Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

脱炭素にデジタル、その加速に求められるスタートアップ、整うエコシステム

 

 スタートアップ、起業、そんな言葉を頻繁にニュースでも耳にするようになりました。その発信源の筆頭は政府なのかもしれませんが、DeNA(ディー・エヌ・エ)の創業者で代表取締役会長の南場智子氏もそのひとりのようです。経団連副会長として、スタートアップ振興をリードし、自身でも「デライト・ベンチャーズ」を率いています。日本の起業家が成長し、グローバルで活躍するのを全力で支援するのがベンチャーキャピタル「デライト・ベンチャーズ」の役割といいます。

 起業環境は以前に比べればよくなっているのかもしれませんが、「デライト・ベンチャーズ」は、さらに日本のスタートアップ・エコシステムを活性化させるといいます。

 

 

ハードウェア 脱炭素に求められるもの

 スタートアップ企業と投資家によるカンファレンス「B Dash Camp2022 Summer in 札幌」が6月1日に開催されたそうです。FNNは、このカンファレンスの「徹底討論!日本が投資すべき気候テクノロジーは何か」というセッションをレポートしています。

「日本は20年遅れることになる」脱炭素テクノロジーの勝ち筋を起業家が提言

 記事によれば、スタートアップ業界のトレンドは、Web3やメタバースで、脱炭素のような環境領域を志す起業家はかなり少数と指摘しています。

 このセッションに登壇したENECHANGE代表取締役の城口洋平氏は、「メタバースではなく地球上で仕事をする人にとっては、この領域(脱炭素)で起業し、何かを一生懸命やっていれば、時価総額1000億円くらいの会社を作る事は十分可能なのです」と述べ、「日本はハードが分かる人がベンチャー業界に少なく、デジタルが中心ですが、デジタルだけでは脱炭素ベンチャーは作れません」と話しています。

たとえば「CO2を吸収する」「街中を流れる小川で発電する水力発電」「EVのワイヤレス給電」など、事例はいくらでも出てくるのですが、いずれも製品としての見た目は「ハード8割デジタル2割」となり、もちろんデジタルも超重要な要素になります。どちらも一社でできる会社は日本からは生まれにくいので、ベンチャーがデジタルを担当しハードは大企業など、日本型のハイブリットモデルを作らねばなりません。(出所:FNNプライムオンライン)

 

 

 声の大きいものに流されて雰囲気が形成されます。デジタル、デジタルの風潮ですが、デジタルだけで解決できない課題もあるのでしょう。

デジタルが生み出す煩雑さを解消するために

 そういっても、デジタルはデジタルで進めなければ、企業のお困りごとは解決されず、効率化、生産性は改善しません。

 たとえば、「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」。クラウド上の「SaaS」は便利である一方、運用やコスト管理面で見えにくく、サービスの種類や利用者が増えると、管理はさらに複雑になるといいます。

 こうした煩雑さの解消も起業の種になり得るといいます。zooba(ズーバ)というスタートアップはこのSaaS管理サービスの提供を目的として起業されました。この起業を前出「デライト・ベンチャーズ」が支援しています。

情シスから独立して起業、そんなキャリアが「普通」になる日 | 日経クロステック(xTECH)

SaaS管理については工数を取られていたので、課題が明確に見えていたが、それ以外にもIT部門には起業の種が多く存在しているのではないか」と、zoobaの代表名和氏はいいます。

(画像:デライトベンチャーズ

普段の仕事の中に、起業の種は実はけっこうあるのかもしれない。(出所:日経XTECH)

 効率化、生産性の追求は、ある事象に対して改善される反面、時に、新たな非効率さを生み出すこともあります。zoobaのSaaS管理もその例と言ってもいいのかもしれません。

 

 

 社会情勢が変化し、半導体不足が生じ、半導体の内製化を始める企業があります。DX デジタルトランスフォーメーションが叫ばれ、今まで外部委託していた社内システムの開発を内製化する企業もあります。こうした内製化も効率的な面と非効率さの両面があるのでしょう。

 過去を振り返れば、垂直統合型の企業がその後水平分業へとシフトしました。それは分業の方が効率的だったからでしょう。そして、そこから様々な産業が起きることになります。やはり、起業の種は、そこら中にあるということなのかもしれません。

 

「参考文書」

デライト・ベンチャーズの「ベンチャー・ビルダー」より経産省の出向起業等創出支援事業に2社が採択|株式会社デライト・ベンチャーズのプレスリリース

 

消費電力で規制されそうな仮想通貨、失った信用の回復はあるのか

 

 ビットコインなど暗号通貨の採掘マイニングを禁止する法案が、米ニューヨーク州で可決したといいます。環境に与える影響への懸念の高まりに対処するものといいます。先に中国でマイニングと取引が禁止され、米国やカザフスタンでマイニングされるようになっていたそうです。

NY州議会、ビットコインのマイニングを禁止する法案を可決 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 Forbesによれば、今回禁止されるのは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)と呼ばれる方式のマイニングだそうです。PoWは、プルーフ・オブ・ステークPoSなどの方式に比し、エネルギー消費が多いと言われています。新たなコインのためのマイニングなどで消費される電力は、小さな国の年間消費量と同程度とみられているそうです。ただセキュリティ面では、PoWが最も安全な方法であるとも言われているようです。

 ニューヨーク州知事がこの法案に署名すると成立するといいます。

 

 

 米政府もまた、ビットコインなどの暗号通貨のエネルギー消費量と環境への影響に焦点を当てた政策提言の作成に取り組んでいるといいます。ビットコインやその他の暗号通貨のプラスとマイナスの両側面を掘り下げたレポートが、8月に発表される予定といいます。

米政権、暗号通貨の電力消費量に関するレポートを準備中 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 中央支配機関を持たずに、ネットワーク参加者全体によってその信用を形成されるとしたビットコインなどが、環境面から国や自治体から規制されようとは、始まった頃には想定もできなかったことではないでしょうか。この先、この他にも国による干渉を受けることはあるのでしょうか。

 一方で、マイニング業者は急増するコストを賄うため、保有するビットコインを売却し始めているといいます。

仮想通貨採掘業者、保有ビットコイン売却-業界減速や価格低迷で - Bloomberg

 業界の成長が減速しているほか、ビットコイン価格は過去最高値からの急落後、回復する兆しをほとんど示していないといいます。

 「仮想通貨の冬」と言われるようになり、業界での人事の見直しにも影響しているようです。 米最大手の仮想通貨取引所であるCoinbaseが、社員の新規採用計画を見送り、既に決定していた社員の採用を取り消すことを発表したそうです。

世界最大級の仮想通貨取引所・Coinbaseが内定取り消し、 ソフトバンク出資の仮想通貨取引所も次々とリストラ - GIGAZINE

 さらに、ブラジル最大の仮想通貨取引所の親会社が社員の10%分の人員削減を実施するなど、市場低迷による影響が現れているといいます。

 

 

 そうした中、オンライン決済サービスの米ペイパルは、暗号資産チーム拡大を続けていくそうです。ブルームバーグによると、特定の暗号資産(仮想通貨)を対象に、他のユーザーや取引所、外部電子財布(ウォレット)との振り替えを可能にする新たなサービスを提供するそうです。

ペイパル、仮想通貨の振替サービス開始へ-NY州のライセンスを取得 - Bloomberg

 ペイパルのシニアバイスは「デジタル通貨の商業利用や決済は将来、著しい規模になると当社は考えている。われわれが参加しているのは長期戦だ」と述べているといいます。

 ただ足下では「不安定でリスクが大きく、インフレにも弱いとみなされているビットコインにとって、足元のマクロ環境は追い風とは程遠い」とロイターは指摘しています。

仮想通貨は今どんな投資家の購入対象にも入らない。(出所:ロイター)

 元々、ネットワーク参加者全体で信用を形成するのが仮想通貨だったはずです。信用から大きく乖離してしまっているのかもしれません。信用の回復はあるのでしょうか。何のための仮想通貨なのかも問われていそうな気がします。

 

「参考文書」

アングル:「暗号資産の冬」終わりのサインか、下げ続く余地も | ロイター

 

進むイメージ、進まぬ普及、脱炭素に取り組む使命感とは

 

 テレビCMを見ては、脱炭素も進み始めたのかと感じる今日この頃。多くの企業がCMで自社の脱炭素をアピールしているようです。そうはいってもまだまだそのスピードは乏しく、このままでは気候変動を止めることは出来ないのかもしれません。

 遅れている分野でスピードアップが求められているのでしょう。

バイオディーゼル燃料

 ミドリムシでSAF「持続可能な航空燃料」の製造を目指すユーグレナ社が、サービスステーション(ガソリンスタンド)でバイオディーゼル燃料の一般向け販売を継続していくといいます。

ユーグレナ、ガソリンスタンドでバイオ燃料を継続販売: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、バイオ燃料の普及につなげるためといいますが、ただ価格はまだ300円前後になるといいます。

(画像:ユーグレナ

 まずはバイオディーゼル燃料の導入実績を増やし、認知度を上げ、顧客網を広げ、商用プラント稼働後の本格販売につなげていくといいます。

 

 

SAF 持続可能な航空燃料

 一方で、SAF「持続可能な航空燃料」への切り替えが急がれているといいますが、まだまだ需要と供給のギャップが大きいそうです。

伊藤忠、三井物産、三菱商事…3大商社の「SAF」争奪戦。“非資源No.1”の伊藤忠がリードしているワケ | Business Insider Japan

 総合商社各社もその確保への動きを強めているといいます。Business Insiderによれば、世界規模でのSAFの必要量は、2030年には7200万キロリットル、2050年には5.5億キロリットルに大幅な増加していくそうです。

代替肉

 大豆で作った肉「大豆ミート」や野菜ベースの代替卵など、植物由来の原材料を使った食品「プラントベースフード」がこの1~2年で急速に広がっていると毎日新聞が報じています。

 また、培養肉にもその兆しが現れているといいます。代替肉の本命は動物細胞から作る培養肉なのではないかとGIZMODOは指摘、サンフランシスコの人工肉企業Good Meatが、世界最大の培養肉工場を建設するといいます。

お肉は工場で増やす時代:世界最大の培養肉工場が計画中 | ギズモード・ジャパン

 畜産は多量の二酸化炭素を排出する産業と言われ、こうした代替肉は、削減効果が大きいと言われていました。しかし、GIZMODOによると、近年のリサーチでは、いわれるほどの効果がないという話もあるとそうです。

培養にはウシ胎児血清が使用されることが多く、結果、商品としての温室効果ガスの排出量は同じではという指摘もあります。培養には膨大な電力も必要ですが、工場のシステムについて細かいところは明かされていないので、本当にエコかどうか第三者が断定できず、故にいろいろな説が出ている(出所:GIZMODO)

 

 

 日本ではまだ小さい代替肉の市場ですが、欧米を中心に約9兆円規模の市場になっているそうで、30年には約2倍の18兆円程度に膨らむとの試算があるようです。みなが注目するようになれば、日本でも普及していくことになるのではないでしょうか。

大豆ミート、代替卵… 環境や食を守るプラントベースフードに注目 | 毎日新聞

 ただまだ価格の問題があるといいます。毎日新聞によれば、通常の商品より2~5割程度高くなっているそうです。ただ利用者が増えて量産化が進めば、価格は自然に下がるとの見方があるといいます。

公害、大気汚染と自動車の発展

 かつての自動車がそうであったように、最初は一般大衆に手が届かないものでも、普及しはじめると、価格は下がり、さらにその普及は加速していきます。

 しかし、その爆発的普及は、自動車においては公害、大気汚染をもたらすことになりました。

 今の脱炭素対策も決して完璧であるということはないのかもしれません。進歩があっても、時に後退することもあるのでしょう。それでも改善を続ければ、やがて遅々としたものかもしれませんが、ゴールに近づいていきます。

 自動車などによって引き起こされた大気汚染は、やがて厳しい環境規制となっていきました。当時、米国で施行されたマスキー法(大気浄化法改正案第2章)は、1976年以降に製造する自動車は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の排出量を1970-1971年型の1/10以下にするなど、当時の技術では到底解決できるものではないと言われていました。

 

 

 しかし、難問も解決されるときがやって来ます。ホンダのシビックのCVCCエンジンが世界で初めてこの規制基準を達成し、米国のビック3(当時のGM、フォード、クライスラー)もホンダに技術提携を申し入れるほどの快挙だったそうです。

 当時、ホンダの社長は、名経営者と言われた本田宗一郎氏。CVCCエンジンの開発にあったては、社員にビック3に追いつくチャンスといい、檄を飛ばしたそうですが、若手社員は反発したといいます。日頃、本田宗一郎氏は、社会のために働けといっていたのに、このときばかりは会社のためといったためといわれています。

 社員が一丸となってCVCCを開発するのは、会社のためではなく、子供たちに青空を残すためという使命感があったそうです。

 CVCCエンジンの開発を見届け、しばらくすると、本田宗一郎氏は社長の座を退いたそうです。社員たちに確かなものを感じたのかもしれません。

 今ここにある脱炭素も、このような使命感とともに進めることができれば、解決できないことはないのでしょう。そうして、やがて社会に定着していくのではないでしょうか。

 

「参考文書」

サービスステーション(ガソリンスタンド)で次世代バイオディーゼル燃料の一般向け継続販売を開始 | 株式会社ユーグレナ

 

【グリーンとデジタル】サプライチェーン全体のCO2の見える化はDXで実現できるか

 

 掛け声ばかりで進まなかったものでさえ、時ときともに環境が少しづつ整えば、前進することがあるということでしょうか。最近に耳にするDX デジタルトランスフォーメーションは、その例なのかもしれません。

 スマートシティ構想が起こり、やがて「Society5.0」へと発展し、それぞれが死語になたわけではないのでしょうが、それがデジタルに置き換わり、DX「企業の変革力」に変わってきたようにも感じます。今ではさかんにDXが語れるようになっています。

「そんなのDXではない」は禁句、顧客視点の変革に向け経営者と技術者は対話を | 日経クロステック(xTECH)

「脱成長」や「低成長」を寛容していこうとの考えもあるようですが、「停滞」しているよりは「成長」している方が、社会に活気があっていいのではないかと思えたりもします。

 価値観を根本的に変えるには、それなりの覚悟と我慢が強いられますが、アップデートなら、努力と忍耐で乗り越えることができるのではないでしょうか。

 

 

 ほんの数年前までは、既存事業の限界を悟り、新規事業への新陳代謝を目指したいと考えても、企業の中ではなかなか取り合ってもらえなかったものです。理由はすこぶる簡単で、短期的に赤字になり、売上も利益も期待できないからということでした。

 しかし、それでは停滞に陥るのが関の山です。多くの企業が長くそうした状態にあったのかもしれません。

 そんな時代にあって、ソニーは平井氏が社長であった当時、「SAP:シード・アクセラレーション・プログラム」を始めたといいます。

イノベーションを日本から! 依頼が集まるソニー発スタートアップ支援の中身 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

 社内にあった不満、挑戦への情熱を何とかしたいと平井前社長が感じたことが始まりと言います。こうしたことがきっかけとなっており、ソニーは元気を取り戻します。ペットロボット「aibo」が復活したり、様々な新商品やサービスが再び登場するようになりました。

 卓越したリーダーのもと変革は起きるのでしょうが、そうでなくても、社会が変化を求めるようになれば、必然、企業もそろりそろりと変化を始め、いずれに変革と呼ばれる大きな変化につながっていくこともあるのではないでしょうか。

 

 

 エレクトロニクスや電子機器、情報技術の業界団体「JEITA 電子情報技術産業協会」の新会長に富士通の時田社長が就任し、記者会見でDXについて言及したそうです。

「社会のデジタルトランスフォーメーションを加速させていくために、『デジタル産業の業界団体』として、期待に応え、責務を果たしていきたい」。

JEITA新会長に富士通の時田社長が就任、「グリーントランスフォーメーション」「人材育成」「半導体」に注力 - INTERNET Watch

「この先のデジタル化の地殻変動となるのは、カーボンニュートラルである」とし、必要なことは、グリーンとデジタルを組み合わせることであり、『グリーントランスフォーメーション』が求められている」と語ったそうです。

「Green×Digitalコンソーシアム」を立ち上げ、デジタル技術を活用した「サプライチェーン上のCO2排出量の見える化」を進めるといいます。

理想の姿は、デジタル技術を駆使して、サプライチェーンの各プロセスでのエネルギー消費に伴うCO2排出量の実績データが、自動的にデータ共有基盤に蓄積され、グローバルに広がるサプライチェーンのCO2排出量を正確に把握できるようになる状態である。(出所:INTERNET Watch

 社会全体の脱炭素化につなげていくため、みなが同じ基盤のサプライチェーンのCO2を見える化を共有し、それぞれがそれぞれに適正に運用管理し、そのために事業活動を継続的に見直し改善していけば、やがて企業の変革につながっていくのかもしれません。

 JEITAは「グリーントランスフォーメーション」の他にも、「人材育成」「半導体」に、重点的に取り組むそうです。

 

 

カーボンニュートラル」、脱炭素という言葉を起点として、これまでになく社会の変化が起きつつあるように感じます。これを機会としていかなければならないのでしょう。自社の利益のことばかりに目が奪われると、挑戦から遠退いてしまうのかもしれません。社会の大きな課題の解決に向かえば、そこからまた成長が始まるのではないでしょうか。歴史もまたそれを証明しているのではないでしょうか。

 

「参考文書」

Green x Digital コンソーシアム 2021年度 事業計画

GxDコンソーシアム概要 | Green x Digital コンソーシアム

回復しつつある国産木材、進むか地産地消、国産材の輸出も

 

 木材の自給率が41.8%まで回復したといいます。TSR東京商工リサーチによると、2020年の10年連続で上昇し、40%を超えるのは、1972年の42.7%以来、48年ぶりといいます。

ウッドショックで岐路に立つ国内林業 、「伐採」と「再造林の循環」の両立が鍵 : 東京商工リサーチ

 コロナ渦からの回復で、世界的に木材が不足となり価格が高騰、ウッドショックが起きました。国際情勢が緊迫化し、ロシア産木材が禁輸となっています。今後も木材の自給率は高止まりするとの見方が支配的のようです。それでも国内の林業が再興するにはまだ課題も多くあるといいます。

 

 

 しかし、木材の国産化の流れができれば、その流れに乗っていち早く事業化しようとの動きが生じたりします。

 栃木県足利市では、林業に携わる地元業者らが、地元産の木材を活用する「ジモトの木」プロジェクトを立ち上げたといいます。

【地方に勝機】ウッドショック機に「ジモトの木」へ 足利の林業者らがプロジェクト発足 - 産経ニュース

 目指すのは、地産地消、地元の森で生まれた木を使い、地元の人が作り、地元で使い、地元の森や産業が元気になり、地元をもっと好きになっていくことといいます。

足利市の場合、市面積の45%を森林が占め、林業と製材業、家具製造販売といった木材のサプライチェーン(供給網)はそろっている。プロジェクトは、その川上から川下までの各部門を担う事業者が連携し、地元産木材を利用した新製品の開発などを資材調達から製品化まで一気通貫で行おうという試み (出所:産経新聞

ジモトの木 – 有限会社マルトツ

 産経新聞によれば、「ジモトの木」プロジェクトに参加するのは、木材伐採業「萩原林業」と製材業「マルトツ」、家具製造販売業「昭栄家具センター」、これに地元のデザイナーも加わっているそうです。  

 

 九州では、国産木材を活用するための総合木材会社MEC Industry(メックインダストリー)の鹿児島湧水工場が6月から稼働を始めたといいます。

「日本の近代史を切り開いた鹿児島県から革新的なイノベーションを起こしていきたい」、工場完成の記念式典で、吉田社長はそう話したそうです。

 生産した建材を海外に輸出することも視野に入れており、アジア各国に近い地で操業したといいます。

平屋住宅が2割安、1200万円 鹿児島で国産木材加工工場始動 - 産経ニュース

 この工場は製材、製造、加工までの一連の機能を有しているといいます。また、会社は三菱地所竹中工務店などが出資して設立され、販売までを含めた一気通貫で事業を担うことができるそうです。

(資料:MEC Industry)

 販売されるメックインダストリーの木造住宅は、あらかじめ間取りが決められた規格型の平屋住宅で、広さは約100平方メートル、1棟の価格は1200万円程度(税別)になるといいます。一般的な低価格戸建て住宅より2割程度安価に提供できるそうです。それは生産性に優れた工場を持ち、なおかつ自社販売することによるメリットといいます。

 

 

 日本は、国土の約7割が森林になっているといいます。ただ、その森林は手入れをしないと荒廃が進み、土砂災害などのリスクが大きくなります。また、森林が歳をとればCO2の吸収量も低下します。

 産経新聞によれば、林野庁の担当者は「森林を『伐採して使い、また植える』という循環を拡大させることは、森林の維持に不可欠」といい、民間主導の国産材活用に期待を寄せるそうです。

 今日6月5日は環境の日です。こうしたことが起点となり、ビジネス事例が増え、地球を救うことにつながっていけばいいのではないでしょうか。

 

「参考文書」

「木」を活用する社会の実現を目指す MEC Industry 株式会社の自社生産拠点「鹿児島湧水工場」が完成・本格稼働開始 新建材「MI デッキ」・戸建住宅「MOKUWELL HOUSE」の製造・販売を加速

三菱地所系木材会社の巨大工場に潜入、木材加工“一気通貫”の実力 | 日経クロステック(xTECH)

自動車だけにあらず、変わるメーカ、トヨタは家庭用蓄電池、デンソーは半導体と農業

 

 トヨタ自動車は、電動車の開発で培った電池技術と車載部品などを活用した住宅用蓄電池システム「おうち給電システム」を開発したと発表しました。6月2日より先行予約を開始し、8月より総合施工会社を通じて、日本国内で販売するそうです。

(写真:トヨタ自動車

 米テスラも日本国内で、「パワーウォール」という家庭用蓄電池システムを販売しています。

 自動車メーカが単なる自動車メーカではなくなっていくのでしょうか。自動車を構成する要素技術ごとに、商売に変えていくのかもしれません。

 

 

 トヨタ自動車のTier 1であるデンソーは、この「おうち給電システム」の車両給電アダプタや蓄電池ユニットの中に搭載されるインターフェース、スマートフォンタブレット端末向けの専用アプリケーション、蓄電池システムの情報を収集する蓄電池システムサーバーの開発を担当したといいます。

(画像:トヨタ自動車

 自動車生産で培ってきた技術を、自動車ばかりでなく、応用できる他の分野に広げたということなのでしょうか。

デンソー半導体戦略 ~半導体不足に対応

「電動化や自動運転など、モビリティのテクノロジーの進化が加速するにつれ、半導体の役割は重要になり、車載半導体は今後ますます増加していく」と、デンソーのCTOの加藤 良文氏は、「半導体戦略説明会」でそう述べています。

 デンソーは、「半導体を、マイコン&SoC、パワー&アナログ、センサーの3つの領域に分け、安定調達と開発に取り組む」といいます。

(資料:デンソー

 足元の半導体不足には、「N+1年」でオーダーを確定させ、「N+2年」で内示、半導体の長いリードタイムに合わせた発注に変えていくようです。これまでの在庫レスの流れに逆行するずいぶん思い切った施策ではないでしょうか。需給が振れれば、大量の在庫を発生しかねません。トヨタの需給予測の正確性がこうした大胆施策を可能にしたのでしょうか。

 

 

 マイコン&SoC、パワー&アナログ、センサーの3種にカテゴライズされた半導体はそれぞれに異なった戦略でアプローチしていくといいます。単に半導体を調達するのではなく、取引先を含めそれぞれの強みを活かしていくということでしょうか。この先キーとなるパワー半導体では内製化対応を選択しています。それぞれの半導体ごとにサプライチェーンを分析、把握したうえで、その最適化のために、自社の持つ技術を組み込んでいるようです。キーとなる部品においては、その取引先と不可分の協業という形態に見えます。

(資料:デンソー

 こうした戦略で調達力が強化され、それと同時に技術開発により差別化も強化されていくのかもしれません。

 TPS、トヨタ生産システムによって、あくなき効率化を追求するトヨタグループの強みといっていいのでしょうか。

 

 

自動車部品のデンソーが農業に進出

 そのデンソーが定款を変更して事業目的に農業を追加すると発表したといいます。農業の関連設備や農産物の生産・販売を手掛けるそうです。

デンソーが定款変更、事業目的に「農業」追加: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、6月の定時株主総会に付議するそうです。

 自社ロボットによるトマトの自動収穫の実証を2020年から進めてきたといいます。これに加え、品質管理ノウハウも農業に応用することもできるといいます。自動車部品の生産に加え、そこで培った自動化技術を生かした農業の効率化を新規事業として強化するといいます。

 技術などの知を深耕、進化させ、それを応用できる場を常に探索することを怠らなかった結果ということでしょうか。

 

入山章栄教授×電通デジタルが語る「両利きの経営」にDXが必要な理由 | Business Insider Japan

 

「参考文書」

デンソーが半導体の調達強化、2025年に内製2割増 外部発注も前倒し | ロイター

「デンソー半導体戦略説明会」を開催 | ニュースルーム | ニュース | DENSO - 株式会社デンソー / Crafting the Core /

デンソー、住宅用蓄電池システム向け製品を開発 | ニュースルーム | ニュース | DENSO - 株式会社デンソー / Crafting the Core /

トヨタ、電動車用バッテリーの技術を活用した住宅用蓄電池システムを発売 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

 

円安に資源高、国内回帰にメリットはあるのだろうか

 

 このご時勢にあって、相も変わらず企業業績は好調といいます。財務省が発表した2022年1~3月期の法人企業統計で、全産業の経常利益が前年同期比13.7%増だったといいます。

経常利益が過去最高、1~3月13.7%増 法人企業統計: 日本経済新聞

 日本経済新聞によると、1~3月期としては過去最高で、プラスは5期連続となるそうです。巣ごもり需要の増加や製品価格の上昇が理由といいます。多少理不尽さを感じずにはいられません。実質賃金があがらないままで、利益ばかりが増えるの如何なものでしょうか。

 

 

 製造業がなお好調を維持しているといいます。半導体産業もそのひとつのようです。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスが今後も需要が見込めるパワー半導体の生産能力を増強するため、甲府工場を再稼働させるといいます。900億円を投資し、生産設備を刷新、最大で300人を新規雇用するといいます。

「ルネサスサプライズだ」 地元は甲府工場再稼働を歓迎(1/2ページ) - 産経ニュース

 産経新聞によれば、地元では「ルネサスサプライズ」と歓迎しているといいます。

 甲府工場の再稼働だけでも地元には大きな効果がある上、下請けとして製造装置の関連機器や資材を手掛ける電機・機械メーカーも多く、山梨県全体の産業への波及効果は大きいといいます。

商工会議所の進藤会頭は「中小企業を含め、関連する業界全てで高い技術が求められる。これに対応していくことで県内産業の技術力と生産性の向上につながっていく」と効果を強調する。(出所:産経新聞

 企業利益がこうした投資となり、それによって地方経済の好循環に寄与できるようになっていくのが最善ではないでしょうか。

(写真:ルネサスエレクトロニクス

 一方、青森県むつ市では、ストッキング大手のアツギ東北が5月末をもって生産を終了させ、下北の雇用の受け皿として大きく貢献した工場が56年の歴史に幕を下ろしたといいます。新型コロナの影響などで主力商品であるストッキングの需要が低迷したことが要因だったといいます。

アツギむつ事業所が生産終了 56年の歴史に幕|経済・産業・雇用|青森ニュース|Web東奥

 青森県むつ市、思入れのある地です。パソコンが急速に普及し始めた頃、むつ市の協力工場で周辺機器の部品生産していたことを思い出します。東京周辺での生産を地方へとシフトさせていました。当時は最果ての地との印象もありました。しかし、その後の円高の進行で海外に生産移管せざるを得なくなりました。

 むつのその工場は閉鎖となり、従業員の一部は協力工場の海外拠点へと転勤となり、また地元に残った人もいると聞きました。当時は海外シフトに必死で、国内のことを省みることもありませんでした。国内ももっと競争力をつけなければならないと生意気なことを言っていました。しかし、今にして思えば、あの時もう少し考えれば、むつの工場を活かした方策もあったのではないかと思えたりもします。

 

 

 資源高、円安、経済安全保障、そんなワードで国内回帰が語られ始めているようです。ルネサス甲府工場再稼働もそうした動きの現れでしょうか。

 しかし、さらに資源高が続けば、好調だった企業業績を悪化させかねません。そうしたときに、折角の国内回帰の機運に水が差されることもあるのかもしれません。そうならないよう、でき得るだけの手を打っていかなければならないのでしょう。

【核心】日本の製造業がグローバルイニシアチブをとる方法

ソーシングは本質的かつ経営戦略に直結する業務で、どこの会社からどの程度買うのか、どの会社を育てて競争環境を作るのか、どこは専売権等含めて押さえにいくのか等、企業のリスクヘッジに直結する業務と言えます。(出所:NEWSPICKS)

 ソーシング、開発購買の基本的なところでしょうか。これにDX要素を加えてもよさそうです。

 

 

 国内回帰は始まりであり、過去と同じ轍を踏まぬような対応を今から進めるべきなのでしょう。これまだ怠ってきたサプライチェーンを常に先鋭化させる必要があるのでしょう。今では、こうしたことにおける成功事例があるようです。ベストプラクティスとして検討してみるのもいいのかもしれません。

長らく円高リスクへの対応を迫られていた日本の製造業にとって、「今回の円安リスクは初めてだ」との見解を示した(出所:ブルームバーグ

 

「参考文書」

鉄鋼大手も円安に悲鳴、原料コスト増がメリット上回る-利益押し下げ - Bloomberg

繊維メーカー 植物工場 進出へ アツギ撤退のむつ市 (青森県)(青森放送) - Yahoo!ニュース