伸びないGDP、増えるばかりの貿易赤字に、円安、日本の停滞や衰退を感じさせるニュースが増えています。
今この苦境を乗り越えさえすれば、明日は薔薇色が待っていると思うことができればいいのですが、なかなかそうなりそうにありません。そうなのに、政府の対応は相変わらず焦点が合わずに、どこか違う目的地に連れていかれるのではないかと感じます。
危機意識の薄い国民を何とか覚醒できないかと作家の真山仁氏が新たな連載小説を始めたそうです。
真に迫る「ニュース小説」 真山仁氏、新連載『オペレーションF[フォース]』を語る:時事ドットコム
国民は、何でも国がしてくれるのが当たり前だと思っている....(略)。
日本は老いたのに、まだ蛇口をひねれば何でも出てくると国民は思っている。そろそろ、みんなで腹をくくってちょっとくらい大変な思いをしてでも、自分たちの国を考えるべきではないか。(出所:JIJI.com)
言わんとすることはわかりますが、逆に愚策が続き、意欲がそがれたとも言えそうな気もします。地球儀を俯瞰する外交など大言壮語する首相がいましたが、日本が位置する東アジアは年々緊張が高まるばかりです。
これまでに様々な経済対策が実行され、大規模な金融緩和が10年にわたって継続されてきました。極端な経済の悪化はなかったのかもしれませんが、目標は達成されることなく、弊害ばかりが語られるようになり、それが問題となって顕在化しているようです。
物価高騰に実質賃金の目減り、労働力不足などなど。
政府に踊らされてはきたものの、望んでいたものとは違う社会になっていそうです。
一縷の望み
ようやくそうしたことに一部の企業も気づき始めているのではないでしょうか。
主婦パートの待遇に関しては長く、家事や育児との両立をどう図るかが優先され、賃金の低さや雇用の不安定さなどの問題は後回しにされがちだった。(出所:日経ビジネス)
そんな中、イオンがパートの時給を平均7%引き上げるとの方針を明らかにしました。
[新連載]イオン、パート7%賃上げの衝撃 人件費はコストでなく投資:日経ビジネス電子版
記事によれば、イオンとして過去最大の賃上げとなり、人件費が300億円ほど増加することになるそうです。これによって、年間に120万円程度を稼いでいたパートの年収は128万円に増えるといいます。
人材の奪い合いがおき、競争力のある賃金体系を示せなければ生き残っていけない」、「営業の第一線を支えているパートの方々の賃金見直しは不可欠」と、その背景を渡邉副社長が語っています。
年収の壁
被扶養者のパート従業員らが一定以上の収入を得ると、社会保険料や税の負担が生じて手取りが減少してしまう。これを避けるためには自ら労働時間を抑制する「年収の壁」の問題があります。
社説:「年収の壁」問題 働く意欲生かす制度を|秋田魁新報電子版
現行制度は事実上、扶養者の夫が正社員、被扶養者の妻がパート従業員という旧来の家族観を想定している。だが今や誰でも多様な働き方ができることが望まれる時代だ。働く意欲のある人が壁を気にせず働き、収入を増やせるような制度を整える必要がある。(出所:秋田魁新報)
時代が変われば、変わる価値観もあるのでしょう。そうしたことに国が待ったをかけるようになれば、「賃上げ」に「年収の壁」のような矛盾が生まれ、社会がいびつなものになっていくのではないでしょうか。また、こうしたことが、もしかして少子化に拍車をかけているのかもしれません。
変わりゆく社会の価値観に、古い価値観を押し付ける国、どちらが正しいのかわからなくなります。矛盾を感じたり、それに苦痛を感じる人もいるのでしょう。
政府が求める「リスキリング」とは意味が異なるのかもしれませんが、このようなときだからこそ、学び直しが必要になっているのでしょう。
古来から洋の東西を問わず、学習を続ける必要性は説かれてきました。それによって変化する社会に適応していくことができるということであろうし、また、道をはずさないための唯一の方法でもあるからなのでしょう。
リスキリング
「お客様へのサービスを向上させ、売り上げを伸ばしていく」、そのためにも「教育」にも投資していく、イオンでは、パートにもオンラインで学習する機会を提供し、スキルを身に付けられる環境を整えているといいます。
こうした仕組みが整ってから賃上げしていたのでは遅い。時代に取り残されてしまうかもしれない。だからまず賃上げに動いたわけです。(出所:日経ビジネス)
「人件費は人的資本に対する投資にほかなりません」と渡邉副社長はそう語り、「そこからリターンを生み出すには働き方も変えていかなくてはならないでしょう」といいます。あたり前のことがようやくあたり前になって語られるようになったのでしょうか。
人あっての社会ですし、人を単なる労働者とみなす時代ではなくなっているのでしょう。