Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【政府のSDGsアクションプラン】それでも進まぬLGBT理解増進法案、続く企業の不祥事

 

 SDGsの達成に向けた取組を加速化させ、新しい資本主義の下、「誰ひとり取り残さない」持続可能な経済社会システムを作り上げていく。

 こうした決意の下、政府が「SDGsアクションプラン2023」をSDGs推進本部会合で決定したといいます。

持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合(第13回)及び第6回「ジャパンSDGsアワード」表彰式の開催(結果)|外務省

 首相はこの会合で、社会の変革の実現に向けて、取組を加速化させなければならないといい、「新しい資本主義」の下、成長と分配の好循環を実現し、民間の力を活用した社会課題の解決を図ると述べたといいます。

 さらに「誰一人取り残さない」社会の実現のため、多様性に富んだ、包摂的な社会を実現し、日本が国際社会の先頭に立って未来を切り拓いていきたいと語ったそうです。

 また、5月に開催されるG7広島サミットやSDGサミットの機会を活用して日本の取組を発信していくそうです。

募る不信

 一方、報道によれば、早くも石炭火力の廃止やLGBT関連について、G7参加各国から批判があるといいます。

日本除いた「G6」からLGBTQの人権守る法整備を促す書簡 首相宛てに駐日大使連名 サミット議長国へ厳しい目:東京新聞 TOKYO Web

 この報道に対して、松野官房長官は書簡を受け取ったか否かの明言を避け、「多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向け、さまざまな国民の声を受け止め、しっかりと取り組む」と強調し、「G7議長を務める日本政府として、こうしたことを国の内外に丁寧に説明する努力を続けたい」と話したそうです。

 どうなのでしょうか。ほんとうに誠意をもって、誠実にしっかりと取り組んでいるのでしょうか。

 そう見えないからこそ、価値観を共有するはずのG7参加国からの批判があるのでしょう。

 こうした政府の態度が不信感を生むのではないでしょうか。政府自らSDGsウォッシュしているようなものです。

 

 

続く不正、不祥事

 企業の不祥事に続いているようです。

 大手ゼネコンの大成建設が建設する札幌の「ハイアット セントリック 札幌」などが入る大型複合ビルにおいて、事業主に対し、各種計測記録の虚偽報告をしていたといいます。事業主でNTT都市開発は、この事態を重く受け止め、工事中の建物を撤去、再度建設するとの判断を下したそうです。

札幌の26階複合ビル、施工不良で竣工2年超延期 大成建設が虚偽報告 - Impress Watch

 また、トヨタ自動車グループの豊田自動織機では、フォークリフト用のエンジンにおいて、排出ガス認証に関する法規違反の可能性を確認したといいます。このエンジンを搭載するフォークリフトを出荷停止させたそうです。

 残念なことです。この国のモラルとか規範はどこにいってしまったのでしょうか。SDGsどころではないような気もします。

低下する品質意識

 日本の製造業において品質問題が頻発する中、本当に日本のモノづくりの力は落ちてしまったのだろうかと、MONOistが疑問を投げかけています。

「品質力は落ちている」と半数強が回答、現場担当者が懸念する3つの要因とは:品質不正問題(1/3 ページ) - MONOist

 MONOistが実施したアンケート調査では、「品質に関する力について落ちていると感じていますか」という問いに、「落ちている」の回答が半数以上を占めたそうです。

 記事を読むと、これが実態なのかとがっかりする内容です。進歩が止まっているというか、ただ停滞、劣化しているところもあるといってよさそうです。

 当事者の意識やスキルの低下、マネジメント力の低下などがその原因に上がっているようです。 

「人に依存する部分がどうしてもなくならない。また、人を教育しても認識レベルや理解度がまちまちであり、人によって品質のばらつきも発生する」「カンコツの標準化、伝承」など、属人的な状況に対する悩みが多く、また「作業者の品質に対する理解が低い」「結果良品だけを求めて、製造プロセスでの信頼性や作り込み品質への意識が希薄になっている」「意識、心理的要素への動機付け」など、担当業務をこなすだけでなく、高い意識でモノづくりへの幅広い理解を求める声も多かったそうです。

 深刻のようです。誰ひとり取り残さないどころか、多くの人が取り残されていそうです。政府推奨の「リスキリング」だけでは不十分なような気がします。

 企業の問題なのでしょうが、どう対策し、挽回していくか問われているのでしょう。

 

「参考文書」

「明らかにすることは差し控える」と官房長官 「G6」からLGBTQの人権守る法整備を促す書簡:東京新聞 TOKYO Web

SDGsアクションプラン2023~SDGs達成に向け、未来を切り拓く~(SDGs推進本部)

政府のSDGs推進本部 “新しい資本主義”のもと社会課題解決を | NHK

フォークリフト用エンジン認証での法規違反に伴う国内出荷停止について | 株式会社 豊田自動織機

 

【過干渉という重圧】JAXA H3ロケット、異次元緩和、成功しなかった理由

 

 打ち上げに失敗した新型ロケットH3初号機は、第2段エンジンの内部で過電流が発生し、電源供給が遮断され着火しなかったとみられるとJAXA 宇宙航空研究開発機構が明らかにしたそうです。

H3ロケットの原因は過電流か H2Aとの共通機器に異常の可能性も:朝日新聞デジタル

 過電流は現在の主力のH2Aロケットでも使われている機器で起きた可能性もあり、JAXAH2Aへの影響についても調べるそうです。

 記事によれば、この過電流を検出した装置はH3になって取り付けられたといいます。もう少し詳細な確認が必要なのかもしれません。

スペースXとの違い

 今回の打ち上げ失敗で地球観測衛星「だいち3号」を喪失し、今後の観測活動にも影響があるといいます。また、その開発費用は約280億円だったともいいます。

民間企業スペースXは61回成功、日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 記事は、失敗を繰り返しながら成功した米スペースXとの違いを指摘しています。

国の研究開発法人のJAXAは、先端技術と完璧さを目指し、それを成し遂げてから打ち上げ市場への売り込みを図ろうと考える。一方、スペースXは走りながら完成度を高めていく。国費で開発する研究開発法人と、米ベンチャー企業との発想の違いだろうが、日本とは対極的だ。(出所:プレジデントオンライン)

 そうなのでしょうか。高い目標を掲げ、石橋を叩いて進めるスペースXに対し、完璧さを求めながらも無謀なJAXAとの印象を受けます。

 単にプロジェクトマネジメントの差のような気がします。

SpaceXの新型ロケット「Starship」、初回打ち上げ成功率は「5割」とイーロンマスク氏 - UchuBiz

 スペースXは何度もプロトタイプを打ち上げて試験し、安全性能を確認しているようです。

(写真:ソニーグループ)

 JAXAの失敗の背後には、開発延期による政治家や産業界からのプレッシャーがあって、もうこれ以上遅らせてはならないという危機感がで高まっていたとプレジデントオンラインは指摘します。過干渉が委縮を招いたのでしょうか。

 こうしたことを含めてコントロールする力がプロジェクトに求められていたのではないでしょうか。

 何事も、目的を成就させるためには、日々改善に努めるという必要な手順と手続きがあるのでしょう。それが無謀な要求によって、正しく運営できなくなると、思わぬ失敗につながったするのではないでしょうか。

 

 

異次元緩和

 ロケットの打ち上げ失敗は誰の目に見ても明らかですが、これとは逆に政策の評価を的確にすることは難しいようです。それゆえになかなか改善されずに悪影響が長引いたりするのかもしれません。

 4月に任期満了となる日銀の黒田総裁が、衆議院財務金融委員会に出席、異次元緩和について「半ば成功した」とし、「今後もさまざまな手段を有効に組み合わせて適切な市場調節運営をすることで、時間はかかるものの市場機能は改善していく」と答弁したそうです。

後継者のために最善でないことするのはあり得ない=黒田日銀総裁 | ロイター

 質問に立った立憲民主党野田佳彦議員に「せめて国債市場のひずみぐらいは直していってほしいと思った」と指摘されたといいます。

 また、2%の物価目標を掲げ異次元緩和を推進することで人々のインフレ期待に働きかける戦略は「だめだったのではないか」と正したそうです。

「成功」「失敗」と一言で断じるのは難しいのかもしれません。長く続けた政策で、目標が達成されることはなかったとしても、効果のあったこともあったでしょうし、また副作用もあったということのような気がします。

日銀の黒歴史が終わる。白川氏とインド人の示唆

 記事によれば、異次元緩和の歴史的功績は、限界まで金融緩和をして、限界を世の中に見せたことと複数の識者が口々にしているといいます。

 もうこれ以上ないところまで緩和を拡大させれば、「もっと金融緩和しろ」と迫る政治家はいなくなり、もはや追加緩和を求める世論も聞かくなったともいいます。

日銀が量的緩和を拡大しても効果はないと、いくら説明しようとも、量的緩和を求める論者を言い負かすことはできない。緩和の規模が不足している(中略)と反論されてしまう。(中略)したがって日銀は、追加緩和を求める声が上がる前に、先手を打って追加緩和を進めるしか、非難を回避するすべはない。(出所:NEWSPICKS)

 過干渉、重圧ということでしょうか。そうせざるを得なくなれば、うまくいくはずもありません。失敗の理由は得てしてこういうところにあるのかもしれません。

 いずれにせよ、日々の金融政策の運営で、より良い状態が保たれ、人々の気持ちが上向くようになればいいことであって、それが究極な目的ような気がします。

 今後も、専門家たちによる検証で評価されることになるのでしょう、また、新総裁の下での政策とその結果により、異次元緩和もまた意味付けされていくことにもなるのでしょう。

 

「参考文書」

【直言】緩和効果「あった vs. なかった」因縁の対決

大規模緩和の副作用、今後も適切な対応考える必要-黒田日銀総裁 - Bloomberg

高性能センサーで災害把握期待 H3搭載のだいち3号:時事ドットコム

 

賃上げ相次ぐ今年の春闘、このまま持続的な賃上げにつながるのか

 

 春闘の山場となる集中回答日を迎え、大企業を中心に満額での回答が相次ぎ、最高水準での回答も多いそうです。

きょう春闘集中回答日、早期の満額表明相次ぐ 持続性が焦点 | ロイター

 急激な物価高への対応や人材確保などが理由になっているといいます。

 こうした波がどこまで波及するか、また、持続的な賃上げにつながるのかが焦点となっているといいます。

 これまで持続的な賃上げが実現されてこなかったのは、少子化による国内市場の縮小など先行きへの不安などがあると言われています。

 こうした先行きの不透明感を解消せずに、持続性を確保していくことはできるのでしょうか。

 

 

 首相も「インフレ率を超える賃上げの実現」を強く要請し、「構造的な賃上げ」の実現を要望しているようです。

 先行き不安がいまだ解消されていないように思えます。これまでの失政を省みず、企業に要求するばかりではご都合主義のように感じます。

「ジョブ型雇用」「リスキリング」など様々な賃上げのための施策を首相も色々口にしています。必要なことなのかもしれませんが、それをただ企業や国民ばかりに求めるのは何か違うような気がします。やり様を変えるべきなのでしょう。そうでなければ、それらが効果を出すには時間ばかり要することになりそうです。

 これまでこうした政府施策が花開くことは少なく、それゆえに賃金が停滞していたのではないでしょうか。

多様性という課題、外国人材と海外進出

 継続的な賃上げを実現するためには、収益を改善しその拡大を図り、生産性向上を定着させ、原価低減活動を続けていくことが求められます。また、現下の経済情勢からして、収益を改善させるためには、継続的に外貨を稼ぐようになるのが構造的な賃上げへの一歩になりそうです。

 政府施策に従って、優秀な外国人材を活用して、海外市場に進出していくのもよさそうです。

ホウレンソウに不信感 日系企業はアジアで人気低下|NIKKEIリスキリング

 ただ外国人材の日系企業への就職志向は下がっているといいます。

かつての日本企業は憧れの存在で、入社して学べるモノがたくさんあった。しかし、もう一度20代に戻って、日本の会社を選択肢するかどうか分からない。(出所:NIKKEIリスキリング)

 

 

 ショッキングな話でもあります。日本の経済に翳りが見え、なおかつその閉鎖性を指摘されるようになれば、政府の願いとは異なり、人気が落ちていくのかもしれません。

 また、企業選択の傾向は変わり、以前、ブランドや製品・サービスで選ばれていたのが、今日では「成長のための育成の機会」、「報酬・福利厚生」、「事業の成長性」に変わり、個人にとってプラスになるかにも置き換わってきているそうです。日本の弱点を指摘されているのかもしれません。

やってみるから理解できる

自分のなかにあるものをできるだけ使い、それを役にどうリンクさせるか......(略)。

しかし、やがてわかっていったのは、自分自身に近い役を演じ切っていくことの難しさでした。(出所:Forbes)

 昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での怪演ぶりが話題となった俳優の佐藤浩市さん、「自分から遠い役だから客観的に俯瞰して見られるんです」と語り、「近すぎちゃいけないんだとわかりました」といいます。

俳優・佐藤浩市の仕事論──なくならないものを大事にせよ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 もしかしたら、同じような考えの日本人ばかりが集まって、ガヤガヤやったところで、突き抜けることはないのかもしれません。 

 

 浩市さんではないですが、経験するからこそ知り得るのでしょう。自分自身も海外で暮らしてはじめて、多様性のダイナミズムを知ることができました。

ひとつの役が当たると、どうしても同じような役の依頼が来るんです。それはそれで、期待されていることだから、と思う面もある。でもその一方で、そうじゃないだろうとも思う。むしろ、それではいつまで経っても俳優としての引き出しは増えないわけですから(出所:Forbes)

 いつまでも同じことをやっていても、何も成長もないということでしょうか。引き出しを増やせていないのが今の日本というところのような気がします。

 

「参考文書」

高収入の専門職、1年で永住権取得可能に 政府が誘致策 - 日本経済新聞

優秀な外国人材、法整備の検討表明 首相「まだまだ日本は足りない」 [岸田政権]:朝日新聞デジタル

 

【今何を学ぶべきなのか】あらわになった脆弱な日本、総合商社の一気呵成の攻勢

 

 太陽光発電など今、そして、この先求められることを伊藤忠商事が一気呵成に展開しているようです。

伊藤忠商事、Amazonとメタに再エネ供給 日米で大型受注 - 日本経済新聞

 記事によれば、アマゾン専用の太陽光発電所を日本で700カ所新設し、北米ではメタ向けに風力発電所を開発するといいます。

 また、国内では2023年度中に、太陽光発電の発電能力を現状の2倍に引き上げることも計画しているそうです。100億〜150億円投資し、顧客の店舗や物流倉庫の屋根に太陽光パネルを導入、電気代上昇のリスクを抑えたい企業に再生可能エネルギーを固定価格で拡販するそうです。

 

 

 この他にも、いすゞ自動車とは商用バッテリーEV「ELF EV」の市場展開に合わせ、導入を検討する企業向けにトータルソリューションプログラムを提供、導入課題の解決、CO2排出量削減効果の定量化に加え、脱炭素化提案などでサポートするといいます。

脱炭素:川下から川上まで

 その脱炭素において、伊藤忠は「川下から川上まで取り組む」といいます。

伊藤忠社長が明かす「蓄電池ビジネス」攻略の野望 | 特集 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

日本は国土が比較的広くなく、効率的に電気をめぐらせることのできる国なのではないか。となると、川下からの脱炭素化、つまり効率的な電力ネットワークを作れる可能性がある。(出所:東洋経済オンライン)

 川上においては、太陽光だけではなく、水素、アンモニアバイオマスなど幅広く手がけ、川下においては電力の消費の仕方も考えていくべきといいます。そうでないと、自給率を上げることはできないと石井社長はいいます。

露わになった脆弱な日本

 従来とは異なる商社像があるようです。

日本市場はおもしろいと思っている。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、デジタル化の遅れやエネルギー安全保障、食料安全保障など、日本の意外と盤石じゃない側面が浮かび上がったのではないか。(出所:東洋経済オンライン)

 こうした脆弱な部分を構築し直す機運が生まれていると指摘し、デジタル技術などを積極活用し、新しいプラットフォームへと作る変えていくといいます。

 

 

「スマートビルとかスマートハウスとか、今まであった技術を進化、変化させるタイミングに来ているのではないか」とも石井社長はいい、幅広く異業種と付き合っている総合商社の力の見せ所だといいます。

ドローンや位置情報、電力のマネージメントなどがDXによって効率化される、あるいはさまざまなサービスと組み合わせられると考えられるが、まだモデルが小さく、まとまった収益規模にはなっていない。(出所:東洋経済オンライン)

リスキリング

「リスキリング」という言葉、キーワードとなり、色々な文脈で語られるようになっています。

 先が読めない時代となり、求められるスキルが大きく変化しているといいます。

リスキリングでアップグレード 「年収の壁」を越える切り札3つ:日経ビジネス電子版

なぜ今リスキリングが求められるのか。背景にあるのがITやデジタルの発展により、仕事のスタイルが激変したことだ。(出所:日経ビジネス

 通り一辺倒の言葉を信じるのではなく、なるべく最新の様々な情報や技術動向に触れ、今何が求められているのかを知るといいのかもしれません。

 現実に、まだビジネスとして確立していない新しいことに伊藤忠などの企業はチャレンジているようです。

 社会が変化し、大きく動き出すのかもしれません。

 こうしたことをヒントにしてもいいのではないでしょうか。

 

「参考文書」

伊藤忠系、屋根置き太陽光を倍増 最大150億円投資 - 日本経済新聞

 

【変わりは始めるテクノロジー】技術は進歩しても高価になるばかりのスマホ

 

 どれもこれも似たようなサービスばかりがあふれるようになり、もう日本からは新しいものが生まれないのではないかといわれています。

 何か無言の圧力のようなものがあって、企業活動が委縮、停滞していたのではないかと思ってしまいます。

 そうした箍も外れてきたのでしょうか、前向きに活動する企業が少しずつ現れているようにも感じます。

「データとAIで気候変動の影響食い止める」、NEC森田社長がMWC基調講演で熱弁 | 日経クロステック(xTECH)

 国の政策転換の影響もあるのかもしれませんが、新しい日本の序章にして欲しいものです。

 

 

スマホが売れない時代に

 世界最大規模の移動体通信展示会 MWC モバイル・ワールド・コングレスが3年ぶりにリアル開催されました。スペインバルセロナの会場には、6万人以上の来場者が訪れ、参加企業は1,900社以上にのぼり、例年の大手出展者のほとんどが出そろったといいます。日本からは富士通NECなど大手企業が出展したそうです。

 この会場を訪れた NTTドコモの井伊社長がメディア各社のインタビューに精力的に応じ、語っています。

[ドコモ井伊社長が語る、「スマホが売れない時代」に目指す海外展開の意義] - ケータイ Watch

 毎年米国ラスベガスで開催されるCESと異なり、EV電気自動車で大盛り上がりすることはなく、かといって、スマートフォンのこれまでにないようなすごい端末が登場することもなかったといいます。今回は「メタバース」や「O-RAN」がメインであったようです。

 そんな中、ドコモは、離れた場所にいる人が触ったものや感覚、肌触りが自分に伝わるというデモンストレーションをこの会場で披露したそうです。記事によれば、離れた場所にいる猫をなでる感覚がわかるそうです。

現実とメタバースの世界の触覚伝送みたいなものを組み合わせ、さらに6Gによって、リアルタイムで遅延なくつなげると、新しい体験が生まれたり、サービスができたりする。(出所:ケータイ Watch

 こうした未来を実現するためには、ドコモは「XR(エクステンデッドリアリティ)」を含め、5G、その先の「6G」、「XR」や「メタバース」など全部に関連していかなかければならないといいます。

 

 

 スマホの技術進化は進むが、価格は高くなるばかりなのに、オリジナリティーの高いデバイスがないと、井伊社長は指摘します。「今後は、できればXRのところで新しいデバイスを増やしていきたい」と、ドコモ自らデバイス開発に進むようです。

ドコモ井伊社長インタビュー:楽天とは「芸風が違う」O-RAN戦略/d払いがPayPayに追い付くには:MWC Barcelona 2023(1/3 ページ) - ITmedia Mobile

今は、ヘルスケアをやるにしても、何をやるにしてもデバイスがない。例えば、うちで言うと、キッズケータイはあるのですが、キッズ用のスマートウォッチがない。そういうものが漏れています。こういったデバイスは、ただ単に端末を売ってもしょうがない。サービスと連動することで意味が出てきます。(出所: ITmedia Mobile)

 このためにNTTドコモは昨年、NTTコノキューを設立したそうです。

 これまで活況を呈した手数料ビジネスを転換させていこうとする意志のようなものを感じます。そんな中抜きビジネスにこだわっていたら、技術開発は進まず、新しいものが登場しないということなのかもしれません。

 日本が変わるときがようやくやってきたのでしょうか。

 

「参考文書」

世界最大級モバイル展示会「MWC」が3年ぶりのリアル開催(スペイン) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

ドコモ井伊社長「端末サブスク検討、メタバース身近に」 - 日本経済新聞

報道発表資料 : XR事業を推進する新会社「株式会社NTTコノキュー」が事業を開始 | お知らせ | NTTドコモ

 

【動き出す日本企業】「6G」で世界標準を目指すNTT、KDDIのメタバースで推し活、パナソニックの弱いロボット

 

 NTTは、2030年ごろといわれる次世代超高速通信「6G」の実用化に向け、新しい光通信基盤「IOWN」の開発を進めています。この技術開発にKDDIが加わるといいます。NTTが目指す「6G」の世界標準に近づくのでしょうか。

[社説]次世代通信「6G」で世界市場に挑め - 日本経済新聞

 この「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想では、「4G」に比べ、通信容量を125倍に、通信機器などの消費電力を100分の1にすることにでき、世界でも高く評価さているといいます。日本の可能性を感じるニュースです。是が非でも世界標準を狙って欲しいものです。

 

 

 新たにこの構想に加わるKDDIの役割が問われると記事は指摘します。NTTへの対抗軸として日本の通信を活性化させる使命に変わりはなく、また独自技術やビジネスモデルで競う領域を打ち出すことも求められるといいます。

KDDIメタバース・Web3サービスで推し活も

 そのKDDIが、新たなメタバース・Web3サービス「αU(アルファユー)」を始めましたた。3年で1000億円規模の投資を行い、同等以上の売り上げを目指すそうです。

KDDIが1000億円投入しメタバースに本腰、過去3年で見つけた勝ち筋とは | 日経クロステック(xTECH)

「αU」で狙うのは、イベント型の一過性のメタバースではなく、普段使いのメタバースといいます。

「αU」は、メタバースライブ配信、バーチャルショッピングなどWeb3時代のサービスを提供します。リアルとバーチャルの境界がなくなり、音楽ライブやアート鑑賞、友人との会話やショッピングなどの日常体験を、いつどこにいても楽しむことができるといいます。

(画像:KDDI

 メタバースでエンタメ体験や友人との会話を楽しめる「αU metaverse」、360度自由視点の高精細な音楽ライブを楽しめる「αU live」、デジタルアート作品などの購入ができる「αU market」、暗号資産を管理できる「αU wallet」、実店舗と連動したバーチャル店舗でショッピングができる「αU place」で構成されているといいます。

 

 

 こうしたことにより、メタバース内で「推し活」もできるようになり、それによってデジタルコンテンツが流通するようになれば、手数料ビジネスが成立するようになるそうです。

 始まりはスマホアプリでの利用を基本とし、後々、ヘッドマウントディスプレーについても対応していく予定といいます。

パナソニックの弱いロボット

 パナソニックは、“弱いロボット”「NICOBO(ニコボ)」の予約受付を始めたそうです。

思わず笑顔になるロボット“NICOBO(ニコボ)”の一般購入受付開始 | 個人向け商品 | 製品・サービス | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン

 このニコボは、社員提案の「心の豊かさ」という価値提供を模索するプロジェクトから生まれ、クラウドファンディングで人気を博していたといいます。

(写真:パナソニックホールディングス)

 人の代わりに作業を行うロボットとは異なり、ニコボは、なにをするわけでもなく、同居人のような存在で、周囲の人の優しさと笑顔を増幅し、今までにないロボットと人とのかかわり方を提案するといいます。

・なでると、よろこんでシッポを振って人なつっこいしぐさをします。
・ぼーっと1人で過ごしたり、寝ごとを言ったり、オナラをしたりマイペースなところがあります。
・ニコボ特有の気持ちを表すモコ語に加え、たまに言葉を覚えてカタコトで日本語も話します。(出所:パナソニックホールディングス)

 パナソニックは、ニコボの事業化を通じ、「感動と安らぎ」という新しい価値を創出する取り組みを加速するといいます。

 

 

 通信技術の進歩で高速化、低電力化が進めば、それはそれでありがたいことです。こうした進化により、利便性がさらに向上し、これがきっかけで新たなビジネスも生まれることもあるのでしょう。エキサイティングなことなのかもしれませんが、ただそれではこれまでの延長線上のことのようにも思えます。

 パナソニックの弱いロボットを絶賛する訳ではないですが、もっとリアルの世界での充足があってもいいのかもしれません。それはモノによる充足ではなく「安らぎ」のような精神面を大切にできるようなものがあってもいいのではないでしょうか。

 

「参考文書」

NTTとKDDI 次世代光通信技術開発で提携へ 6Gで世界標準目指す | NHK | IT・ネット

メタバース・Web3サービス「αU」始動 | 2023年 | KDDI株式会社

 

目立つ弊害に矛盾、進まぬ対応、年収の壁に賃上げ

 

  伸びないGDP、増えるばかりの貿易赤字に、円安、日本の停滞や衰退を感じさせるニュースが増えています。

 今この苦境を乗り越えさえすれば、明日は薔薇色が待っていると思うことができればいいのですが、なかなかそうなりそうにありません。そうなのに、政府の対応は相変わらず焦点が合わずに、どこか違う目的地に連れていかれるのではないかと感じます。

 

 

 危機意識の薄い国民を何とか覚醒できないかと作家の真山仁氏が新たな連載小説を始めたそうです。

真に迫る「ニュース小説」 真山仁氏、新連載『オペレーションF[フォース]』を語る:時事ドットコム

国民は、何でも国がしてくれるのが当たり前だと思っている....(略)。

日本は老いたのに、まだ蛇口をひねれば何でも出てくると国民は思っている。そろそろ、みんなで腹をくくってちょっとくらい大変な思いをしてでも、自分たちの国を考えるべきではないか。(出所:JIJI.com)

 言わんとすることはわかりますが、逆に愚策が続き、意欲がそがれたとも言えそうな気もします。地球儀を俯瞰する外交など大言壮語する首相がいましたが、日本が位置する東アジアは年々緊張が高まるばかりです。

 これまでに様々な経済対策が実行され、大規模な金融緩和が10年にわたって継続されてきました。極端な経済の悪化はなかったのかもしれませんが、目標は達成されることなく、弊害ばかりが語られるようになり、それが問題となって顕在化しているようです。

 物価高騰に実質賃金の目減り、労働力不足などなど。

 政府に踊らされてはきたものの、望んでいたものとは違う社会になっていそうです。

 

 

一縷の望み

ようやくそうしたことに一部の企業も気づき始めているのではないでしょうか。

主婦パートの待遇に関しては長く、家事や育児との両立をどう図るかが優先され、賃金の低さや雇用の不安定さなどの問題は後回しにされがちだった。(出所:日経ビジネス

 そんな中、イオンがパートの時給を平均7%引き上げるとの方針を明らかにしました。

[新連載]イオン、パート7%賃上げの衝撃 人件費はコストでなく投資:日経ビジネス電子版

 記事によれば、イオンとして過去最大の賃上げとなり、人件費が300億円ほど増加することになるそうです。これによって、年間に120万円程度を稼いでいたパートの年収は128万円に増えるといいます。

 人材の奪い合いがおき、競争力のある賃金体系を示せなければ生き残っていけない」、「営業の第一線を支えているパートの方々の賃金見直しは不可欠」と、その背景を渡邉副社長が語っています。

年収の壁

 被扶養者のパート従業員らが一定以上の収入を得ると、社会保険料や税の負担が生じて手取りが減少してしまう。これを避けるためには自ら労働時間を抑制する「年収の壁」の問題があります。

社説:「年収の壁」問題 働く意欲生かす制度を|秋田魁新報電子版

現行制度は事実上、扶養者の夫が正社員、被扶養者の妻がパート従業員という旧来の家族観を想定している。だが今や誰でも多様な働き方ができることが望まれる時代だ。働く意欲のある人が壁を気にせず働き、収入を増やせるような制度を整える必要がある。(出所:秋田魁新報

 時代が変われば、変わる価値観もあるのでしょう。そうしたことに国が待ったをかけるようになれば、「賃上げ」に「年収の壁」のような矛盾が生まれ、社会がいびつなものになっていくのではないでしょうか。また、こうしたことが、もしかして少子化に拍車をかけているのかもしれません。

 

 

 変わりゆく社会の価値観に、古い価値観を押し付ける国、どちらが正しいのかわからなくなります。矛盾を感じたり、それに苦痛を感じる人もいるのでしょう。

 政府が求める「リスキリング」とは意味が異なるのかもしれませんが、このようなときだからこそ、学び直しが必要になっているのでしょう。

 古来から洋の東西を問わず、学習を続ける必要性は説かれてきました。それによって変化する社会に適応していくことができるということであろうし、また、道をはずさないための唯一の方法でもあるからなのでしょう。

リスキリング

「お客様へのサービスを向上させ、売り上げを伸ばしていく」、そのためにも「教育」にも投資していく、イオンでは、パートにもオンラインで学習する機会を提供し、スキルを身に付けられる環境を整えているといいます。

こうした仕組みが整ってから賃上げしていたのでは遅い。時代に取り残されてしまうかもしれない。だからまず賃上げに動いたわけです。(出所:日経ビジネス

「人件費は人的資本に対する投資にほかなりません」と渡邉副社長はそう語り、「そこからリターンを生み出すには働き方も変えていかなくてはならないでしょう」といいます。あたり前のことがようやくあたり前になって語られるようになったのでしょうか。

 人あっての社会ですし、人を単なる労働者とみなす時代ではなくなっているのでしょう。