Up Cycle Circular’s diary

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「ハンドルを握らない未来」:物流業界が自動運転に賭ける理由

 前回の連載で私たちは、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられた**「物流の2024年問題」が、日本のサプライチェーンにもたらした深刻な影響と、荷主への「2026年問題」**という法的強制力について議論しました。

【物流の危機をチャンスに変える】「運べない」時代の到来 ―― 2024年問題の衝撃と現実 - Up Cycle Circular’s diary

 この一連の危機は、長年の非効率な商慣習のツケが、ついに**「運べない」**という形で顕在化したことを意味します。しかし、たとえ荷主がいくら効率化を図っても、**ドライバーという「人」**に依存する限り、労働人口の減少という根本的な問題は解決しません。

 そこで今、物流業界と政府が、この危機を脱するための究極のソリューションとして、その実現に全力を注いでいるのが、「自動運転配送」です。

 

 

🤖 レベル4が迫る衝撃:「人間レス」配送の現実味

 自動運転技術には、その介入度合いに応じて「レベル0」から「レベル5」まで分類がありますが、物流業界が目指すのは、特定条件下でシステムが運転操作をすべて担う**「レベル4」、そして最終的にはあらゆる条件下でシステムが運転する「レベル5」**です。

自動物流道路、時速80キロ 国交省方針、東京―大阪30年代 | NEWSjp

 これは、単にドライバーの運転を補助する技術(レベル2)とは一線を画します。レベル4は、特定区間や特定地域において、ドライバーが一切搭乗しない「人間レス」配送を実現し、輸送能力不足を根本的に解決する可能性を秘めています。

💰 物流コストの構造を根本から変えるポテンシャル

自動運転がもたらす変化は、人手不足の解消だけではありません。それは、ウォルマートEDLP戦略(=Everyday Low Price: 特売(セール)をせず、年間を通して商品を常に低価格で提供する価格戦略)にも匹敵する、物流コスト構造の根本的な変革です。

 現在、トラック輸送のコストに占める人件費の割合は非常に大きいです。これが自動運転に置き換わることで、輸送コストの大部分が燃料費、車両費、システム維持費へと変化します。

  • コストダウンの可能性: ドライバーが搭乗しないことで、人件費が削減され、最終的に輸送コストの大幅な平準化・低減につながります。
  • 効率の最大化: AIが常に最適なルート、最適な速度で運行するため、燃費効率が向上し、無駄な運行(アイドルタイム)が削減されます。

 自動運転は、**「ムダの排除と生産性向上が付加価値である」**という哲学を、技術によって最高レベルで実現する手段なのです。

 

 

🛣️ 自動運転の「二つの戦場」:幹線とラストワンマイル

 自動運転の実現は、大きく分けて二つの戦場で進んでいます。それぞれ、課題と実用化のロードマップが異なります。

  1. 幹線輸送(高速道路・大型トラック):
    • 課題が比較的単純な高速道路での走行に焦点を当てており、長距離・長時間の運行が必要な輸送能力不足への即効薬として期待されています。
  2. ラストワンマイル(公道・配送ロボット/ドローン):
    • 配送ロボットやドローンが、複雑な市街地の公道や狭いエリアでの配送を担う試みです。人手不足が深刻な地域や、ECの小口配送需要の増加に対応する狙いがあります。

(写真:アマゾン)

 次回は、この二つの戦場、特に**技術的・法的な「壁」**がどこにあるのかを深掘りし、自動運転が直面する具体的な課題と、それを乗り越えるためのロードマップを詳しく分析していきます。