Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【賃上げ、研究棟増設】素材には社会を変える力があると信じる東レのチャレンジ

 

 オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が発表した報告書で、今後数十年間の経済成長と軍事力にとって重要とみなされる44の技術分野のうち37分野で、中国の研究成果が世界を圧倒していることが明らかになりました。

China takes ‘stunning lead’ in key technological research, think tank says | The Japan Times

 その範囲が広範囲に及んでいることに驚きます。

 一方、日本のテクノロジーは衰退が顕著のようです。世界で注目される論文数はピークから2割近くも減り、2000年代初頭に4位であった国別順位はじりじりと後退し、今では12位になっているといいます。また、世界で高い評価を受ける日本人研究者は14年と比べて半減しているといいます。

 

 

「DX」、デジタルによる変革という言葉があふれ、デジタルが何でも解決してくれるような感覚を持ち、それが最先端であるかのような錯覚に陥りますが、そうではないのかもしれません。

研究開発

「DXにしろ、そうしたものをいかに使いこなして効率よくやるかということは大事。だけど、やっぱり基本的な原理原則は人間が考えなきゃいけないということだと思うんです」と東レの日覺社長が述べています。

【製品値上げ・賃上げをどう実現?】東レ社長・日覺昭廣の極限追求戦略 「人を大事にする経営に徹してこそ」 | 財界オンライン

生産現場はほとんど無人化しているし、やはり研究開発がメインになる」と日覺社長はいいます。

「素材には社会を変える力がある」と訴え、革新的なものを世の中に送り出すとして、炭素繊維やRO 逆浸透膜、ナノアロイなどの革新的な製品を次々と世に送り出しています。そして、それらは様々な分野で既に利用されているそうです。

 

 

素材づくりは「ポリマーとか焼成のものとか、現場のそういう技術の蓄積がないと前に進まない。そうした蓄積の上にブレイクスルーを起こして先へ進んでいく。それには時間がかかるし、そういう意味からすると、今の短期志向の経営の下ではできない」。(出所:財界オンライン)

 その東レは、先端材料研究所やフィルム研究所、電子情報材料研究所などの研究施設を有し、社員の3人に1人が研究開発技術者といわれています。

 東レGAFAやテスラのような業績をあげている訳ではありませんが、それでも素材という製品を通じて今、この社会に貢献をしているのかもしれません。

賃上げ、働きがい、生きがい

経営トップとして、従業員の生き甲斐、働き甲斐を考えるときの賃金問題は最重要テーマの1つである。(出所:財界オンライン)

 東レはここ数年間、賃上げにも取り組んできたといいます。

「非常に厳しい競争に打ち勝ってきて、皆非常に努力してくれて、業績が上がってきましたからね」と日覺社長は述べ、「的確な賃金引き上げは頑張る原動力になる」といい、「それがまた革新的な製品の研究開発につながった」といいます。

 

 

新たな研究所

 今後の持続可能社会を見据え、多様な次世代モビリティに対応した研究・技術開発を目的に、名古屋事業場に新研究棟を設置するといいます。

持続型社会に貢献する新たな研究拠点を設置 -グリーントランスフォーメーション、次世代モビリティに対応するR&Dを強化- | ニュース一覧 | TORAY

持続型社会を実現するためには、素材機能を追求しながら環境配慮型素材への転換が必要です。また、モビリティ分野では、近年、社会のGHG排出削減に向けた電動化、軽量化に加え、自動運転、UAM(アーバンエアモビリティ)、ドローンなど多様な次世代モビリティの開発が活発化しており、世の中の変化に対して迅速な対応が求められます。(出所:東レ

 東レは、創業以来「研究・技術開発こそ、明日の東レを創る」との信念に基づいて、基礎研究・基盤技術を強化、技術融合と極限追求し、先端材料の研究・技術開発を推進してきたといいます。

(画像:東レ

「日本停滞」「日本衰退」といわれています。その兆候が現実化しつつあるようにおもえてなりません。

 今、こうしたとき、東レのような姿勢が求められてはいないでしょうか。

 

「参考文書」

先細る日本の「ノーベル賞人材」 30年代に受賞者急減も - 日本経済新聞