Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

昨年の化石賞がトラウマか、COP27参加見送りを決めた首相の惑い

 

 ロシアによるウクライナ侵攻で深刻化しているエネルギー危機や食料危機、これらは気候変動との関わりも深い問題です。COPの場でも議論されるテーマになるようです。

 COP27への参加を首相が見送ったそうです。残念なことです。

 物価高騰の主要因であるこうした問題に積極的に関わろうとしない態度に疑問を感じます。

ロシアのウクライナ侵攻で先進国に石炭回帰の動き、約束不履行に不満募らせる途上国 COP27、エジプトで開幕:東京新聞 TOKYO Web

 これまで欧州が気候変動対策や脱炭素をリードしてきましたが、ウクライナ侵攻の影響を受けて、そう一足飛びには欧州が追い求める理想に近づいていかないことを突きつけられています。

今回のCOPで各国は、20年代中の排出削減を強化する作業計画を取りまとめる予定だ。しかし、ウクライナ侵略以来のエネルギー不安から、排出量の多い石炭火力発電に回帰する国が相次いでおり、合意は容易ではない。(出所:読売新聞)

 現実的な解を求める場になればと願うのですが、どう進展していくことになるのでしょうか。

 

 

 昨年のイギリスグラスゴーで開催された「COP26」では、岸田首相の発言をもとに「化石賞」を頂くことになりました。

 そのときは、石炭火力の段階的廃止が優先事項とされていたにもかかわらず、まだ実現見込みのない「ゼロエミッション火力」を主張したことが理由でした。アンモニアや水素などを活用する技術は未熟でコストも高いとの指摘を受けました。

 しかし、ウクライナ侵攻で状況は一変していないでしょうか。一時的にせよ、どの国も石炭火力に戻るようになっています。ウクライナ情勢が長引けば長引くほど、その傾向が強まる可能性があるのかもしれません。

 日本最大の火力発電を運営する「JERA」が、アンモニアによる「ゼロエミッション火力」の実現に一定の目途を立てたようです。アンモニアを安価に製造するサプライチェーンの構築が課題して残っていますが、化石燃料への依存を低減することが期待できる技術になるのかもしれません。

排出ゼロ火力に前進 「安い発電」へ供給網 小野田聡JERA社長: 日本経済新聞

 いずれにせよ、現在の苦しい状況からすれば、JERAは二酸化炭素を排出しない「ゼロエミッション火力」を推進し、なおかつ国是であるカーボンニュートラルへの貢献に努めようとはするのでしょう。

 昨年不名誉であったことも、状況次第では求められる技術になるのかもしれません。

 慎重に検討し、進める必要があるのかもしれませんが、批判した国際環境NGOなどと手を携え協力できるのか模索し、推進できるか否かを探り直してもいいのではないでしょうか。

 粘り強く交渉すれば、新たな道を見出せるのかもしれません。参加を見送るのでなく、自ら率先してアクション起こすべきだったようにも感じます。

 

 

 異常気象による災害リスクを、気象観測などで事前に伝える「早期警報」を今後5年で全世界の人が利用できるようにする、そのための行動計画を、国連がCOP27で発表したといいます。

日本の豪雨「早期警戒システム」技術、途上国に提供…COP27で政府表明へ : 読売新聞オンライン

 読売新聞によれば、豪雨対策として、気象観測によって各地の災害発生リスクを知らせる「早期警戒システム」の導入支援を、政府が会期中に表明するといいます。

政府は、雲の発達状況から局所的な集中豪雨を予測できる民間気象情報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)の小型レーダーを活用し、住民らに災害リスクを知らせる仕組み作りを検討している。(出所:読売新聞)

 西村環境相が読売新聞のインタビューで「優れた技術やノウハウを持つ国内企業と連携し、途上国支援に貢献したい。企業の海外展開にもつながる」と語ったといいます。

 そうできれば、今回のCOPの議題である「損失と被害(ロス&ダメージ)」にも貢献できるのでしょう。いやそうしなければならないのでしょう。そうせねば、危機が去ることはありません。

 まずは多くの国から支持を取りつける努力を続け、慎重にことを進めていって欲しいものです。

 

 

 遠回りになるのかもしれませんが、こうした行動の積み重ねで、国際社会における脱ロシアの機運が高まるのかもしれません。ロシアへの無言の圧力となるようにしていかなければならないのでしょう。

 平和裏に情勢の変化を起こすようにしなければ、足下の危機が去ることはありえません。

 重ね重ねではありますが、首相のCOP27への参加見合わせは残念でなりません。日本できる国際貢献の機会を自ら潰していないでしょうか。

 

「参考文書」

環境団体、岸田演説に反発「ゼロエミッション火力妄信」 化石賞も | 毎日新聞

異常気象による災害「早期警報」5年で普及へ 国連が行動計画 | 毎日新聞

 

【COP27】政府の無関心をよそに企業進める脱炭素

 

 COP27が始まりました。初日の会合では「損失と被害」と呼ばれる途上国の被害支援を正式議題とすることが決まったといいます。しかし、早くも先進国と発展途上国の対立が鮮明化したといいます。そんな中、首脳級会合が7日から2日間の日程で開かれるそうです。

COP27、序盤から対立鮮明 途上国、被害支援を要求 | 共同通信

途上国は、先進国の温室効果ガス排出で被害が出ているとして新たな支援を強く要求。先進国は排出削減の強化に新興国などを巻き込む意向をあらわにし、議論が途上国主導の流れになるのをけん制した。(出所:共同通信

 

 

 前政権でカーボンニュートラルが宣言され、グリーン成長戦略が策定され、順調に進むかと思われた脱炭素でしたが、政権が代わったことで、その進捗が見えにくくなったように感じます。

 2030年の目標は実現可能なのでしょうか。

 一方で、大企業を中心にして発せられる情報からすれば、動きが活発化しているように窺え、それになりに成果はあるようにも感じます。EV用の充電設備の設置が進み、また蓄電池ビジネスが拡大するようになり、再生可能エネルギーの拡大もまた然りです。

 他方、太陽光発電の乱開発はいまだ続き、負の側面を伝えるニュースもあるようです。

(写真:岡山県に建設途中の電池工場「Power Base」伊藤忠商事

 伊藤忠商事が、リチウムイオン蓄電池の国内生産を目指すベンチャー「パワーエックス」に出資、業務提携契約を結んで蓄電池ビジネスにおいて協業を進めるといいます。

株式会社パワーエックスとの蓄電池・EV充電分野における業務提携契約締結について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社

 伊藤忠によれば、パワーエックスは、自然エネルギーの普及拡大に不可欠とされる蓄電池分野において、日本最大級の蓄電池工場を岡山県に建設し、定置用蓄電池や蓄電池併設型超急速EV充電器を大量かつ安価に製造・販売することを進めているといいます。

EVが普及している諸外国と比較して、国内において不足しているEV充電ステーションの普及・拡大を目指しており、従来製品よりもはるかに高速で充電可能となる超急速EV充電器を用いたチャージステーションを2030年までに国内で7,000機普及させることを目指しています。(出所:伊藤忠商事

 

 

 日本最大の火力発電会社「JERA」は、燃焼時に二酸化炭素を排出しないアンモニア火力発電所に動き出し、来年2023年度中にはアンモニアを20%混ぜて運転する低炭素火力を始めるといいます。

 またその拡大に向けて、アンモニアの安定調達へサプライチェーンの構築を急いでいるといいます。これらが実現できれば、「安い発電」も可能になるそうです。

排出ゼロ火力に前進 「安い発電」へ供給網 小野田聡JERA社長: 日本経済新聞

 また、これに並行して再生可能エネルギーの拡大を進め、再エネとゼロエミッション火力の相互補完を目指しているそうです。

 アンモニア製造には課題も多く、懐疑的なところはありますが、エネルギー危機を思えば、選択肢とは否定できないのかもしれません。

 

 

 ウクライナ情勢によりエネルギー危機が生じ、エネルギー価格が恐ろしいほどに高騰しています。また、電力需給が不安定化し停電の可能性が否定できなくなっています。

 政府も唐突な原発の新増設や再稼働など無計画な発言は慎み、現状を正しく分析し、脱炭素と安定供給に加え、安価に提供できる適切なエネルギー計画に適宜アップデートしていく必要があるのではないでしょうか。

 社会環境に変化があればルールを見直すべきです。環境に応じたルールにならなければ、硬直した社会になってしまいます。見直すべきルールや規制が多々あるのではないでしょうか。それらを等閑にしてはならないはずです。そういう潮目になっていないでしょうか。

 

「参考文書」

リユースした電動車用バッテリーで大容量スイープ蓄電システムを構築し、電力系統への接続を含めた運転を開始 | プレスリリース(2022年) | JERA

日本最大級の蓄電池生産を目指す株式会社パワーエックスへの出資について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社

オリックスなどEV充電5万基設置へ 政府目標の3分の1: 日本経済新聞

 

【COP27がまもなく開幕】優先されがちな端々の議論、脱炭素社会への移行はどこまで進んだのか

 

  いよいよCOP27 国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議がエジプト東部のシャルムエルシェイクで始まるといいます。クリーンエネルギー移行のための資金調達から森林保護まで、幅広い議題が話し合われるといいます。

情報BOX:COP27、揺らぐ石炭削減や資金負担にスポット | ロイター

 顕在化する恐ろしいほどの異常気象、エネルギー危機、世界各国で進むインフレと景気後退の危惧、こんな状況からすれば、世界が一致して対応が進みそうですが、なかなか厳しそうな会議になりそうです。

 日本政府は来年広島で開催となるG7サミットに向け「種まきの場」とのスタンスでいるといいます。この分野でリーダーシップを発揮しようとの意思はあるのでしょうか。

 

 

 政府の税制調査会自動車税制の見直しに着手、ガソリン税の減収が続く中、道路の維持費を賄う代替財源の確保に向け、走行距離に応じた課税などを検討しているといいます。今後のEV 電気自動車の普及を見据えてことのようです。

EVに対する走行距離課税は「一つの考え方」=鈴木財務相 | ロイター

 賛否両論、早速物議を醸しているようです。今後、どのような議論になっていくのでしょうか。

 政府がほんとうに脱炭素社会への移行を目指すのなら、この後変わることになるであろうライフスタイルを鑑みて、税制の全体を見直すべきのような気もします。

 それに加えて、放漫財政のツケをいずれどこかで解消せねばならず、健全な財政計画を立て、「入るを量りて出ずるを為す」のもと、公平で適正な税負担の確立を念頭に置くべきなのでしょう。

 一方で、今後、再生可能エネルギーが拡大し、EVが普及していくと、昼夜の電気料金が逆転し、夜間の電気料金が高くなるのではないかという意見もあるようです。

アマゾンらが直面する「配送車のEV化」の課題と水素燃料の利点 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

スタンフォード大学の最近の研究では、カリフォルニア州のように、EVが走行中の車の約6%を占める州では、オフピーク時の夜間に充電しておくための送電網の容量は十分にあると推定されている。しかし、EVのシェアが30%程度になるであろう10年後には、夜間料金が今ほど安価ではなくなるため、太陽光発電のピークとなる日中の時間など、他の時間帯の充電に移行する必要がある。(出所:Forbes)

「こうした課題に対する答えのひとつが、水素という別の道を歩むことなのかもしれない」と記事は述べています。米国のケースを指摘していますが、いずれ日本も同じ道を辿ることになるのでしょうか。

 

 

 兎角、政府は税制を優先して議論したがるようですが、脱炭素社会への移行でどんな変化が生じ、将来の暮らしがこう変わっていくということがイメージできるような政策作りが求められているように思えてなりません。また、そこではSDGsの精神をもとにした包摂的な社会ということも忘れてはならないのでしょう。

 政府施策が寛容なものになっていけば、支持を得ることはできるはずです。また、そうなれば将来不安も和らいでいくのかもしれません。

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 しかし現実とは常に理想とは真逆にあるのでしょう。経済産業省電力需給に応じて遠隔から出力を変えられるエアコンや温水器の普及策を検討しているといいます。

電力不足時にエアコン遠隔制御 経産省が普及策検討: 日本経済新聞

電気が不足しそうな場合、エアコンを弱めるといった遠隔制御機能を持たせるよう機器メーカーに求める。出力が気候に左右される再生可能エネルギーの導入が進むなか、電力需給の安定を狙う。(出所:日本経済新聞

 国民に負担を求めることはやりやすいのでしょうか。

 

 

 脱炭素化に向けて再生エネの拡大が求められますが、出力変動調整の難しさが伴います。そのためには、蓄電池の活用などが求められています。

 ただ現実には九州のように、晴天時に電力余剰が生じ再生エネの出力調整を行っているケースがたびたび起きるようになりました。こうした時間帯に電気自動車を充電させたり、給湯器を稼働させたりして需要を増やせば、再生エネの無駄を減らせ、電力不足にも備えられるといいます。

 今、何を優先して為すべきなのでしょうか。端々から手を付けるのではなく、適宜現状を分析して、あるべき姿を指し示し、それに向けて進めるしかないのでしょう。

 

「参考文書」

EV化で減るガソリン税をどう補填する? 米国で試行錯誤される走行課税制度の難しさ | WIRED.jp

風力・太陽光・蓄電池で新規電源の8割、米国は再エネと蓄電の時代に | 日経クロステック(xTECH)

 

スポーツ選手が個人で進める脱炭素、 渡部暁斗選手の「カーボンオフセット」から学ぶこと

 

「氷河は消えうせる運命にある」 ......、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が警告しているといいます。

 世界遺産内の多数の氷河が、2050年までに消滅する可能性が高いそうです。

キリマンジャロの氷河、消滅も 世界遺産への温暖化の影響調査―ユネスコ:時事ドットコム

 ユネスコが公表した報告書で、米イエローストン国立公園やアフリカのキリマンジャロ国立公園などがそうした危機にあるといいます。「産業革命前と比較して気温上昇が1.5度を超えなければ、2/3の世界遺産内の氷河を救うことは可能」と説明しているといいます。

 

 

 ノルディックスキー複合日本チームのエース 渡部暁斗選手もこうした現状に危機感を抱き、行動を始めたといいます。

 競技や移動時に着用するヘルメットや帽子に入れる広告を活用して、「カーボンオフセット」の取り組みを始めるそうです。

雪不足に危機感、スキー複合のメダリスト渡部暁斗が行動「間違いなく自分たちは岐路に…」:時事ドットコム

「秋のトレーニングで訪れる欧州でも、氷河が年々小さくなり、コースが短縮されたり、以前のように練習できなくなったりしつつある」、「競技環境が将来、地球温暖化によって損なわれていくかもしれない」......、こうした現状を危惧し、それが動機になっているようです。

 W杯開幕戦から来年8月末までの広告料を全て、長野県の森林再生を目的とする取り組みに充てるといいます。

募集を始めて1カ月ほどで「いくつかの問い合わせを頂いた」。広告を出せるのは一つだが、それ以外のスポンサーとも環境に配慮した製品の考案やイベントの企画など、一緒に進められる活動をしていきたいという。

注目度が高い現役選手であるうちから、こうした活動をすることの意義を強調した。(出所:JIJI.com)

 温暖化が進行していけば将来仕事の糧を失うことになりかねない。そうした危機感もあるのでしょうか。渡部氏なりの「カーボンオフセット」活動は、私的な利益のために公的利益を追求しようとしているようにも見えます。

 

 

 一方で、日本経済全体が「おじさん文化」そのものに浸食され、時代遅れとなり、そこに経済低迷があるのではないかとの意見があるようです。

首相が42歳の英国に程遠い「おじさん日本」の絶望 | 商社マン流 国際ニュース深読み裏読み | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 記事は、「おじさん文化」を、「上下関係を重視し、部下に服従を求める」「過去の(成功)体験にしがみつき、自分の判る範囲のことしか許容しない」「同調を求め、異物を排除する」「群れることを好み、ロジックよりも根回しや人間関係を重視する」と定義します。

 社会全体が明確な危機意識を持ち、「おじさん文化」の打破を促していくかなければ、日本経済が持たないと主張しています。

「会社人間」から「仕事人間」になろうとの意見もあるようです。

「おじさん文化」に染まってしまったなら「会社人間」ということなのかもしれません。それよりはその文化を利用して、為すべき事を成した方がよいのかもしれません。

 スポーツ選手でありながら、「カーボンオフセット」に挑戦する渡部氏を見てはそう思います。やってみれば思った以上にうまくいくのかもしれません。

 

 

 自分の経験においてもそういことがありました。フランクに会話していた先輩諸氏がやがて昇進の階段をあがり、部長や幹部候補生になったときに、こちらが従順な部下になるべきだったのかもしれません。そうした意識に乏しく、これまで通りに納得できないことには異議を申し立てることがしばしばありました。今にして思い出せば、先輩諸氏は経営との板挟みになっていたのかもしれません。やがて彼らは職場を去って行くことになりました。「異物として排除」されたのだろうと想像できます。

 あるとき新たに赴任してきた上長に「根回し」を進められました。人間関係を重視する人だったようです。ただ、そのおかげ意思決定する経営側と直接会話することになり、逆に仕事がスムースに進むことになりました。「おじさん文化」も使い方次第のような気がします。

 ただ常に順調ということはありません。その後異動した部署の長も「人間関係を重視」していましたが、逆に出来上がっていた関係の中に入るのに苦労しました。

 一方で、信頼された経営側からは極秘にその長を何とかしろといわれましたが、こればかりはなかなか捗りませんでした。それでは仕事の成果の評価もそれなりになってしまいますし、満足感もありません。そのときは待遇面で足踏みしていました。仕事人間に徹するべきだったのでしょうが、「おじさん文化」にそまった時期だったのだろうと思い出します。

 

「参考文書」

50代、「会社人間」から「仕事人間」になろう: 日本経済新聞

 

【経済安全保障】高まるリスク、サプライチェーンの見直しの緊急度とその実践

 

 国際情勢は気にかけていなければならないものなのでしょうが、どうにも政府対応を不安に思うようになります。

 日本海に向かってミサイルを乱射する国があり、また海峡の緊張を高めようとする国もあります。東アジアの端にある日本が、地理的にはこうした影響を回避するのが困難な状況であることは理解しますが、その最前線に立たされてしまったら割に合わないと感じずにはいられません。何のため日米同盟なのかと思ったりします。米国は極めて有利な場所に位置し、最前線に立つことはないのでしょう。

 

 

 経済財政諮問会議が開催され、初めて防衛政策がテーマになったといいます。

 岸田首相は、企業が持つ先進技術の活用で防衛産業の基盤を強化すると述べ、防衛力強化の具体策と予算、財源を一体的に議論するとし、防衛装備の研究開発で官民連携を深める方針を示したといいます。

防衛力強化「民間活力が不可欠」 首相、財源は踏み込まず | 共同通信

 防衛力の議論が必要なことは理解しますが、前のめり過ぎてはいないでしょうか。目先の脅威に今できることは限られています。そこに注力せずに、脅威を根拠にして防衛力強化という論理に危うさを感じずにはいられません。どんな理由があるせよ、歴史の繰り返しは許されません。

 一方で、こうした緊張の高まりを受けて、供給網 サプライチェーンの見直しが始まっているようです。米政府が「フレンド・ショアリング」に言及し、その影響もあるのでしょうか。経済安全保障を強く意識します。

 日立製作所も、中国と台湾における地政学リスクを念頭にサプライチェーンを見直し、日本や同盟国へ移すことを検討しているといいます。

日立、中台リスク念頭に供給網見直し検討-日本や同盟国にシフトも - Bloomberg

 ブルームバーグによると、サプライチェーン見直しの問題は日立の今年度下期から来年度にかけての大きな対応テーマになっているといいます。

東南アジア諸国連合ASEAN)を推す声もあるが、「中国との関係が非常に強いので全部ASEANとはいかない。国内とか、あるいはより中国との関係が薄いところに移していくということで全体のプランを作っている」と述べた。ただ、汎用品については「まだ一部を中国で作っても大丈夫かなとも思う」と付け加えた。(出所:ブルームバーグ

 

 

「フレンドショア=民主主義国家でのサプライチェーン構築」は容易ではない、理念は素晴らしいが、まだ概念にとどまると日経クロステックは指摘します。

脱中国っていうけれど、代わりを見つけられますか? | 日経クロステック(xTECH)

「現実的には難しい」と記事は述べ、「網の目のように張り巡らされたグローバルサプライチェーンにおいて特定国を排除するのは非現実的である」といいます。

 もうかなり前のことになりますが、自社の生産を東南アジアから中国に移管したときのことを思い出します。長く中国移管に反対し、会社の中ですっかり嫌われ者になりましたが、最後はその推進役に駆り出されていました。反対していた理由が次々と覆されての結末でしたが、どんなに1社が踏ん張ってみたところで、大きな流れができてしまえば抗うことはできません。

 その当時の中国を見て、もうここまで到達したのかと思い、その現実をみては、この先は有利に活用するしかないのだろうとのある種の諦めの気持ちを抱きました。

 

 

 世界の国々が協力して出来上がった理想に近い世界の工場「中国」、その流れを逆転させ、サプライチェーンを分散させることは容易なことではありません。

 中国移管前、サプライチェーンに求められることして、「政治的安定と法規制や諸制度」「人材と人件費」「産業集積度」をあげていました。今、国内回帰を目指すのなら、同じ視点でその評価が求められることになるのかもしれません。ただどの項目においても、だいぶ差が拡大していないでしょうか。

 

【資本主義と社会問題】解決は誰の手に委ねるのか、政府、投資家、企業

 

 気候変動や格差拡大、人口減少など様々な社会問題が生じています。こうした問題を解決するのは企業の責務、または義務なのでしょう。経済活動を企業が担い、それによって生じたひずみが「社会問題」であるのなら、それは企業によってしか、解決できないはずである、そう考えるのがご自然なことではないでしょうか。

政府の行動を待つのは災いの元だ。企業は間違いなく地球上で最も強力な組織である。企業だけが今日の環境問題を解決するために必要な規模のイノベーションを推進し、健全な生活の基盤となる雇用を創出することができる。(出所:日経ビジネス

 国が手を出すものだから、ややこしくなる、国が本来やるべきことに徹していればいいものの、妙になところで力を誇示しようとするから混乱するのかもしれません。

 

 

 国の役割が変っているのかもしれません。第2次世界大戦後しばらくの間、政府は強力な存在だったと、米ハーバード大学レベッカヘンダーソン教授が主張しているといいます。

レベッカ・ヘンダーソン教授「資本主義を再構築するには」:日経ビジネス電子版

 国家が頼りにされ、市場で合理的に競争し、公害等の外部性が適切に評価され、規制され、多くの人が市場に参加するために必要な技能を持てるようにするために、政府は機能していたといいます。また、中央集権的な計画経済が台頭し、それに飲み込まれるリスクに抗ってもきました。

 こうした大戦後の経験が社会的結束を生み出すことになっていったそうです。そして、市場経済は成功への道を歩み、それを謳歌し、今日に至ります。

民間企業による自由な利益追求が、統制のとれた社会の中にいる限り、それは莫大な価値を創造した。しかし、野放図にされた市場は、自然や社会を破壊する誘因を持つ。(出所:日経ビジネス

 よくよく気づけば、また同じことを繰り返しているかのように社会はひずみばかりになっています。それどころか、今度は政府は機能不全に陥り、ミルトン・フリードマン氏らによってもたらされたシカゴ学派の経済思想によって企業は強欲主義となったしまったようです。

「資本主義が我々にもたらすものは繁栄か、それとも脅威なのか?」、日経ビジネスが疑問を投げかけています。

ヘンダーソン教授「資本主義再構築、企業だからできる」:日経ビジネス電子版

 この時代にあっては、これまでの資本主義を見直すべきと、ヘンダーソン教授は主張します。

共有価値、すなわち私的利益と公的利益の同時創出へ向けた動きは、重要な最初のステップだ。(出所:日経ビジネス

 実際に「共有価値」を創造している事例はいくつもあるといいます。米ウォルマートははエネルギー使用量削減のためにトラックの設計を変更して、年間約10億ドルも節約していると指摘します。

 

 

 こうした事例ももっと拡大し、どの企業も「共有価値」を創出できるようになることが望ましいことのでしょう。そのために、投資家と政府の役割が重要になるといいます。

「気候変動のような破滅的なリスクを分散することはできない」。

 投資家においては、こうした問題が企業の長期的な収益に深刻なリスクをもたらすことが明らかになり、その解決を企業に要求しなければならず、こうしたことはESG投資において見られるようになっています。

 また、政府においては、温室効果ガスの排出量を規制したり、炭素に価格を設定すべきで、過去の公害問題がそうであったように、気候変動の問題を解決することはすべての企業の経済的利益に変わるといいます。

 こうした新しい成長のあり方を模索する動きはもう既に世界おいては始まっています。実際、フランス政府は19年、「使命を果たす会社」という新たな会社の形態を法で規定したそうです。

 

 

 菅前首相の元、カーボンニュートラルが宣言され、脱炭素社会に舵を切ったように見えました。また、「不妊治療の保険適用」などによって少子化対策も前進するのかと思いましたが、政権が変わるとどうにも足踏み状態になるようです。 

「幸せ」視点の少子化対策: 日本経済新聞

 少子化問題は社会を映す鏡、社会のゆがみが如実に現れただけとの意見があります。

 一方で、現首相は「新しい資本主義」を標榜しますが、何がやりたいのかがはっきりしません。政策はちはぐさを増し、いまだ宗教団体の問題は決着をみず、その対応は誠実さに欠け、それではますます社会のゆがみを助長するばかり、さらに社会問題を深刻化させかねません。もっと「質」の向上を求めるべきなのかもしれません。政府の為すべきことを真剣に問い直すことが求められていそうです。

 世の流れに逆らわず、独創性にこだわるあまりに独善的になっては意味をなしません。首相に学び直しが求められているのではないでしょうか。

 

【リスキリングの極意】世界最高齢のアプリ開発者のDXマインド

 

 日本経済が不振に陥った要因に、労働生産性や賃金の低迷があるといわれています。その再生に「学び直し」が求められています。

「仕事の効率」や「質」を高めて企業の収益力を底上げし、その利益を従業員に還元する、さらにそれらによって優秀な人材が獲得できれば、さらなる成長の期待につながるといいます。

 岸田首相の看板政策「人への投資」であり、こうした経済の好循環実現を目指しているといいます。また、人手が必要な分野への転職、副業・兼業を促す施策も強化していくそうです。

迫られる「学び直し」 政府が旗振り、浸透には課題【けいざい百景】:時事ドットコム

学び直しは、働き手からすれば知見やスキルを高め、待遇の良い企業で働く契機になり得る。一方で、賃金を引き上げられない企業にとっては、待遇面で見劣りして人材を確保できず、淘汰につながる可能性もある。従業員が持つ潜在的な力を学び直しで引き出し、収益力向上につなげられるのか、経営者の手腕が試される。(出所:JIJI.com)

 

 

 社会人経験のある人が仕事につながる再教育を受けることを「学び直し」といいます。

 最近は「リスキリング」や「リカレント教育」という言葉がよくに聞くようになりました。「リスキリング」はデジタル技術を用いた能力に関する文脈で使われることが多く、「リカレント教育」は学術色が濃いといいます。

リスキリングの極意

「デジタルおばあちゃん」、世界最高齢のアプリ開発者でもある若宮正子さん、御年87、リスキリングの極意を日経スタイルで話されています。

300人と学ぶデジタルおばあちゃん 80代でも社会貢献|NIKKEIリスキリング

 1935年生まれで、太平洋戦争を経験し、少女時代は飢えていた時代だったといいます。高校卒業後、銀行で働き、顧客対応から法人向けマーケティングや商品開発を経験し、定年まで勤めあげたそうです。

当時基本は手作業です。ソロバンをはじいて、ペンを使って書類を作成したり、印鑑を押したりするわけです。私は不器用なので作業が遅いと先輩からよく叱られていました。最初は会社のお荷物のような存在でした。しかし、機械化が進み、手先の器用さは関係なくなりました。専門的な知識やアイデアが重視されるようになり、業務改善のための提案もドンドンやるようになりました。(出所:日経リスキリング)

 

 

「コンピュータは私の恩人です」と若宮さんはいいます。「もう苦手なソロバンは不要になるのではとうれしくなりました」。そのパソコンに初めて触ったのは55歳の時で、面白いと思って58歳の時に購入したそうです。定年後の人生を大きく変えてくれたといいます。

 日本の中高年のビジネスパーソンがリスキリングに熱心でないことを問われた若宮さんは、「一生懸命勉強しても、給料やボーナスにあんまり反映されないからではないでしょうか」と答えます。

真面目だけど、新しいトライはしない。大企業は、江戸時代の藩のような存在ですね。一度入ったら、抜け出さず、抜け出させず、ずっと最後までそこにいるわけです。(出所:日経リスキリング)

 また、教育にも課題があるといいます。

「多くの親は、子供の頃に志望校を目指せと必死で勉強させますが、勉強嫌いなるばかりです。それよりも勉強は楽しいと教えて欲しい」と指摘します。そうなれば生涯学習にもつながっていくのではないかといいます。

「仲間と楽しみながら、学ぶことが大事なのではないでしょうか。明確な目的を設定して、面白さを知らないとうまくはいかないと思います」と語られる言葉が印象的です。

 

 

 自身の経験から語られる言葉に説得力があります。苦手を解消するために、新しいものを積極的に取り入れようとし、学び続ける若宮さんの言葉に、もしかしたら、「DX」デジタルトランスフォーメーションのヒントがあるのかもしれません。