前回の記事では、2026年に向けた日本の第一歩として「隊列走行」と、その普及を阻む「価格の壁」について論じました。
【自動運転トラック開発最前線】物流危機は回避できるか?—隊列走行2026年実用化と課題 - Up Cycle Circular’s diary
しかし、ここで一度、自動運転先進国である米国の動きを直視する必要があります。
数年前まで、米国でも「プラトーニング(隊列走行)」は本命視されていました。しかし、Peloton Technologyなどの専門企業が挫折し、現在、Waymo ViaやAuroraといった巨人が心血を注いでいるのは、隊列を組まない**「単独のレベル4(完全無人)」**です。
🇺🇸 米国の先行事例:なぜ「隊列走行」は主役を降りたのか
なぜ彼らは、ステップとしての隊列走行をバイパスし、いきなり単独レベル4を目指したのでしょうか。そこには二つの理由があります。
- 投資対効果(ROI)の限界: 燃費が10%向上しても、システムコストと「後続車に人間を乗せる人件費」が残れば、物流クライシスの根本解決にはならない。
- オペレーションの複雑性: 異なるルートを走るトラックを高速道路上で合流させる「待ち合わせ」のムダが、効率化のメリットを相殺してしまった。
この他にも、**「割り込み車両への対応」「隊列が途切れた場合の再編成の難しさ」「異なるメーカー車両間の通信の標準化」**といった技術的な課題が大きかったといわれています。
米国は、レベル4こそが、唯一の経済的ブレイクスルーであると結論づけたのです。
🧱 隊列走行の先にそびえ立つ「七つの壁」
日本が進める「後続車無人の隊列走行」は、米国が直面した課題への一つの回答ですが、それも通過点に過ぎません。隊列を組まず、単独で公道を走る「究極の無人トラック」を実現するには、依然として以下の**「七つの壁」**が立ちはだかっています。
【技術の壁:AIは人間を超えられるか】
第一の壁「悪天候への対応」: 豪雨、濃霧、降雪。センサーの視界が遮られる状況で、人間以上の判断を維持できるか。
第二の壁「予期せぬイレギュラー」:道路上の落下物や事故、予測不能な一般車の動きに対し、遠隔介入なしで自律的に安全を確保できるか。
第三の壁「システムの冗長性」: 万が一の故障時に、即座に予備系統へ切り替えて「安全に停止」させる多重設計を、いかに低コストで実現するか。
【法制度の壁:責任と監視の革命】
第四の壁「事故責任の所在」: ドライバーがいない事故で、誰が責任を負うのか(メーカー、運行会社、システム開発者)。
第五の壁「遠隔監視の基準」: 一人の監視者が何台の無人トラックを担当できるか。国家レベルの運行管理基準の策定が急務。
【社会の壁:信頼と雇用の転換】
第六の壁「社会受容性」: 隣を「無人の巨大な鉄の塊」が走ることに、一般市民が揺るぎない安心感を持てるか。
第七の壁「雇用のリスキリング」: ドライバーという職能を、遠隔監視やシステム保守という新たな専門職へいかにスムーズに移行させるか。
🏁 隊列走行は「データ」という武器を得るための場
米国が隊列走行を諦めたのは、それがゴールにならないと悟ったからです。 翻って日本にとっての隊列走行は、**「単独レベル4」という本丸を攻略するための、生きたデータと社会の信頼を積み上げるための貴重な「助走期間」**であるべきです。また、目の前にある物流危機を回避する策とすべきです。
2026年に隊列走行が始まるとき、私たちの視線はすでに、その「七つの壁」の向こう側を捉えていなければなりません。
【次回予告】 第3回:【技術の深掘り】いすゞ「2027年事業化」が示す、E2E(エンド・ツー・エンド)の衝撃


