利便性ばかりを追求してきたことに変化がおきるのだろうか。メルカリが数日遅い配達を選べば送料を安くする「ゆっくり宅配」に乗り出すという。
メルカリあえて「ゆっくり宅配」 送料安く物流に優しく: 日本経済新聞
「翌日配送」、利便性の代表格だったのだろうか。コロナ渦の影響もあって、EC利用がそれまでに以上に拡大した。一方で、物流業界ではその利便性の追求が非効率を生み出し、それ人手不足が加わることで物流クライシスと言われるまでになっていたという。
国内の営業用トラックの積載率は20年度に4割を切った。早く届けるために荷台が埋まっていなくても走らせるためだ。(出所:日本経済新聞)
DXデジタルトランスフォーメーションによって、物流業界のマッチングなどでトラックの効率的運用を進めても、積載率が向上しない限り、効率的は言えないのだろう。
配送時期を遅らせられれば、荷物が集中した日の分を翌日に移すなど、業務を平準化でき、ゆっくり宅配の荷物で空きスペースを埋められれば必要なトラックの数は減り、環境負荷も引き下げられると、日本経済新聞は指摘する。
驚きのメルカリの荷扱い量
メルカリの利用が急速に伸びているそうだ。コロナ禍の影響なのか、それとも「もったいない」と感じる人が増え、「再利用」することが当たり前になったのか。
それにしても、日本の宅配便取扱数の約1割になり、コンビニ発送の約8割がメルカリの出品物になっていることには驚くしかない。
メルカリは21年10~12月期には国内の月間利用者が2千万人を突破し、5年前の3倍以上になった。アマゾンジャパン(東京・目黒)の取り扱い個数は関係者によると年間約7億個で、メルカリが巨人に迫りつつある。それは同時に、メルカリが日本の宅配網に与える負荷が膨らんでいることも意味する。(出所:日本経済新聞)
こうしたことが背景となって、新たな選択肢をお客様に提供する意義も生まれたという。
常識を変えるときなのか
ECの先駆者アマゾンがプライムサービスを始め、「翌日配送」「送料無料」を打ち出し、そうしたことで、「配達スピードの追求こそが競争力」ということが業界の常識になったのかもしれない。しかし、一方で、「今より数日遅れても良い」と考える人も着実に増えてきているという。
翌日に無料で届くことが常識となれば、それに合わせての生活習慣になる。ただ、ちょっと地球のことを気にして過負荷を避けようと思えば、急がないという選択肢はあってもいいのだろう。ほんとうにその時に必要なもの以外は、もう少し計画的に注文すれば、「翌日」でなくても済む。
利便性を求めた行為も単なる競争力維持のための道具で、結局は部分最適で、全体最適ではなかったということであろうか。全体では非効率となり、生産性を下げ、高コスト体質になっていたのであれば、何ともお粗末な結果ということなのだろう。
コロナ禍が新たな需要を生み、その中で生き残るために競争し、差別化するために少しでも早く届けよう。しかし、気づけば、必要なトラック台数は増え、消費される燃料は増え、地球に過負荷を与えてしまう。とても「サスティナビリティ」とは言い難い、持続不可能な社会になってしまう。まして、ウクライナ危機である。今まで以上に省エネが求められることになっていくのだろう。