Up Cycle Circular’s diary

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2024年問題、たかが物流、されど物流、混乱は回避できるか

「2024年問題」、時間外労働に上限規制が4月から課されるようになり、様々な業界で影響を受けるといいます。物流業界においては、輸送力の低下・停滞による納期遅延、賃金が減って人手不足に拍車がかかることが懸念されているそうです。

 対策を積極的に進める企業がある一方で、対応の遅れが目立つところもあるようです。

24年問題、地方物流に試練 コスト増、対応に遅れも―来月から運転手に残業規制:時事ドットコム

「県の農林水産品の競争力がなくなってしまう。輸送コストが上がる」、青森県の宮下知事はそう危機感を示しているといいます。運転手が1日で運べる距離が短くなり、遠隔地ほど輸送日数や人件費の増加につながる恐れがあることを理由にあげているです。

 

 

 一方、秋田では青果輸送関係者の協力が実を結び、ムダ取りが進んで運転手の拘束時間低減につながっているといいます。物流ITベンチャー「Hacobu」との実証実験の成果で、パレット利用の徹底で手作業を減らし、従来は運転手が1人で担っていた集荷と幹線輸送を分離、複数の集荷場所から積み荷を集約するハブ拠点も設けることで達成できたといいます。ただこうした対策で約27%のコスト増となるそうで、価格転嫁できるかが課題だといいます。

モーダルシフト、デジタル化、大企業の事例

 キリンビールの横浜工場では、ドライバーの確保と運送会社の安定的な収入を目的に支払う運賃を値上げ、料金体系も重量、距離などから運賃を決める「個建て制」から重量、距離に関係なく車両単位で運賃を求める「車建て制」に移行するそうです。また長距離輸送の一部を、鉄道や船舶輸送に切り替えるモードるシフトで、トラックの利用台数削減や環境負荷軽減につなげるといいます。

 花王は 「製造と物流の一体化」を目指しデジタル化を進め、製品の入庫から出庫までの完全自動化も実現、トラックの工場内滞在時間の半減に成功したそうです。

トラック滞在時間半減、花王が見据える2024年問題の先 | 日経クロステック(xTECH)

 トラックの工場の入退場を自動化し、トラックが入場したことを認知すると、運ぶべき商品を載せたパレットを倉庫の荷物の受け渡しスペースに自動で搬送、パレットごとトラックに積み込むそうです。荷は前日にパレット上に用意されるといいます。これによって1〜2時間かかった時間が、30分程度に圧縮できたそうです。

 花王秋田県同様物流ITベンチャー「Hacobu」のトラック予約システムを利用しているといいます。

 

 

小売

 スーパーマーケットなど小売では今なお対応策の模索が続いているのでしょうか。「そうてつローゼン」は店舗でのトラックの滞在時間を削減するため、納品時間を調整したり、納品場所を整理整頓するなどしたりしているそうです。デジタル化の活用が十分ではないということなのでしょうか。

運賃値上げ、隔日配送…足元から進める連携 配送員の負担軽減も 物流2024年問題 | カナロコ by 神奈川新聞

 生協パルシステムは、物流センターの配送ルートを見直したり、複数台で回っていたルートを最小限に抑えて一定数のトラック台数を削減、一時的に商品を保管する物流拠点も増やすなどの対応をしているといいます。

建設業界

 建設業界では本業の時間外労働の上限規制の他に資材輸送でも2024年問題を抱えているといいます。建設資材は重く大きく、特に鉄鋼資材は重厚長大なものが多いといいます。また大都市圏の現場は資材を置く場所が少なく、資材製造元から現場までこまめに運送することを強いられていたそうです。

止まらない建設会社の倒産 業界にのしかかる2つの2024年問題:日経ビジネス電子版

 清水建設は中間物流拠点を開設、運送回数と荷待ち時間を大幅に削減し、物流大手のセンコーは、建設資材を物流拠点で一時保管した後、工程に合わせて現場に運送する仕組みを構築するそうです。これまでの商慣行を抜本的に見直すことが求められているといいます。

 

 

 どの業界においても抱える課題に差異はあっても、解決策はおおむね同じ方向に向かっていそう気がします。どの業界にあっても物流はサプライチェーン 供給網の一部であって、それは荷主と運送業者で構成されることは共通なのでしょうから。

 古くから「たかが物流、されど物流」といわれていました。ムダの塊であるにもかかわらずおざなりにされる傾向があったからでしょうから。そんな中、早くから着目し改善を進めてきた企業もあります。「ロジスティクス」という言葉が流行った時期でしょうか。またトータルリードタイムをいかに圧縮するかということで物流を含めて改善を進めた事例もあります。

アマゾンの事例

  アマゾンは今では物流に関しては先駆的な企業になっています。米スーパー大手のウォルマートの物流を徹底に研究していたと聞きます。一見無関係そうなに思えますが、類似事例を分析することで誰もまねできない物流システムを作り出したのでしょうか。

アマゾンのジェフ・ベゾスがウォルマート創業者から盗んだアイデア:日経ビジネス電子版

ウォルマートは自前の物流システムを構築することで、時間だけでなくコストも削減しました。物流コストを低減することで、「仮に同じ商品を同じ売価で売ったとすれば、わが社は他社より1.5~2%も余分に利益が出る計算になる。(出所:日経ビジネス

 

 

 ウォルマートが扱う商品数はとてつもなく膨大です。それらの多くを自社の物流センターから直接補充するという仕組みを構築し、各店舗がコンピュータで商品を発注してから実際に納品されるまでにかかる日数が他社においては5日以上かかるのに対し、ウォルマートは早々に2日を実現したといいます。

 そして今では、ウォルマートとアマゾンは熾烈な物流競争を繰り広げるまでになっています。

 従来からの常識を疑う。それでも過去の良き事例を分析し、まねてさらに改善をかける、それが独創性になって新しいものが生まれるのかもしれません。

 物流の2024年問題も単に物流の問題と考えずに、「物流と商流」として捉え、常識を疑えば、もっともっと改善できる余地がありそうな気がもします。