Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

循環型経済と産業革命 消費のカタチは変わるのか

 

 気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定「パリ協定」が採択されたのが2015年。2020年以降の地球温暖化対策を定めているという。

 Wikipediaによれば、1997年に採択された京都議定書以来18年ぶりとなる気候変動に関する国際的枠組みであり、気候変動枠組条約に加盟する全196カ国全てが参加する枠組みとしては史上初であるという。排出量削減目標の策定義務化や進捗の調査など一部は法的拘束力があるものの罰則規定は無いという。

 「パリ協定」は、産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑え、平均気温上昇「1.5度未満」を目指している。 

 

 

産業革命から始まった様々な矛盾

 産業革命が起きたのが、18世紀半ばから19世紀。Wikipediaによると、一連の産業の変革と、それにともなう社会構造の変革のことをいう。

産業革命において特に重要な変革とみなされるものには、綿織物の生産過程におけるさまざまな技術革新、製鉄業の成長、そしてなによりも蒸気機関の開発による動力源の刷新が挙げられる。 (出所:Wikipedia

 

 産業革命によって機械工業が成立するようになり、また蒸気機関交通機関への応用によって蒸気船や鉄道が発明されたことにより交通革命が起こったともいう。 

 産業革命は1760年代から1830年代までに及ぶ非常に長くゆるやかな変化であったが、産業革命以前と以後において社会の姿は激変していたという。様々なことが産業革命を起点に始まったということであろうか。

 農民の比率が減少し商工業従事者が激増、工業が成長するとともに都市に多くの労働者が住むようになり、都市化が進み始めた。労働者階級の成立、中流階級が成長した。生産システムは、家内制手工業から工場生産に変わっていく。

 さらに、Wikipediaは、産業革命以前まで安定していた1人あたりのGDP国内総生産)が産業革命以降増加を始めたという。 

 

 

 経済成長を追い求め、大量生産、大量消費、使い捨てが常識として化したのは起点が産業革命だったということであろうか。

 産業革命が起こってから250年以上の時間が経過する。そろそろそうした生産システムや消費スタイルに変化があってもいいのかもしれない。

 エネルギー源が木炭から石炭に変り、電気が実用化された。いつしか発電の燃料は石油に変り、原子力へと移行していった。電気と石油による重化学工業への移行を「第二次産業革命」、原子力エネルギーへの移行を「第三次産業革命」と呼ぶという。

 スリーマイル島チェルノブイリでの原発事故があり、福島の事故を振り返れば、原発の安全性確保の難しさを思い知らされる。そうした歴史を考えれば、新たなエネルギーの時代に移り変わっていくことが自然な流れになるのだろう。 

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地球に変わる惑星はない There is no Planet B.

 核燃料サイクル原子力燃料を再処理、再利用することができるが、安心・安全を考えれば、サスティナブルとはいえそうにない。極めてレアなケースかもしれないが、事故が起こってしまえば、取り返しのつかない甚大な被害を引き起こす。そのレアなケースが幾たびも繰り返されている。

 化石燃料の使用もまた同じことなのかもしれない。温暖化してしまった地球を元の状態にするまでにはとてもつもなく長い時間が必要なことなのだろう。 

 色々な人がサスティナビリティを考えるようになった。

 「資源を生み出す地球は一つしか存在しない。この状態が長く続けばいずれ資源は枯渇し、経済活動はもちろんのこと、生きていくための資源さえも消費し尽くしてしまう恐れがある」、そんな言葉を聞く。

 そうしかもしれないが、それ以前に地球という惑星が住めない星になってしまうかもしれない。産業革命以降の経済成長を見直す時期が来ているのかもしれない。

 

サントリーのサーキュラー・エコノミー 循環型経済

 サントリー新浪剛史代表取締役社長と メディアアーティストの落合陽一氏が10月に対談したという。

 落合氏は、産業革命以前の江戸期の日本を例にして話をする。

昔の日本ではモノを簡単に捨てる文化ではなかった。

年長者から譲り受けたものを大切に使い続けたり、修理したり、いかに長く使えるのかを考えていました。ゴミという概念が今ほどは無かったんじゃないかと

そのような考え方に一度立ち返るというのは、新しい日本を作っていく上でヒントになる気がします (出所:AMP)

 

 新浪社長は「日本の企業における資源の活用に対する考え方は、1990年代で止まっており、世界と比較してとても遅れている」と語り、循環型経済への移行の必要性を説く。

「私にとって循環型経済の本質とは、地球からのメッセージそのものです」といい、「人間の便利を追求していくために、地球を壊さないで欲しい、そういったメッセージをしっかりと受け取って、循環型経済に変えていくという話じゃないかな」と述べ、プラスチックスについての話をする。

プラスチックを減らす動きもありますが、私たちの生活がこれまで通り快適な状態を保ち続けるには、代替手段を見つけなければなりません。

現状、プラスチック以上に有効な素材が見つかっていない以上、それをいきなり無くすのではなく、再利用できる仕組みを考えることが、循環型経済をつくる一歩だと考えています。

そのための手段としては2つあります。まず一つは、プラスチックの原料をバイオベースにすること。もう一つは、使用済みのプラスチックを集めてそれを原材料にするための新しい技術を開発すること。 (出所:AMP)

ampmedia.jp

 

 これで十分なのだろうかとの疑問も沸く。サントリーと言えば、日本を代表するサスティナビリティやSDGsをリードする会社のひとつだ。もっとアグレッシブさがあってもいいのではと思ったりする。 

 

 

100%廃棄物から作られ無限にリサイクルできるナイロン「エコニール」

「人は「生きるか死ぬか」ではなく「どのように生きるか?」ということが大切と語るのは、リサイクルナイロン「エコニール」を作るイタリアのアクアフィル(AQUAFIL)社の会長ジュリオ・ボナッツィ氏だ。WWD Japanがインタビューし、彼の言葉を紹介する。

合成繊維は石油からできていて、エネルギーをたくさん消費します。

加えて、そうした石油から作られたものが海にたくさん捨てられていて地球にとって有害なものになっています。

私たちは今、できることをやらなければならないのです。 (出所:WWD Japan)

 

 アクアフィルの「エコニール」は、漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にしたリサイクルナイロンだという。

「今、漁網は海を汚染していると問題になっているので漁網を用いることはとても重要です。私たちはNGOと組んで、破棄された漁網などの漂流ゴミを取り除くこともしています」とボナッツィ会長は述べ、「エコニールは、100%廃棄物からできているので、地球の資源を使わずに無限に繰り返し利用ができます」という。

www.wwdjapan.com

 そのエコニールは、「グッチ」、「プラダ」、「バーバリー」や「H&M」、ラグジュアリーブランドからファストファッションまでが採用する。

 

 

 

 落合氏がいったように、世界には、もうゴミという概念をなくし、資源にして商品を作る人たちがいる。その範囲は、使い終わった商品を対象とするポストコンシューマだけでなく、製造工程などで出る端切れなどを素材にするプレコンシューマも含まれる。それらがゴミでなく素材になる。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 消費のカタチを変えると未来が変わる?

 カーボンニュートラルが宣言され、循環型経済への移行が徐々に進行し始めたのだろうか。もっと早く、可及的速やかな変化が求められるのだろうけれども、変化は遅々としてしか進まない。今のところ30年後の2050年がひとつの目安なのかもしれないが、もう少し早まったりすればいいのだろう。これだけテクノロジーが進歩しても、それを扱うのはやはり人だ。人の意識に変化が芽生えない限り、進歩は遅々として進まない。

 産業革命は80年余りの時間を費やし、少しずつ変化し新たな時代へと移行した。そして、今日の豊かな消費社会がある。

 もしかして、カーボンニュートラル、脱炭素社会や循環型経済は消費のカタチが変わっていくことになるのかもしれない。それを人々が受け入れるまでには長い時間がかかることのなるのだろうか。

 苦い経験や辛いことがあったりすると、学びの機会になったりする。コロナ渦はいい契機なのかもしれない。