変える」というリアルなワークシステムを提供しました。

  • 面倒な真贋判定や値付けをプロが引き受ける。
  • 消費者は「持ち込むだけ」で、自分の持ち物が「資源」であったことを即座に実感する。

 これは、消費者の手間(コスト)を最小化し、利益(リターン)を最大化するという、極めて効率的な新たな生活システムです。

「2次流通」が消費者の購買行動を規定する

 現在、Z世代の消費は「出口(売るときのこと)」から始まっています。 「メルカリやセカストで高く売れるか?」が、新品を買う際の最大の判断基準になっているのです。2次流通市場が整ったことで、製品は「買って終わり」の消耗品ではなく、**「一時的に所有し、次の人へ回す資産(資源)」**へと昇華されました。これは、まさにエレン・マッカーサーが説いた**「最初から廃棄を出さない設計」を、消費者が自らの意志で行っている姿**そのものです。

 この「2次流通の成功」は、サーキュラーエコノミーにおける**「価値の維持」**を、消費者の欲望と直結させた形と言えるでしょう。

なぜプラスチック回収には、この「熱量」がないのか?

 ここで石化業界が直面するプラスチック回収を振り返ると、決定的な欠落が見えてきます。 2次流通には「値付け(プロの査定)」があり、「現金化」があり、「掘り出し物を探す楽しみ」があります。しかし、プラスチック回収には、その資源が次に何に生まれ変わり、どれほどの価値を生むのかという**「フィードバック」**が一切ありません。

「売ればお金になる(リユース)」と「捨てればゴミになる(リサイクル)」。この決定的な差を埋めない限り、プラスチックの循環は、Z世代にとっての「自分事」にはならないのかもしれません。

 

 

まとめ

 2次流通市場がこれほど好調なのは、「循環」が消費者の経済性と承認欲求を完璧に満たしているからです。

 では、石油化学業界は、2次流通のような「ワクワクする資源の循環」を作ることができるのでしょうか。 プラスチックを戻すことが、メルカリに出品するように「得」であり、セカンドストリートに持ち込むように「スマート」な行為として再設計できるのか。

 次回、そのヒントを握る、新しい**「情報の見せ方」とマーケティング**の戦略について深掘りします。

 次回予告:第3回:石化業界がZ世代を巻き込むための「情報の見せ方」
「数字だけのカーボンフットプリントは、なぜ誰にも刺さらないのか?」

 

「参考文書」

「セカンドストリート」が恵比寿に新コンセプト店 “オールドマネー&エッセンシャル”を軸に上質なアイテムを提案 - WWDJAPAN

ゲオHD遠藤社長「面倒くさい小売業に成長余地、リユースで世界一目指す」:日経ビジネス電子版