Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【WBCの余韻】人間の魅力、侍ジャパンにみる日本復活の道筋

 

 薄々は気づいていたけれども、できれば認めたくないものもあるものです。国の衰退を、この1年で意識せざるを得なくなりました。

エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ:日経ビジネス電子版

 まだ間に合うのかもしれないと思っていたのですが、もう間に合いそうにもないと感じることが多くなっています。

奇跡

 そんな中での、日本がWBCで、並み居る強敵を倒して、優勝したことが奇跡のように見えます。

主役の大谷翔平と黒子のダルビッシュ有、結束導いた両雄 WBC「侍ジャパン」:時事ドットコム

「みんなが仲良くし、一つになりたい。上から目線ではなく、対等の立場で会話したいし、それでお互いを高められたらいい」。そんなダルビッシュの願いと言動が実を結び、チームに一体感が生じた。(出所:JIJI.com)

 眩い個性とチームワーク、リーダーシップと人柄、それらがあっての偉業のように感じました。

 これまでのアプローチを変え、価値観を見直す時がやってきてはいないでしょうか。

 カリスマに盲目的につき従うのではなく、それぞれが個性を活かしながらチームが一丸になって行動することの方が、遥かに価値があるのでしょう。

人々魅了する人間力

 大谷選手やダルビッシュ選手を見ていると、素質によるところもあるのでしょうが、それより努力によるところが大きいように思えてなりません。

 その努力は野球の技量の向上に向けるだけではなく、人間力を高めることにおいても同様に使われていそうです。

 もしかして彼らは、人間力が先天的なものではなく、後天的なものであることを知っているのではないでしょうか。

人間が他者に接すると相手の言葉や哲学に心を動かされて、すごく感化されることがある。それが共感だと思います。豊かな教養を持つ人たちに囲まれる環境をつくると、それぞれの人の生き方や考え方に必然的に共鳴する部分がきっとある。(出所:日経ビジネス

 今回の侍ジャパンのように、人が思わぬ力を発揮するのは、その周りに存在する立派な人物に感化された時なのかもしれません。それが大谷選手やダルビッシュ選手だったということなのでしょう。

これからの学び

 これからの学びは、従来のようにビジネススクールでエグゼクティブプログラムの講義を受けるのではなく、侍ジャパンのようにチームメンバーが互いに切磋琢磨し、個人においても人間力を高める努力が欠かせないのかもしれません。

「善い人間の在り方如何について論ずるのはもういい加減で切り上げて、善い人間になったらどうだ」(出所:日経ビジネス

 この言葉は、1800年以上も前に書かれたローマ皇帝マルクス・アウレリウスの『自省録』の一節だといいます。

 そうなのかもしれません。実際、大谷選手やダルビッシュ選手はWBCで大活躍し、さらに優勝という栄光を手に入れました。

 人間力を高めた善い人が、今、日本社会においても求められているということなのかもしれません。

 

「参考文書」

ゲイツ、バフェット… 天才は読書から知識よりも洞察力を得ている:日経ビジネス電子版

 

【AIの利用価値】ChatGPTでコーチング、1on1ミーティングは不要になるのか

 

 LLM 大規模言語モデル「GPT-4」ベースのチャットAIを搭載し、新しくなったマイクロソフト検索エンジン「Bing」のレビュー版登録者数が全世界で100万人を超えたそうです。うち10万人以上が日本人で、1人当たりの検索数は日本がトップだったといいます。これまでに日本からは200万件以上チャットでの質問が送られたそうです。

日本人「新しいBing」めっちゃ使う 日本MSが利用動向を公開 1人当たりの検索数で世界トップ - ITmedia NEWS

 新しい「Bing」は、ChatGPTと似たイメージで、チャットで質問しながら知りたい内容が検索できるといいますが、どんな質問が多かったのか気になります。

問われる問題意識

 近頃では、「ChatGPT」や「LLM」の話題に事欠きません。

「知りたいことの要約を示せば、生成系AIのBingは経済評論や解説を書くことができます」と、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏はいいます。

AIに経済評論を書かせてみたら、実にまともなものが出来た……もはや新聞・雑誌は存在意義を失ったのか?(野口 悠紀雄) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

重要なのは、「何を書いてほしいのか」という問題意識だけになりました。(出所:現代ビジネス)

 また、野口氏は「新聞やウェブなどに出ている経済評論の多くが、存在意義を失った」ともいいます。

 こうした意見によって、特定の職業が不要になっていくと語られるのでしょうが、ほんとうにそうなるのでしょうか。

 新聞やメディアは何のために存在し、何を「業」にしているのでしょうか。

「業」とは報いのもととなるすべての行いのことをいいます。

 いずれにせよ、野口氏ではないですが、これまで有益とされた専門知識はAIで代用され、これからはAIに問いを立てる能力が問われるのかもしれません。

コーチン

 なぜこうも日本では注目が集まるのでしょうか。たんに日本人が新しいものが好きだからなのでしょうか。

「ChatGPT」によるコーチングの有用性をとある経営コラムニストが説いています。

上司の前では素直になれない。心が開けなくても、意外と「ChatGPT」の前ではオープンになることは可能だ。時と場所も選ばなくていい。 (出所:Yahoo!ニュース)

「1on1ミーティング」で、上司にリクエストできないことも、AIなら色々注文を付けることもできるといいます。

部下に「ChatGPT」を勧めたらとんでもない事態に! AIの普及で「上司要らず」の世界が加速する?(横山信弘) - 個人 - Yahoo!ニュース

 記事は、 「ChatGPT」が質問するようにして、そのAIからの質問を通して、自己分析をすることで、自分の役割や目標を明確にして、仕事で成果を出すようになるといいます。

 こうした事態に陥らないために、上司も「ChatGPT」に、「部下が心を開くために、私はどうしたらいいのか。そのアイデアを発見できるための、効果的な質問を私に1つずつしてください」と頼めばいいといいます。

人と人との関わり

 米国では、従業員のエンゲージメントについての意識調査をしても、そこから成果を出すことができない企業が多いそうです。実に78%の企業がこうした事態に陥っているといいます。

従業員調査の悪い結果に管理職が感謝すべき理由 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

「調査で示されたデータを無視したり、否定したり、軽視したりする組織があまりに多い」と指摘、こうした調査で低いスコアが出ることは、その会社や部署が改善できる部分についての貴重な情報であり、管理職はこれに感謝すべきといいます。

ネガティブなフィードバックにも耳を傾け受け入れるリーダーは、信頼でき、話しやすく、適切に反応をしてくれる人として認識される。これにより信頼が深まり、最終的に従業員エンゲージメントが改善する。(出所:Forbes)

 上司の心構え次第ということなのでしょうか。部下にあれこれと要求する前に、まずは上司自身が自分を正しく知るべきなのかもしれません。

AIの利用価値

 何から何までAIに頼らなくてもいいのではないでしょうし、過剰に脅威に感じる必要はないのかもしれません。聞きたいことを質問すれば、それなりの答えをAIは瞬時に用意してくれるのでしょう。

 しかし、それを活かして行いをするのは人であり、その行動に付加価値があれば、それが「業」となり、「報い」となって自分の手元に帰ってくるのでしょう。

 その報いとは、やりがいや満足という精神面だけでなく、金銭という報酬でもあるのでしょう。

 

AIという技術は、決して、人間を不要にする技術でもなく、人間を支配下に置く技術でもない。それは、人間が最も高度な能力を発揮する舞台を支える技術にほかならない。

このAI技術もまた、「人間の意識を進化させるアクセラレータ」であることを、われわれは、忘れるべきではないだろう。(出所:東洋経済オンライン)

 

「参考文書」

AIに仕事を奪われる人・奪われない人の決定的差 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

ChatGPTで個人情報漏えい OpenAIが原因と対策を説明 - ITmedia NEWS

 

【合成燃料 e-fuel】欧州のEVシフトに転機か、エンジン車の新車販売条件付きで継続へ

 

 二酸化炭素と水素から作られる合成燃料「e-fuel(イーフューエル)」に注目があつまるようになるのでしょうか。

 EU欧州委員会が、「e-fuel」を利用する場合に限り、2035年以降も内燃機関を搭載した新車の販売を認めることを、独政府と合意したといいます。

EU、エンジン車容認へ 合成燃料に限定、独と合意:時事ドットコム

 EUは当初、全てのエンジン車を禁止する方針でしたが、反対していた自動車大国ドイツとの対立を解消するのが狙いといいます。

「e-fuel」の生産を始めた独ポルシェ

 独ポルシェアが南米チリに、合成燃料プラントの建設を始め、昨年末にこのプラントが稼働を始めました。

チリで合成燃料の製造工場が稼働開始、ドイツのポルシェやシーメンスが参画(チリ、ドイツ) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

 ポルシェはこれまでに合成燃料に1億ドルを超える投資を行い、この新しいプラントでは2023年に約13万リットルの「e-fuel」を製造し、2025年までに約5,500万リットル、その約2年後には約5億5,000万リットルまで引き上げていくと発表していました。

(画像:ポルシェ)

 記事によれば、合成燃料は当面、モータースポーツや試乗施設などのパイロットプロジェクトで利用するといいます。

dsupplying.hatenablog.com

 遠くない将来EUのEV政策が見直されることもあるのではないかと思っていましたが、やはりとの印象です。

 今後もEVがメインストリームであるのかもしれませんが、今回のEUの決定はEVシフトに影響するのでしょうか。

気になるホンダ、F1への復帰はあるのか

 自動車レースの最高峰「F1」も、2030年のカーボンニュートラルの目標を掲げ、2026年からは、次世代パワーユニットを投入しそれと同時に、使用する燃料を100%持続可能燃料にするといいます。

 F1から撤退したホンダが、2026年からのF1パワーユニット製造者登録を済ませているといいます。

 そのホンダは国内勢にあっては早くから「e-fuel」を研究していました。

空気と水さえあれば、ガソリンと同じような燃料が作れる……ホンダF1で加速する、未来への技術”カーボンニュートラル燃料”の開発

 再参戦を視野に入れてのことなのでしょうか。ただ実際に参戦するかどうかはまだわからないといいます。

 一方で、独ポルシェや米フォードなど欧米の自動車メーカがこのF1の次世代パワーユニットの開発でしのぎを削っているそうです。現在のF1のエンジンは一般市販車とは仕様は異なりますが、ハイブリッドです。

dsupplying.hatenablog.com

EVシフト

 EVシフトの今後が気になります。最近の紙面論調はEVシフトばかりでしたが、専門家たちの見立てにも変化はあるのでしょうか。

EVシフト、日本は出遅れ? 「後出しジャンケンでは間に合わない」-識者に聞く【news深掘り】:時事ドットコム

「EVシフト」、EVがエンジン車にとって変わっていくというストーリーはビジネスとしては興味をかき立てられ、そこにさらなる成長との期待の夢が膨らむのかもしれません。

 ただそれが現実的なことなのかというと疑問符がつきます。また、それがほんとうに地球と人々にとって優しいのかということにも疑問があります。

 JETROによれば、ポルシェの役員は「ポルシェは車両の電動化と同時に、補完的技術として合成燃料にも取り組む」と語り、また、ポルシェを傘下に収めるVWグループのCEOは、既存の内燃機関搭載車や船舶・航空輸送などを考慮すると、「合成燃料が一定の役割を担う可能性もある」とし、「VWグループではポルシェを通じて合成燃料の開発を続ける」とコメントしているといいます。

 一足飛びのEVシフトはないのかもしれません。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

欧州委、合成燃料利用なら内燃機関の新車販売容認か | ロイター

F1復帰…梯子を外されたホンダの行く先…長期関与の欠如が生んだ”レッドブル・フォード” | Formula1-Data / F1情報・ニュース速報解説

「EVシフト」幻想を疑え、欧州や中国すらHEVを認めている現実 | 日経クロステック(xTECH)

 

現実社会との大きなギャップ、眩いほどの感動的な物語になりそうな「侍ジャパン」

 

 WBCで金メダルを獲得した栗山監督が率いた侍ジャパンが凱旋しました。

 数々の感動的なエピソードが報じられています。

【WBC】ヌートバー独占手記「日本人としての誇り」栗山監督の手紙と大谷翔平に学んだ事 - WBC2023 : 日刊スポーツ

 美しい物語があっての世界一だったのかと思ってしまいます。

 こうした雰囲気にいつまでも包まれれば、明るくて健全な社会になっていきそうな気がします。しかし、現実は真逆なのかもしれません。

治安の悪化、増加に転じた犯罪の認知件数

 回転すしなど外食店での迷惑行為が横行するようになり、ここには様々な「悪意」が凝縮されているといいます。

スシロー「ペロペロ事件」が映し出す SNSで反転する正義感:日経ビジネス電子版

 記事は、SNSがコミュニケーションの在り方を多様化させた半面、今回の事件のように悪意の「増幅装置」として機能していると指摘します。

 また、新型コロナウイルス禍の中で問題となった「持続化給付金」の不正受給に言及し、手続きの簡素化が不正を招いたとし、利便性向上と悪意の露見しやすさがトレードオフの関係になったといいます。

 こうしたことが続いてのことか、近年は治安の悪化を感じている人が増えているとの結果も出ているといいます。

 現実、減少傾向にあった日本の刑法犯の認知件数が2022年、20年ぶりの増加に転じたそうです。

悪、なぜ人は犯罪に手を染めるのか

 芥川賞作家の川上未映子さんの最新長篇小説『黄色い家』が話題を呼んでいるそうです。

 生まれた環境ゆえに苦難が絶えず、生きてゆくために犯罪に手を染める少女たちが描かれているそうです。

川上未映子の新境地『黄色い家』インタビュー 「人間のどうしようもないエネルギーを物語にしたかった」|Real Sound|リアルサウンド ブック

社会的な問題、顔が見えない犯罪、連帯の暗部とか、切り口みたいなのってたくさんあると思うけど、でも、それよりも、金、家、犯罪、それらが絡みあったときのカーニバル的な祝祭感、そういう、人間のどうしようもないエネルギーを物語にしたかったんだ (出所:リアルサウンド ブック

 主人公の花が陥っていく《悪》を書きながらも、私は自分が世界に対してどういう姿勢でいればいいか、今なお定まっていませんと、川上さんはいいます。

川上未映子×信田さよ子「親から大切にされた経験がないと、他人の言動が好意か攻撃か、見分けがつかない。親からの謝罪を期待するのは〈祈り〉のようなもの」 話題作『黄色い家』が問いかけるもの <後編>|話題|婦人公論.jp

「ただ言えることは、人が苦しんだり、痛がったりすることはどうにかして世の中から取り除いていきたい。それが、小説を書くことと読むことと、どう呼応するのか。考えている途中です」とも語っています。

カード詐欺、暴力団対策法の制定と半グレの登場、ネット社会、顔が見えない匿名性、核家族化――。実際、90年代は、今、問題になっていることがあらわれ始めた時期なんです。(出所:婦人公論

 物語はそんな90年代を起点にして始まるといいます。

新聞記事からは、事件の起こった時と場所とか、だいたいの概要しかわからないですよね。それが記事の役割だから。でも、事件の裏には、そこには現れてこない事情があります。その個別性について考えたり、想像したりするのが、文学や映画の仕事のひとつだと思っているんです。 (出所:Vogue Japan)

こうした小説を通して、現代を知るのもいいのかもしれません。少なくとも自分にはこうしたアプローチが欠け、見えていない世界があることに気づきます。

GPT-4が考える善悪とか

 一方で、文学とは別に気になる最近のテーマ。

 こちらも時間を作りながら、考えてみたいところです。

AIが勝手に議論を深めてくれる弁証法エンジンの構築|深津 貴之 (fladdict)|note

侍ジャパン」の眩いほどの感動の物語が美し過ぎて、現実のギャップをちょっと考えてみたくなりました。 

 

「参考文書」

作家・川上未映子の死生観と「お金」への思い──「お金は生死のルールを超越していると見せかける」 | Vogue Japan

 

「GPT-4」でなくなりそうな職業、なくならない仕事

 

大規模言語モデル(LLM)の「GPT-4」を手掛ける米OpenAIが大学の研究者らとともに、GPTモデルと関連技術が米国の労働市場に与える潜在的な影響を調査し、その結果を公表したといいます。

GPT-4が労働市場に与える影響と各職種のリスク評価──OpenAIの研究者が論文発表 - ITmedia NEWS

 記事によれば、ほぼすべての職種に影響するが、特に現在高収入な職種のリスクが高いとしているそうです。プログラミングとテキスト執筆のスキルはLLMの影響を受けやすく、科学的、批判的思考スキルを必要とする職業は影響を受けにくいことが示されたといいます。

数学者、ジャーナリスト、翻訳者、作家、Webデザイナー、会計士などは影響を受けやすく、グラフィックデザイナー、SEO担当者、財務管理者などは影響を受けにくい。(出所:ITmedia NEWS)

 実際、この先にどんな影響が現れるかは興味津々です。

仕事とは

仕事って、あらかじめセットになった部品を組み立てるようなものじゃなくて、想定外の要素があれば取り込みながら創造していくものです」と、糸井重里氏が語っています。

「言葉にしない」ことの意味 分からないことを一緒に考える経営 【その2】「近いんだけど、ちょっと違うんだな」 - Executive Foresight Online:日立

「思考停止したほうが仕事の効率はよくなる」とも糸井さんはいいます。

いろいろな会社を見ていると、仕事内容を人月と納期と予算に置き換えて把握して、それぞれが見込み通りにいけば完成する、という仕事の仕方をしているところが多い。だから目的を効率よく達成するのは上手なんだけれど、目的を外れて考えることや、言葉や数字にできないものから何かを生み出すということがないんですよね。(出所:日立グループ

 さらに、「言葉や数字で目的を明示すると、その途端、自分はそれを遂行するための単なる労働力になってしまう」といい、「それはつまんないでしょう」といいます。

 確かにそういう見方もあるのかもしれませんが、逆に、みなが納得できる事業計画を想像力を駆使して作成し、いざ実行するときは、糸井さん流にいえば思考停止させて効率化させ、それによって生れた時間を次の創造や学びに向けるのもいいのではないかと思ってしまいます。効率化とAIは相性が良さそうです。

コンサル

「私は、チームの皆さんにぜひ、「豊かな人間」として成長し、充実した人生を送ってもらいたいと思っています」と、大手コンサルファームのPwC Japanグループのサステナビリティ部門を統括する磯貝友紀氏がそう語っています。

PwC 「よりよく生きる」ための道を示す、60回読んだ小説 | 日経BOOKプラス

私たちは、多くの時間を仕事に使っています。仕事に意味を見いだせなければ、人生の大半を無駄にしているという気持ちになってしまうでしょう。そう考えると「仕事」と「個の豊かさ」に断絶があってはいけないと思います。(出所:日経BOOKプラス)

 そうした思考に陥ると「やらされ感満載」の仕事になってしまうといいます。

 みながもっともっと人間として豊かに育っていくことが、みなの人生にとって、またそれが会社の健全な成長にとっても重要なことと、磯貝氏は信じているといいます。

幸福と仕事

 磯貝氏はアリストテレスの「ニコマコス倫理学」で気づきを得て、こうした考えに至ったといいます。

「人生の目的は幸福に生きること」と説いています。そして「幸福とはよく生きることである」「よく生きることは、卓越性を生きること」だとも言っています。卓越性とは自分の能力や才能を最大限に発揮し、社会や周囲に還元していく生き方です。(出所:日経BOOKプラス)

 しかし、幸福を感じるの人であって、機械ではありません。ました「GPT-4」ということはないのでしょう。他者や社会に自身の能力を活かしてこそ幸福があるというなら、AIはツールでしかありえません。

「GPT-4」などを活用することが効率化が画期的に進み、人手不足を解消することがあるのかもしれません。それによってある職業の価値が変わることはありそうです。

 しかし、仕事自体がなくなることはなさそうです。ただ仕事の中身は変えなければならなくなるのかもしれません。それで誰かの役に立つのであれば、いいのではないでしょうか。そうしなければならないということでもありそうです。そのとき、自身の想像力が役立つときでもあるのでしょう。

 

【活用すべき森林】温暖化の危機を訴えるIPCC統合報告書、後退する国の対応、増える積極的な企業

 

 国連のIPCC 気候変動に関する政府間パネルが9年ぶりに第6次の統合報告書を公表し、温室効果ガスの排出をこのまま継続すると「短期のうちに世界の平均気温の上昇は1.5度に達することが推定される」と指摘したといいます。

IPCC報告 “短期に気温上昇1.5度に到達 大幅な排出削減策を” | NHK | 脱炭素社会への動き

 温暖化を原因とする異常気象により、海面上昇や洪水、熱波、干ばつなどが広範囲に拡大しているといいます。こうした異常気象による被害を減らす「適応策」も拡大しているが、既に適応の限界に達している地域もあるそうです。

「持続可能な未来を確保する機会の窓は急速に閉じつつある」と統合報告書は指摘、「今後10年間の選択と行動が何千年にわたり影響を与える」とし、排出削減や適応策を加速させることの必要性を強調しているといいます。

 記事によれば、西村環境相は「温暖化を1.5度に抑えるには、日本を含めた世界全体の排出量を大幅に削減する必要がある。来月のG7=主要7か国の気候・エネルギー・環境大臣会合では議長国として、世界全体の脱炭素化に向けて国際社会をリードしていきたい」というコメントを出したそうです。

脱炭素、日本のG7共同声明案に反発強まる

 一方で、4月15-16日に札幌で開催されるG7 主要7カ国の気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明のための議論が続いているといいます。

 しかし、議長国 日本の提案する共同声明案に各国が反発を強めているそうです。

脱炭素で踏み込み足りず、日本の声明案に欧米難色-4月に閣僚会合 - Bloomberg

日本は、液化天然ガスLNG)への投資や、発電用化石燃料の効率利用を支援する技術の普及を訴えるが、脱炭素を巡る踏み込みが足りないとの声が上がる。(出所:ブルームバーグ

 記事によれば、大臣会合に向けて修正される見込みといいます。

 首相は先日のドイツのショルツ首相との会談後の共同会見で、「脱炭素化を進めつつエネルギー安全保障を確かなものするには、各国が自国の状況に応じて現実的な道を追求することが重要」と述べたそうです。

 価値観を共有する国々の協調を謳いながら、脱炭素となると協調できなくなることが不思議なりません。

宝の山、日本の国土を7割を覆う森林

「国産林」を十二分に活用すれば、「低炭素社会」は実現できると、化学メーカ大手のダイセル社長の小河氏はいいます。

【提言】大量生産社会は「森を溶かす」ことで終わりを告げる

国産林を余すことなく活用すれば、日本が「再生資源大国」に生まれ変わる可能性がある。石油などのエネルギー資源に乏しい日本にとって、森林が資源になればまさに「宝の山」です。(出所:NEWSPICKS)

バイオマスバリューチェーン構想」という仮説を推進するため、ダイセルが積極的に発信しています。

 木材の価値を高めることで林業を活性化させ、健康な森を再生し、土砂災害を抑制し、腐葉土による栄養価の高い水が河川や海に流れ込んで豊かな生態系を取り戻すことができるといいます。その結果、水産業や農業にまで好循環を生み、地域産業も活性化させる。そんな未来像を描いています。

 この仮説のコア技術は、京都大学、金沢大学との共同研究により進められている、常温で木材を丸ごと溶かす穏和溶解技術といいます。これにより環境負荷をかけない省エネルギーで木材を液状にし、機能性材料の原料とすることができるそうです。

 また、農業や水産業から出る廃棄物に応用でき、キャベツの芯やたまねぎの外皮、水産業から出るカニの甲羅やエビの殻も原料にできる可能性があるといいます。こうした廃棄物を原料に、ナノファイバーや糸といった化学製品を作れるといいます。

 こうした素材を活用すれば、一次産業の方が住む地域に、新たな特産品が生まれるかもしれません。農業や水産業の事業者も廃棄物を売ることで収入が増える。つまり地域全体のキャッシュフローが上がります。(出所:NEWSPICKS)

 多くの企業が気候変動に関心を持ち、脱炭素社会の実現に貢献しようとしているようです。それなのに、政府はまた既得権益を優先させようとしていないでしょうか。このままでいいのでしょうか。

 

「参考文書」

温室効果ガス、2035年までに6割削減が必要 国連IPCC報告書 | 毎日新聞

【PR】ダイセル小河社長が語る、循環型社会の新基盤:日経ビジネス電子版

 

日本企業が老いた証か、PBR1倍割れ多発

 

 投資家の成長期待を示すPBR 株価純資産倍率で、伊藤忠商事が総合商社トップを快走しているそうです。

伊藤忠商事・石井敬太社長「ゴールの風景」を仲間とみる - 日本経済新聞

「PBR (=Price Book-value Ratio)」、株価が割安か割高かを判断するための指標とも言われます。

 現在の株価が企業の資産価値(解散価値)の何倍になっているのかを表し、PBRが1倍を切ると、企業の解散価値を下回っているということになり、市場で評価されていないということになるといいます。

PBR1倍割れ

 日本企業のPBRは低く、TOPIX構成銘柄においては「PBR1倍割れ」が半数以上を占めているといいます。

 その要因は、企業の内部留保が大きいことの他、資本を効率的に使って利益をあげることができていない点があげられるそうです。

バブル?ブーム?日本企業のPBRが注目されるワケ【経済コラム】 | NHK | コラム 株・円相場

 こうした現状を鑑みてのことか、東京証券取引所は「継続的にPBRが1倍を割れている会社には、改善に向けた方針や具体的な取り組み、その進捗状況などを開示することを強く要請する」という方針を掲げたといいます。

 これに呼応するように企業も動き出し、株価上昇となり、「低PBRバブルだ」という声も聞かれるほどであったといいます。

 記事によれば、シチズン時計は自社株買いを行うと発表し、また、「事業の成長や合理化のための投資も続けていく」と説明したといいます。これを受けて株価は大きく上昇し、発表前に0.73倍だったPBRは、発表の翌週には1倍を超えたそうです。

個人も会社も老いる

 ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営するコピーライターの糸井重里氏が、かつては職人や研究者に近い価値観で、いってみれば「包丁一本で勝負する板前さん」のような仕事をしていたといいます。

若い頃はそれでやっていけると思っていた。

でもそのうちに、板前さんの運命を左右するのは板前さん自身じゃないことに気づくわけです。(略)プレゼンで落ちる回数が段々と増えてきたんですよ。

それはやっぱり、世の中の価値判断が僕のそれとは違う方向に行っているということです。だから板前さんとして相対的に老いていくことは、最初から目に見えていたわけです。(出所:日立グループ

 糸井さんの言葉ではないですが、日本企業も老いて取り残されているのに、それに気づかないままだったということでしょうか。

 老いて「あいつはもうダメだけど、義理があるから店に通ってんだよ」みたいに言われるようになるのも嫌だったと糸井さんはいいます。

 本当は要らないのにこれまでの付き合いがあるから、という付き合いをされるのはあまりかっこよくないなと思ったそうです。

 

 

会社とは

 その気づきを得た糸井さんは「包丁一本ではなくチームで仕事をするほうに気持ちが傾いた」そうです。そして、これをきっかけにして会社を作ることになり、「圧倒的にチームプレーのほうがおもしろくなって可能性も感じた」といいます。

「言葉にしない」ことの意味 分からないことを一緒に考える経営 【その1】「一番嫌じゃないものを選ぼう」 - Executive Foresight Online:日立

 また、糸井さんの会社論には、「現実の進行に合わせて古いものを残したり、新しいものを取り入れたり取捨選択していく」というものがあり、それは「一番正しいものを選ぶというより一番嫌じゃないものを選ぶということといいます。

 日本企業がチームプレーができていないとは言う気はありません。むしろそうではなくて、伊藤忠商事のように、一歩先行く外部の企業とスクラムを組んでみるのもいいのかもしれません。互いが自律し、そして共生できるスキームを作っていくべきなのでしょう。

 どんなに優れたリーダーも、継続的な学びとアップデートがないと老いるということなのでしょう。それではサステナブルではありません。それを補うことができるのが多様性あるチームということでしょうか。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

PBR/株価純資産倍率│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券