Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【バイオエコノミー】開発が続く様々なバイオマス素材、ANAは機内食容器にサトウキビ由来を採用

 

 3度目の緊急事態宣言で、またも重苦しいゴールデンウイークである。気になっていたことを調べ直してみたりするにはいい機会なのかもしれない。

 私権制限の是非は別として、ただ足元の状況にやきもきし、焦燥に駆られたりする。ここまでコロナ渦が長引いたのも、公衆衛生を育むことができなかったということなのだろう。公衆衛生が成り立ち、その上の経済活動であれば、感染の強弱を繰り返しながら、やがて収束に向かうウィズコロナもあり得たのかもしれない。

 

 

 現実離れした戦略で未来が見通せないより、足元にある問題を解決していこうと成長戦略を描いた方が説得力があるのかもしれない。国策が「脱炭素」と決まると、一切に新技術開発競争が萌芽する。少々混沌感も否めないが、いずれひとつの方向に収束していくのだろう。常に足元では現実的な解が選択され、その2、3歩先を見据えて行動が始まっていく。

 ANAが、機内食の容器を植物由来の素材へ8月から変更するという。機内で使用する物品の脱プラスチックを加速させるそうだ。

 ANAによれば、これにより機内物品における使い捨てプラスチック使用量の約3割にあたる年間約317トンが削減できるという。小さな数字なのかもしれないが、その積み重ねで「脱プラ」、そして「脱炭素」にもつながっていくのだろう。

www.anahd.co.jp

 ANAが容器に採用したのは、サトウキビ由来のバガス素材。

 地球と未来の環境基金によると、砂糖生産に必要な糖汁をさとうきびから絞った後に、茎や葉など大量の残渣が発生する。この残渣を「バガス」と呼ぶ。年間排出量は、世界中で約1億トンにもなるという。製糖工場では、バガスをボイラーで燃やして機械の稼動エネルギーなどに利用するが、アジアや南米などの大規模工場では、それでも使い切れないほど大量のバガスが発生しているという。このバガスを原料した食品容器をバカスモールド(非木材紙)と呼ぶこともあるそうだ。

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 横浜ゴムは、バイオマスからブタジエンを生成する世界初の新技術を開発したと発表した。この新技術は国立研究開発法人理化学研究所理研)他との共同研究だという。

 ブタジエンは自動車用タイヤなどて使われる合成ゴムの主原料で、石油由来のナフサ(粗製ガソリン)から工業的に生産される。横浜ゴムによれば、この技術を確立することにより、石油への依存度が低減でき、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素削減に貢献できるという。

 共同開発した理研も同じことを指摘し、ブタジエンのバイオ生産はこれまで達成されておらず、バイオマス資源から1工程でブタジエンを生産する方法の開発が望まれていたという。この新技術も、グルコース(糖)から始まり、最終的にゴムに変化する。

www.riken.jp

 ブタジエンはクルマ用途の他にも、汎用プラスチックスのABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)にも使われ、世界市場規模は年間1200万トンを超える非常に重要な工業原料で、あのレゴ(LEGO)の素材にもなっている。

 ブタジエンの日本での年間生産量は100万トン以上あり、この合成プロセスの一部をバイオプロセスに置き換えることができれば、低炭素社会実現への貢献が期待できると理研は指摘する。

 

 

 東工大では、熱安定性に優れ、結晶化が速い微生物ポリエステルを開発しているようだ。それによれば、原料として使用するチグリン酸は、植物の種子から得ることができるが、価格が高いため、安価なバイオマス資源である糖質から生産する技術の開発が必要だという。このポリマーの大量生産が可能になり普及が進めば、マイクロプラスチック汚染解決の一助となるものと期待されるそうだ。

www.titech.ac.jp

 

 様々なバイオマス素材の開発と実用化が進むが、その原料にグルコース(ぶとう糖)が利用される。この先、化石燃料と同じように、この「糖」の争奪戦が起きたりしないのだろうか。ただでさえ食糧危機と言われる時代に、「糖」の奪い合いもないような気がする。

 バイオエコノミーの課題なのかもしれない。バイオマス素材の開発と共に、「糖」の生産の確立が求められているのだろう。

 「糖」は植物などに含まれる葉緑体において、太陽光からのエネルギーを使って水と二酸化炭素から光合成によって作られる(引用:Wikipedia)。人工光合成から作ることはできるのだろうか。興味が沸いてくる。

 こうした技術開発と実用化が日本のコアにあって欲しい。AIもデジタルも、こうした技術開発には必要な技ではある。デジタル一辺倒でなく、コアになる技術研究・開発も必要とつくづく感じる。

 

「参考文書」

www.y-yokohama.com