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電通が巨額赤字:消える広告の魔法 ~「広告」が売れない時代の歩き方

日本の広告界の巨人・電通グループが3,101億円という過去最大の赤字を計上し、社長が退任するという衝撃的なニュースが駆け抜けました。

電通グループ、3101億円損失計上 過去最大赤字へ、五十嵐社長が退任―2025年12月期:時事ドットコム

これは単なる一企業の経営不振ではありません。戦後日本を支えてきた**「巨大な予算で『虚像』を作り、消費者の欲望をハックする」という広告の魔法**が、ついにその効力を完全に失ったことを意味しています。


1. 「広告」に3,000億円を払う時代の終わり

かつて、広告は「魔法の杖」でした。 中身が平凡な商品であっても、電通のようなプロフェッショナルが美しい「包み紙(広告映像やキャッチコピー)」を被せ、マスメディアを通じて大量に流せば、それは「価値あるもの」として社会に受容されました。

しかし、Z世代・α世代という「最新アプリ」を搭載した若者たちは、その包み紙を剥ぎ取り、中身を検閲する能力を持っています。

  • 検閲の鋭さ: SNSを駆使し、企業の労働環境、環境負荷、政治的スタンスを数秒で暴く彼らにとって、数億円かけたCMは**「不都合な真実を隠すためのノイズ」**に過ぎません。

  • 投資対効果(ROI)の崩壊: 企業側も気づき始めています。巨額の広告費を投じてイメージを作っても、一度SNSで「不誠実(フェイク)」の烙印を押されれば、その投資は一瞬で瓦解することを。


2. 「カンヌ」の輝きと、日本の「野暮ったさ」の断絶

世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」が、10年以上前から「社会課題を解決するアクション」を評価軸に据えていたのに対し、日本の広告業界は依然として「五輪」や「万博」といった旧来型の利権イベント、あるいは「タレント頼みの演出」に固執してきました。

  • 海外企業の戦略: 「言葉」ではなく「行動」をデザインし、広告を「社会を良くするための装置」に変えた。

  • 日本企業の停滞: 依然として「見せ方」というテクニックに終始し、経営のOS(中身)の刷新を後回しにした。

電通の赤字は、この**「中身を伴わない演出(野暮ったさ)」に対する、市場からの最終通告**です。


3. 広告の「死」から、広報の「再生」へ

電通という「演出の総本山」が揺らいでいる今、企業が向かうべきは、さらなる広告技術の追求ではありません。「広報(Public Relations)」の本来の役割——社会との誠実な関係構築——への回帰です。

  1. 「自前」の言葉を持つ: 代理店に丸投げし、借り物の言葉で飾るのをやめる。経営者や社員が自ら、不器用でも「誠実な言葉」で社会と対話すること。

  2. オーセンティシティー(誠実さ)の証明: 「何を解決しようとしているか」という本質を、SSBJ基準などの客観的データと共に開示し続けること。

  3. 広告費を「実態」へ投資する: 見せかけの広告に数億円使うなら、その予算を「労働環境の改善」や「サプライチェーンの透明化」といった、OSのアップデートに回すこと。


まとめ:魔法が解けた後の、真実の夜明け

「広告の魔法」が解けた世界は、不誠実な企業にとっては冷酷な冬の時代です。しかし、本気で社会を良くしようと足掻いている企業にとっては、「包み紙の豪華さ」に関係なく、その「中身」で正当に評価される、極めてクリーンな時代の始まりでもあります。

電通の赤字を「他山の石」とするか、それとも「古いOSを捨てるきっかけ」とするか。 今、すべての広報と経営者に、その「誠実さ」が問われています。