江崎グリコの基幹システムで大規模な障害が発生し、「プッチンプリン」などがお店から消え話題になりました。江崎グリコは、5月中旬の出荷再開を目指し改修を進めているそうです。
稼働が1年超遅れたグリコの基幹システム刷新、投資額は当初比1.6倍の342億円に | 日経クロステック(xTECH)
様々な業界で次から次へと問題がおこります。銀行をはじめあらゆる業界でシステム障害をおきて、生活にも影響するようになってきています。
江崎グリコは2019年12月、基幹システムの刷新に着手したそうです。しかし、このプロジェクトは目論見通りには進まず、予定の2022年12月に刷新が完了せず、ようやく今年4月に新システムへ切り替えたといいます。そして、今回のシステム障害が発生したといいます。
新たな基幹システムには、独SAPの「SAP S/4HANA」が採用され、主幹ベンダーはデロイト トーマツ コンサルティングだったという報道もあります。
新システムでは、こうした社内のレガシーを統一し、プロセスをシステム上でつなげ、人による調整を減らすこと。顧客から研究開発、調達までデータと業務を紐付けること、全社レベルでデータを可視化し、課題の発見や経営判断のスピードを上げるといった狙いがあった。(出所:東洋経済オンライン)
新しい基幹システムは、江崎グリコをデータ志向の企業に変革するためには欠かすことのできないものだったようです。デジタル戦略を打ち立て、デジタル人材育成にも取り組んできたといいます。しかし、費用は膨張し、このプロジェクトの投資額は342億円にもなり、当初予算より約130億円も増えたといいます。それなりに周到に準備されていたように見えますが、なぜにこれほどの難産になったのでしょうか。
2025年の崖
経済産業省が指摘した「2025年の崖」のことが思い出されます。まさにその危惧が的中したということなのでしょうか。ITエンジニアの不足、それに質の問題もありそうです。
コンサルを毛嫌いするSIer、顧客のIT部門と共に滅ぶべし:日経ビジネス電子版
ある大企業のCIO(最高情報責任者)があきれ顔でこんな話をしていた。「他社のDX戦略なるものを読んでいると、幾つかにグルーピングできる。A社とB社は○○コンサルティングの客、C社、D社、E社は××コンサルティングの客といった具合にね」。どういう意味かというと、同じコンサルティング会社の支援を受けた企業のDX戦略は、どれもこれも恐ろしいほどよく似ているそうだ。このCIOは他社の安易なDX戦略にあきれていたのだが、コンサルティング会社も随分安直な仕事をしているわけだ。(出所:日経ビジネス)
信じ難いことですが、しかし、これが、わが国の「DX:デジタルトランスフォーメーション」の実態なのでしょうか。
一方でDXの好事例もあるようです。ファーストリテイリングのDXは順調だったといっても過言ではないのかなと思います。
柳井正氏「僕はコンサルを信用しない」 アクセンチュア社長と対談:日経ビジネス電子版
その取り組みの始まりは25年前に遡るそうです。そしてそれを支えたのがアクセンチュアだったといいます。また、アクセンチュアもファーストリテイリング同様急成長を遂げることになったようです。アクセンチュアはこの8年間で、売上高が4倍、社員数も4倍と大きく成長したといいます。
日本でナンバーワンというより、(IT導入を)やらないと日本でナンバーワンだけで終わると。当時フリースブームでうちの売上高が1000億から4000億円になったでしょう。このままではいけないなという。上場するときからそういうふうに考えていたんですよ。小売業界や繊維業界は、一番遅れている産業でしたから。マイクロソフトやグーグル、アップルのような米ハイテク企業のように成長できないかなと。そういう視野で仕事をされていたから選んだんです。(出所:日経ビジネス)
成功するにはそれなりの理由があるのでしょう。最新のテクノロジーをいかに活用できるかにかかっているのではないでしょうか。ベストプラクティスをまね、それを独自なものに昇華させていく、結果、それが生産性向上につながった否かで、成功か失敗の違いを分けているだけのことのように見えます。
それにしても、アクセンチュア1強、独り勝ちの状況のようです。アクセンチュアはこの7年で、コカ・コーラボトラーズジャパンや資生堂、住友化学など大企業とIT子会社を設立、DXを積極的に推進しているといいます。
アクセンチュアの出資受け入れ、ユーザー企業のメリットとデメリット - アクセンチュアが出資する新型IT子会社:日経クロステック Active
またデジタルマーケティング市場でその存在感が増しているといいます。デジタルシフトを迫られている顧客企業に対し、戦略策定やIT(情報技術)コンサルティングからマーケティングまで一気通貫で支援できることが強みになっているといいます。
伊藤忠商事のデジタル事業 目指すは「打倒アクセンチュア」 - 日本経済新聞
競合コンサルや広告代理店など焦りを募らせているのでしょうか。結構、多くの業界が古いままの体質を引きずっているのかもしれません。アクセンチュア躍進にそれを見るような気がします。
「参考文書」
グリコ「17種類出荷停止」巨大プロジェクトで誤算 40年ぶり社長交代で"データ志向"を目指したが | 食品 | 東洋経済オンライン
【独自】プッチンプリン出荷停止の「主犯」はデロイト!グリコのシステム刷新で1年遅延の末に障害発生“ボロボロ案件”の実態 | コンサル大解剖 | ダイヤモンド・オンライン
ミドリ安全のシステム障害、発生から約7カ月経過するも完全復旧に至らず | 日経クロステック(xTECH)
ファーストリテイリングとアクセンチュア、デジタル時代の革新的な消費者サービス開発に向けて協業