アウトドア企業 パタゴニアがビジネスを始めてから50年近く経つといいます。創業者のイヴォン・シュイナード氏が株式を手放し、この先パタゴニアは新たな形態で経営されていくそうです。
「営利企業として資本主義が地球の役に立つことを証明する」
この意義のもと、最善を尽く、継続して推進していくといいます。
50年前、まだモノが行き届かず、みなが物欲を満たそうと働き、それによって企業は成長し、また、国も豊かになり発展しました。それはそれで、その時代にあって幸福なことであったのでしょう。国や社会に貢献し、企業を支え、個人の欲求も満たされる。ブラックなこともあったのかもしれませんが、モチベーションも高かったのかもしれません。
やがてモノが行き渡り、旺盛な物欲が減退し成長は翳っていきます。また、行き過ぎた経済は弊害を顕在化させることになります。
そんなときに、パタゴニアはビジネスを始めたのでしょうか。
それまでは自然の中から資源を採掘し、それを富に変換してきました。しかし、もうそれでは成り立たず、これまでとは逆に企業が生み出す富を、自然を守るために使わなければならなくなっているといいます。
この先50年の地球の繁栄を願うのなら、私たち全員が、今手にしているリソースでできることをすべて行うことが不可欠です。(中略)....パタゴニアが生み出した富をその源を守るために使用します。地球を唯一の株主にするのです。私は真剣です。この地球を守ります。(出所:パタゴニアの次章:「地球が私たちの唯一の株主」)
人間が想像し得るものは何でも実現することはできるといいます。それは過去の偉業によって実証されているのでしょう。電気、自動車、プラスチックス、原子力、インターネット、それまで不可能なことと思えたものでさえ、時代が前に進むたびに解決されてきました。
パタゴニアが求める「地球を守る」という理想も実現できないことではないのかもしれません。
着古されたTシャツを廃棄せず、リサイクルして新たなTシャツを作る、「Tee-Cycle™(ティーサイク)」循環型システムをパタゴニア日本支社が確立、今年7月から全国展開を始めているといいます。
パタゴニア 衣類の循環性を高め、新品をつくらない選択 「Tee-Cycle™(ティーサイクル)」|パタゴニア日本支社のプレスリリース
パタゴニアによると、着古されたTシャツは、フィンランドを拠点とするサプライチェーンのパートナー「インフィニテッド・ファイバー」に送られ、インフィナ繊維という素材にリサイクルされるといいます。このソフトながら丈夫な繊維と、コットンの端切れを工場から収集し、混紡することによってティーサイクル・コレクションが作られるそうです。
パタゴニアのカーボンフットプリントにおいて、サプライチェーン由来が97%を占め、そのうち86%が原料由来になっているそうです。これまでに、ポリエステル、ダウンなどでリサイクルの進歩はあったそうですが、最も重要な変革は、すべての素材で循環型システムを確立することといいます。
このプラグラムには、トヨタグループの豊田通商の協力提携があるといいます。
「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」とするパタゴニアのミッションがまた他者をも動かすということになったのかもしれません。
岡山県倉敷市のジーンズブランド「land down under」が、長く着られて、かつリサイクルしやすいジーンズを販売し、サーキュラーエコノミー 「循環型経済の実現」を目指しているといいます。
ジーンズの産地・倉敷で「循環する服」をつくる | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
我々のブランドだけでなく倉敷エリアの他のデニムブランドも巻き込んで、製品回収やリサイクルにおけるスケールメリットを出していければ。実際に、2〜3社を巻き込んだ共創型資源循環プロジェクト『Remade in Japan』を企画・進行中です(出所:Forbes)
ミッションを諦めずに追いかけていければ、やがて追従者が現れるということなのでしょう。追従者が増えれば増えるほど、そのミッションはまた実現に近づいていくのかもしれません。
こうした新たな価値を追うことが、この時代の幸福の源泉になれば、さらに加速していくことになるのでしょうか。
「参考文書」