海外の話になってしまうが、先進的なサスティナブルな活動を2つ紹介する。Nikeとプラダ。なぜ、ここまでできてしまうのだろうか。その内容に驚く。
NIKE スポーツの未来を守るために
Nike Reuse-A-Shoe Program
Nikeの「Reuse-A-Shoe」プログラムをご存じだろうか。ナイキが1990年代に始めた独自のプログラムで、不要になったスニーカーなどのシューズを回収、リサイクルする。「Nike Grind 」と呼ばれる高性能な再生材にして、バスケットボールコートからランニングトラックなどのサーフェイス材として再利用している。
日本にも「Nike Grind」で作られたバスケットボールコートがある。ナイキ・ジャパンが代々木公園にバスケットボールコートを寄贈し、そのコートでも「Nike Grind」が使用されている。少し古い記事にこう紹介されていた。
株式会社ナイキジャパンが、2005年2月20日に東京都立代々木公園内に寄贈したオリジナル・バスケットボールコート。
日本国内では数少ない正規サイズのオールコートが2面(北面、南面)配置されている。コートは無料で開放され、誰でも自由に使う事ができ人気を博している。
寄贈されるコートにはナイキが10年以上行ってきた「Reuse-A- Shoe(リユース・ア・シュー)」プログラムによるアスレチック再利用素材が使われている。 (出所:ALLDAYMAG.COM)
1990年代に始まったこのプログラム、もう20年近く続けられていることになる。今も様々な活動を通して、啓蒙、周知に続けているようだ。その事例を2つほど紹介する。
アートとのコラボレーションは圧巻、アートを通して新たな「モノづくり」の形として伝える。
ヴァージル・アブローが仕掛ける次世代への取り組み
ヴァージル・アブローが、シカゴ現代美術館で初の美術館個展「Figures of Speech」を開催し、展覧会と同時に仕掛けられたプロジェクト「Re-Creation Center c/o Virgil Abloh」を美術手帖が紹介する。
舞台はシカゴのNikeLab、アブローがしかけたポップアップだという。このポップアッププロジェクトのテーマは「リサイクル」と「次世代の育成」のふたつ。商品の販売があまり前面に押し出されていない点が特徴となっていると美術手帖は指摘する。
店舗内では、このプログラムの流れがわかるよう、プレゼンテーション用のミニチュアリサイクル施設が設けられている。カウンターで不要になったスニーカーを寄付すると、スニーカーはコンベヤーに乗せられ、リサイクルコンテナに運ばれる。そこに靴が投入されると、コンテナ前面の大型モニターに表示されているリサイクル済みスニーカー数が1つ増える。 (出所:美術手帖)
そして、店舗内のあらゆるところに「Nike Grind」が利用されている。マネキンや床等々。
ヴァージル・アブロー、ファッション、デザイン、アート、建築、音楽と複数の分野にわたって活躍しているという。
シカゴ現代美術館での「Figures of Speech」展に併設されたポップアップには、「政教分離」を意味する「Church & State」という名前が付けられている。
美術館という一種の聖域で、ラグジュアリーブランドの価格帯の商品を売るという、型破りな行為をやってのける自身への批判を見越した皮肉が込められているようだ。
「Re-Creation Center c/o Virgil Abloh」は、その裏返しのようにも見える。世界的ブランドの店舗を、コミュニティに自分の知識を還元する場に変えてしまっている。 (出所:美術手帖)
今回の「Figures of Speech」をはじめとする関連イベントは、シカゴの若者に「モノづくり」の魅力を伝えるために、周到に企画されてきたことがわかると美術手帖はいう。
「利用できるシステムは最大限に活用し、目的を果たそうする彼の強い意志が感じられた」
スニーカーをリサイクルする with Nike Reuse-A-Shoe @ロチェスター大学
米ニューヨークのロチェスター大学は、2009年のアースデイ以来、このナイキの「Nike Reuse-A-Shoe」に参加、大学生、教職員、スタッフにシューズの提供を呼びかけ、また、このプログラムの説明もおこなっているという。
こうした大学との提携は、周知、啓蒙に加えて、「次世代の育成」ということも考慮してのことだろうか。
ゼロカーボンとゼロウェイストを目指すMove to Zero
「MOVE TO ZERO」、ゼロへの移行は、これらの現実への対応ですとナイキはいう。
ゼロイニシアチブへの重要な移行
1. ナイキは、2025年までに、自社で所有施設を100%再生可能エネルギーに切り替える
2. ナイキは、2015年のパリ協定に従い、2030年までにグローバルサプライチェーン全体の炭素排出量を30%削減する
3. ナイキは、靴製造廃棄物の99%を埋め立て処理せず再利用する
4. ナイキは、年間10億本以上のペットボトルを再利用して、新しいジャージ用の糸とシューズ用のアッパーを作成する。
5. Reuse-A-ShoeおよびNikeGrindプログラムは、廃棄物を新製品、遊び場、ランニングトラック、コートに変換していく。
プラダのサスティナビリティへの取り組みは驚愕である。中核、コアのど真ん中をサスティナビリティの対象にしている。
プラダ 「リナイロン(Re-Nylon)」始動
ナイロンは、プラダの歴史を語る上で欠かせない特別な素材だとFashion Pressはいう。なぜなら、プラダは、実用的なナイロンという素材で、新たなラグジュアリーファッションを提案する姿勢をこれまで変わらず貫いてきたのだからという。
そのプラダが再生ナイロン 「エコニール( ECONYL®)」に転換することを目標として掲げたという。
「Re-Nylon」 海洋プラスチックから持続可能なバッグを作る
ECONYL®は、無限にリサイクルできる再生ナイロン糸だとIdeas for Goodは説明する。その原料は、世界各国の埋立地や海から回収されたプラスチックスや、漁網、織物繊維などのゴミであるという。原料がごみであるにもかかわらず、品質に悪影響を与えず、生まれ変わった素材はバージンの素材の品質と変わらないという。
Re-Nylonプロジェクトではこれらのゴミを収集し、選別して洗浄した後、化学的な解重合プロセスにより品質を損なわずにリサイクルした。
そして、リサイクルされた材料をポリマーとスレッド(糸)に再変換したのである。こうしてできたECONYLを1万トン使用することにより、1,120万リットルの石油を節約でき、CO2排出量も5万7100トン削減できるということで、その効果が期待される。 (出所:IDEAS FOR GOOD)
「リナイロン」 歴史を変える新プロジェクト始動
「リナイロン」は、そのプラダの概念を進化させるプロジェクトとなるとFashion Pressはいう。
同プロジェクトでは、2021年末までにプラダのすべてのバージンナイロンを、無限にリサイクルできる再生ナイロン「エコニール(ECONYL)」に転換することを目標として掲げている。
そして、「プラダリナイロン」が、プラダの歴史を書き換える新プロジェクト「リナイロン」のスタートとともに発売されるカプセルコレクションとして誕生した。 (出所:Fashion Press)
プラダはユネスコと提携し、学生を対象にプラスチックスと循環経済「サーキュラーエコノミー」をテーマにした授業を行う活動も展開しているとIdeas for Goodは紹介する。
まとめ
知らないところで、自分たちにとって身近なブランドが、地球環境を気にかけて、サスティナブルな活動を始めている。買い物は、ワクワクして、心も豊かにしてくれる。そして、選択の自由が私たちに付託されている。自分の好きなものを選ぶことは、最高の贅沢なことかもしれない。
偶然の出会いも買い物の楽しみではあるけれど、ちょっと知るだけで、その景色が変わるかもしれない。