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【物流の2024年問題】動かない企業、改革という国、送料無料表示の見直しも

 

 労働時間規制の強化に伴いトラック運転手の不足が懸念される「物流の2024年問題」対策の政策パッケージを国が公表したといいます。

 この中で、「送料無料」表示の見直しに取り組む方針を打ち出したそうです。

 運送事業者が輸送コストに見合う適正な運賃を得られる環境を整備するための施策で、一方で、実現には消費者の理解が課題となりそうといいます。

「送料無料」表示見直し 運賃適正化へ、消費者理解が課題:時事ドットコム

政府は「業界と話しながら、どういうやり方が適切か検討する」(国土交通省)としており、具体化はこれからだ。どれだけ強制力のある対策を講じるかも焦点となる。(出所:時事ドットコム

 この他にも、再配達率を現在の12%から、24年度に半減する新たな目標を掲げたそうです。タワーマンションでは1つの荷物を運ぶのに30分かかるケースもあるといいます。コンビニやガソリンスタンドでの受け取り、宅配ボックスの設置を推進していくといいます。

 

 

 また、荷主と運送業者の取引を監視する「トラックGメン(仮称)」を創設し、高速道路の最高速度引き上げも検討するといいます。

宅配の再配達率24年度に半減、送料無料表示も是正 政府 - 日本経済新聞

運転手の待機時間や荷物の積み下ろしなどにかかる時間の削減に取り組むよう義務付ける法整備を進める。改善状況の国への定期的な報告も求め、不十分な場合は勧告や措置命令を出す。(出所:日本経済新聞

 業界をまたぐ課題であるだけに解決に難儀することはわかりますが、国がここまで口を出さなければ、解決することができないのでしょうか。

 国土交通省が、荷主と物流事業者が取り組むべき事項を示した指針を公表したそうです。

物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン(国土交通省)

 モノを扱う企業にとっては、物流は欠かせないものですが、一方でそのコストは常に頭を悩ます課題のひとつのはずです。

 アマゾンは早々と自社物流の構築に乗り出し、そのその効率化を進めてきました。またラストワンマイルの改善にも熱心で、様々なアイデアの実現を図ろうとしていました。日本のアマゾンでも、置き配を始めたり、宅配ボックスの設置を進めるなど様々な施策が実行されています。

 一方、楽天も一時は多額の資金を投じて自前の配送網を整備していましたが、突然この事業を打ち切り、日本郵政グループとの提携にかじを切りました。また、送料無料については、公正取引委員会からの指摘を受けたこともありました。やはり物流は難しい課題なのでしょうか。

 

 

VMI:物流の効率化

 しかし、よくよく調べてみれば、参考となるような事例は多々あるものです。世界最大手のスーパーマーケット米ウォルマートが1980年代、P&Gとの協働でVMI(Vendor Managed Inventory)を始めました。当時は画期的な方法と言われ、ウォルマートが販売状況を改善するため、P&G に在庫データと売上・在庫・価格などの情報を提供し、P&Gは共有された情報から販売予測と在庫管理を行ったそうです。

VMIとは何か?小売業から始まり、サステナブルな物流としても期待|三井倉庫グループ

P&G は共有された情報により販売予測精度を上げることができ、適切な生産計画を作成できました。これにより、効率的な在庫の生産・補充作業が可能になり、コストダウンと販売機会損失の防止を実現しました。(出所:三井倉庫グループ)

 このVMIが応用され、 トラック輸送の効率化に役立ち、CO2排出量の削減、トラックドライバー不足の解消および物流現場における労働負荷の低減にも貢献するケースもあるようです。

 三井倉庫が、キリンホールディングス株式会社と共同でスタートさせたVMI倉庫の活用事例が紹介しています。

物流連が主催する「物流環境大賞」で「物流環境特別賞」を受賞しました|三井倉庫ホールディングス

 三井倉庫によると、この取り組みによって、CO2の排出量は約80%削減でき、また、長距離輸送トラックの台数が約63%減り、ドライバーの運転・拘束時間も約24,000時間減少できるとの削減効果が期待されていたとのことです。

 

 

他人任せ体質

 この物流の2024年問題について「喫緊の課題だ。これに対応するには物流を巡り荷主、物流事業者、消費者の間で長年定着している構造を改革する必要がある」と岸田首相が述べたそうです。

 企業の自主性が足りず、国に依存した方が楽だからとの甘えがあるのでしょうか。それともこうして政府がすぐにちょっかいを出すのが良くないのでしょうか。

 国もマイナカードや新しい施策のための財源問題など多くの課題を抱えているように見えます。まずは国が自ら身を切る構造改革を行ない、コストの最小化を図り、その有用性を示せば、世間の雰囲気が改善し、国を筆頭にして、みなが他人任せにすることがなくなっていきそうな気がします。

 

「参考文書」

即日配達、全国送料無料の功罪 物流業界は変われるか | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

楽天元幹部が重大証言!「楽天エクスプレス」打ち切りとキックバック疑惑の真相 | 倒産のニューノーマル | ダイヤモンド・オンライン

楽天送料無料「出店者に参加を事実上強制」公取委指摘、調査は終了へ:朝日新聞デジタル