春闘集中回答日だった13日、大手企業を中心に満額回答が相次ぎ、賃上げムードいっぱいだったようです。
トヨタ自動車は労働組合に満額回答し、また労使の主要テーマであった生産性の過度な追求をやめる現場の「余力作り」施策も打ち出したといいます。
トヨタ、「余力作り」へ大幅賃上げ 生産性追求も見直し - 日本経済新聞
グループ内で相次いだ不正に対する対策でもあるようです。報酬と働く環境の両面で従業員に報い、製造業で課題となっている人手不足や採用難などにも対応するといいます。
日本製鉄は労働組合要求の月3万円を上回る月3万5000円の賃上げを実施するそうです。定期昇給などを含めた賃上げ率は14.2%になるといいます。
春闘 日本製鉄 組合の要求額上回る月額3万5000円の賃上げ回答 | NHK | 春闘
今回の賃上げで、日本製鉄の処遇水準は国内の製造業のトップクラスになりそうだといいます。「従業員には一流の水準にふさわしい一流の実力をつけて、生産性向上などに最大限発揮することを強く望んでいる」と経営幹部は述べたそうです。
長年続けた構造改革が実を結び、その成果でもあるのでしょうか。それに報い、もう一段高みを目指して欲しいということのようにも受け取れます。
橋下社長の強引さが目立ち、どうなのかと疑い目で見ていましたが、トップクラスの賃上げができるまでに体力が回復し、きちんと従業員に報いることができるようになったのであれば、その改革は成功だったといっていいのでしょう。
日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新しました。期待先行の株高といわれ、投資家は企業の改革に期待を寄せているようです。東京証券取引所も23年3月に上場企業にPBR(株価純資産倍率)1倍超への改善を要請したこともその背景にあるようです。
1倍超の企業は、不断の事業改革や投資家への訴求が奏功し、株価を上げ、1倍未満の企業は、市場変化への対応が遅く構造改革が先送りとなっている傾向があるといいます。
東証のPBR改善要請から1年 1倍割れと突破で経営者の評価二分:日経ビジネス電子版
これからはPBR1倍が、経営者の新たな評価軸となっていくこともあるのかもしれないといいます。国内運用大手の三菱UFJアセットマネジメントは、ROE(自己資本利益率)が過去3期連続で8%を下回り、PBRが1倍未満の企業に対し、株主総会で社長などの代表取締役の再任に反対するなどして、株価を意識した経営を要請するといいます。こうした動きがさらに広がれば、上場企業の経営改革が一段と進む可能性があるといいます。
また、構造改革に伴う雇用の流動化し始めているそうです。持続的な賃上げが求められる中、企業は事業収益に合わせて雇用人員を適正化する動きがみられ、資生堂など大手企業が大規模な早期退職に動いているといいます。
業種における利益トップ企業が入れ替わっているそうです。2024年3月期の予想純利益を5年前と比べると、電機や食品など半数の16業種で首位が交代する見通しといいます。
利益トップ企業半数交代 32業種集計、値上げ・改革効果 - 日本経済新聞
インフレなど経営環境が変わるなか、値上げを浸透させた企業や事業構造改革を進めた企業が順位を上げている。(出所:日本経済新聞)
不断の構造改革があって企業経営の健全性が保たれ、それによって経済全体も健全に、そして持続的に成長していくのではないでしょうか。今あるこの動きを継続できるようなっていけば、持続的な賃上げも実現でき、また株価もまた持続的に上昇していくことになっていきそうな気がします。こうして社会全体にも余裕が生まれていくようになれば、新しいことも萌芽することもあるのかもしれません。
「参考文書」
春闘満額回答相次ぐ、トヨタは最高水準 全体の賃上げ率4%超えか | ロイター
日本製鉄、賃上げ率14% 要求上回る3万5000円で回答 - 日本経済新聞
「全員が勘違いしていた」 日本製鉄・橋本社長が覚えた違和感:日経ビジネス電子版
「いずれ我々を苦しめる」 日本製鉄の次期社長が恐れていた綻び:日経ビジネス電子版
運用大手2社、PBR1倍割れ企業の「社長」再任に反対 - 日本経済新聞